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陰to陽  作者: 黒川一
ー黄昏編ー
9/82

第7夜 猫






明里(あかり)笑実(えみ)も何故隠れているのかはわからない。

しかしこの異常な状況で突如現れた何者かに対し、自然と隠れる選択をしたのだ。



「何で隠れるんだよっ、あの人にここがどこか聞けばいいじゃん!」

明里(あかり)の手を引き剥がした彩香(さやか)が小声で言った。


「ダメだよ絶対。様子がおかしい。」

笑実(えみ)が緊張した様子で呟く。



突如として現れた"あの人"は異様に髪が長く、顔は見えないが体格の大きな、いや大き過ぎる男のようだ。


繰り返し壁に向かって何かをしている。

薄暗い電灯の下で壁に向かってしゃがんだり、中腰になったり…


明里(あかり)が記憶を辿る。


そこは確かポストがあった場所…


「各部屋のポストを覗いてるんだ…」



パキッー



明里(あかり)の言葉で"あの人"の異常行動を理解した彩香(さやか)が思わず後退りし、木の枝を踏み付けてしまった。



男の動きが止まり、3人に緊張が走るー



男はこちらを振り向くと、ゆっくり歩き出した。



時折り低く野太い声で、「ふふっふふふっ」と笑っている。



こちらに近付いてくるにつれ、徐々に男の全貌が見えてきた。

顔は相変わらず髪の毛でよく見えないが、右手には大きな刃物を持っている。

身長2m以上はあろうかという大男で、がっしりとした体格だ。

視線は確認できずとも、明らかにこちらを見ている事がわかる。



男との距離が3m程となった時ー



「ミャア」


公園の方から声がした。



機敏な動きで男が振り向く。

3人もまた、草陰から公園を見る。



ブランコの近くに猫が居た。

首輪が確認できる為、飼い猫のようだ。



男は猫に近付くと、ポケットから餌のようなものを取り出して与えた。



極度の緊張で感覚が麻痺していた3人は、目の前の温かい光景にホッと胸を撫で下ろす。



しかし次の瞬間ー


「ギャッ!!!」


男が餌のようなものを食べている猫に刃物を突き刺した。


痛みでのたうち回る猫を見つめながら何度も突き刺す。


男はやがて動かなくなった猫の身体を掴み、首を切り落とした。


「ふふふっふふっ」

男が笑う。


そして猫の頭部を口いっぱいに頬張り、ゴリゴリと咀嚼しながらエントランスへと戻っていった。



笑実(えみ)は涙を流しながら必死に嗚咽(おえつ)を堪えている。


明里(あかり)も無言で涙を流しながら彩香(さやか)笑実(えみ)の手をギュッと握る。


彩香(さやか)はしばらく固まっていたが、恐怖と怒りでパニックになり、飛び出そうとするのを明里(あかり)笑実(えみ)が必死に止めた。


彩香(さやか)落ち着いて。」


明里(あかり)が小声で叫びながら彩香(さやか)を抑える。

笑実(えみ)も涙を流しながら叫び出しそうになってる彩香(さやか)の口を塞いだ。



やがて男は、猫の身体をエントランスのポストに無理矢理ねじ込んだ後、建物の中へと入っていった。

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