第55夜 鬼
「破ッ!!」
無有が叫ぶと空間が歪み、月花の3人は重力が強くなったかのように動けなくなる。
ヒュッ
「髪留めの呪符なんてオッシャレ〜!」
続けて登場した妲鬼が笑実の頭から髪留めを取ると、笑実はそのまま気を失った。
「水無月の呪いを無力化しただと!?
あの女…何者だ?」
リーダーの女性が高重力の負荷に耐えながら驚愕の眼差しを向け、続け様に若い男性に呼びかける。
「葉月!」
《宙船》
葉月と呼ばれた男性が詠唱すると、月花の3人は10m程後方にワープした。
「ほう…人間にしてはやるじゃないか。」
無有が感心したように言い放つ。
「貴様…何者だ…?」
リーダーの女性が問いかけていると突然背後に気配を感じる。
「もっらいー!」
いつの間にか月花の3人の背後に楽鬼が現れ、リーダーの頭部をめがけて、赤く筋骨隆々に変化した右腕を振り抜く。
ガキッ!
弥生の刀と楽鬼の右手が交錯する。
「やるねえ!人間のくせに!」
「お主…鬼か…?」
楽鬼と弥生の力は拮抗し、鍔迫り合いをしている。
《月陰破》
リーダーの女性が楽鬼めがけて宙に円を描くと、先の尖った真っ白な円錐が立体的に現れ、とてつもない速さで楽鬼を突き刺そうとする。
グサッ!
右手同様に変化した楽鬼の左手がそれを止める。
「あらら、法力者か。」
楽鬼は満面の笑みを浮かべている。
《宙船》
葉月が再び詠唱し、月花の3人は対岸へとワープした。
すかさず印を構えたリーダーが詠唱する。
《陰獄召喚》
突如地面に穴が空き、黄色い肌の鬼が現れる。
「夕鬼…っ!」
無有が驚愕する。
「無有か…地獄を追放されて20年。
久方ぶりだな。」
夕鬼と呼ばれた鬼が対岸から無有に向かい合う。
「知っているぞ犬!
お前達鬼同士の私闘は禁じられているのだろう?」
リーダーの女性が叫ぶ。
「あいつ、鬼を呼びやがったのか…」
地面に横たわる漆原は対岸を見ている。
「今日のところは引いてやる。
しかし次会う時がお前の最後だ、陰陽師。」
リーダーの女性が手を挙げると葉月が再び詠唱し、月花の3人と夕鬼は宙に現れた別次元の空間へと消えていった。
「ちっ…」
月花が消え去り、静寂に包まれた河川敷では、漆原の舌打ちだけがはっきりと聞こえていた。




