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陰to陽  作者: 黒川一
ー薄明編ー
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第44夜 転入生






ー天海高校ー



朝のホームルーム前、明里の座る席の後ろには彩香と笑実の姿。



「ーって感じでさ、うちの親この間まで引っ越しするとか言ってたんだぜ?本当勘弁してほしいよなー。」

彩香が呆れ顔で愚痴をこぼす。


「でもさ、彩香のご両親の気持ちもわかるな。

だってうちら1ヶ月近くも誘拐されてた事になってるんだもん。」

笑実は頬杖をついている。



夏休みが終わり数週間が過ぎた教室では、最初の頃こそクラスメイト達の好奇の視線が彩香と笑実に集まっていたが、今では以前となんら変わらぬ日常となっている。


明里が3人で会話できる喜びを噛みしめていると、漆原が入ってきた。



「お三方、平和を享受しているところ悪いんだけどまだ呪いは終わってないって事を忘れないように。

今は俺の"封印の法"が何とか繭子を抑えているだけでいつ破られる事か…。

だから俺達はその封印が解ける前に呪いを断ち切る(すべ)を見付けなければならないんだ。

もっと真剣に考えような茹で蛙諸君。

後、もっと俺に感謝しろ。」

そう言うと漆原は明里の隣に着席した。


「何だよお前ー。

感謝はしてるけど…ムカつくなぁ!」

彩香は不満そうだ。


「でも2人とも、漆原くんが居なかったら私達今こうやって学校に来れなかったから…ね?」

明里がすかさずフォローする。


「まあそうだね〜。

(うるし)ちゃんさんきゅー!」

笑実がからかうように今付けたあだ名で呼んでいると、教室のドアが勢いよく開いた。



「皆おはよう!ホームルーム始めるぞー!」

担任が相変わらずの大声で叫ぶ。


「えーと、今日はその前に転入生を紹介するぞー!おい、前原くん入ってきてくれ。」


担任の呼びかけと共にスラッとした背の高い男子生徒が入ってきた。

肌は綺麗な褐色で半袖から伸びる腕を見ると、健康的で程よい筋肉が付いている事がわかる。

眉は濃く、シャープな顎とキリッとした二重まぶた。

刈り上げの襟足に無造作にスタイリングされたショートヘアは今時のいわゆる"イケメン"を思わせる。


前原の登場にクラスの女子がざわめいた。

片や、男子の胸中は違う意味でざわついてる。


「初めまして、前原聡(まえばらさとし)と言います。

静岡県から来ました。

引っ越してきたばかりで友達も居ないので皆さん仲良くしてください。」

はにかんだ笑顔から溢れる爽やかさにクラスの女子のボルテージは最高潮に達した。


「かっこいい…」

笑実がポツリと呟くと彩香がすかさず否定する。


「そうか〜?よく居るモテ男系じゃんか!なぁ明里!」


「うん…でも本当にモテそうだね!

何かスポーツやってるのかな?」

明里が興味を示すような態度を見せると隣の席から呪いの言葉が聞こえてくる。


「ちっ…よりによってイケメン陽キャかよ。

相容れない人種だ。

転校生の初日は緊張しつつクラスの不良に目を付けられてりゃいいんだよ。

爽やかな感じ出しやがって…気に入らねえ。

佐野行け。」

漆原の目は怒りに満ちている。


「お、お前気が合うなー!

ちょっと見直したぞ(うるし)!」

彩香が初めて漆原に笑顔を見せる。


「安元、変なあだ名で呼ぶのは許さないが、お前とは旨い酒が飲めそうだ。」


そう言うと、彩香と漆原は息の合った相棒のようにがっちりと手を組んだ。


「彩香と漆原くんが仲良しになってる…」

明里が驚きの表情で2人を見ている。


「男の嫉妬は見苦しいぞ〜。」

笑実がツッコミを入れると、明里と顔を見合わせてクスクスと笑う。


明里はどこか懐かしさを感じるような温かい光景に幸せを感じている。

「本当に良かった。」

そう呟くと、今日の朝礼を担当する生徒のスピーチに耳を傾けた。


………


挨拶が終わり、女子の視線を集めながら後方の席に着いた前原は、何かを思うように明里達の親しげな様子をじっと見つめていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう何気ない日常のバカバカしい会話も 学生なんだなって、感じで面白いですね。 [一言] 爽やか陽キャの転校生が、何やら意味深ですね。 体調にお気をつけて、のんびりと更新してください。
2020/03/17 01:20 退会済み
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