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陰to陽  作者: 黒川一
ー黄昏編ー
29/82

第24夜 笑み






「計画は順調か?」

大きな円卓がある薄暗い大部屋で、白い大きなフードを被った人物が隣に座っている人物に問い掛ける。

この円卓には十数人の人物が座っており、全員が同様のフードを被っている。


「はい、部下の報告によると順調に"あの場所"へ近付いているようです。」


隣の席に座っている人物が答える。

声から察するに男性のようだ。

しかしその表情は窺えない。


「それで良い。

繰り返しになるが、こちらが誘導するような真似は絶対にするな。

万が一誰か1人でも発動させれば全員が取り込まれてしまう可能性がある。」


最初に問いかけた人物が机の上に肘を乗せ、両手を組みながら言った。


「はっ!徹底して部下にも水平展開致します。

…それと、気になる点がございまして…

どうやら少年と2人で行動しているようですが、いかがなさいますか?」


「少年?ふっ…良いではないか。

たかだか子供1人にどうこうできる事ではない。

それに糧は多ければ多いほど、より目的に近付ける。

引き続き動向だけは監視しておけ。」


「はっ!そのように。」


突然1人の人物が手を上げた。


「あっ、すんません!1つだけ。」


「何だ?」

リーダーらしき人物が手を組んだまま問いかける。


「警察の動きが激しくなってきているみたいっす。

24時間体制で捜査をしていて、こっちとしてはやり辛いったらありゃしない。

そろそろ圧力をかけておいた方が良いかと…。」


挙手した人物は世間知らずの若者のような軽快な口調で国家権力への圧力を提案する。


「良かろう…警察の件はお前に任せる。

他に何かある者は居るか?」


静まり返る大部屋…


「よろしい、では幸運を祈る。

解散だ。」


号令をかけた者以外の円卓に座っている全員が足早に大部屋を出た。



……………




「ふっ…もう少し、もう少しで目的が達成される。

我らの悲願、必ず成し遂げようぞ。」



1人円卓で微笑むリーダーらしき人物。



かろうじて見えるその口元には不敵な笑みが浮かんでいた。






陽神神社 明里の部屋






漆原が左手に記事を持ちながら右手でスマホを取り出す。


[はい、もしもし。

天海新聞社、社会部。

担当の佐々木です。]


「もしもし〜、お忙しいところすみません。

(わたくし)、漆原と申します。

お伺いしたい事がございましてお電話差し上げたのですが、今お時間よろしいでしょうか?」


[はい。本日は公休の為、お客様担当の者は全員居りませんが…私でよろしければ。]


「私天海高校に通う一年生なのですが、今夏休みに向けた自由研究で地元の歴史新聞を作っております。

その内容は天海市の主だった事柄を年表にして、生徒達に天海市の歴史を知ってもらおうといったものです。

そして年表と共に天海市の歴史に明るい記者の方達へのインタビューも載せようとしておりまして、2000年頃〜現在までのご担当の方からそれぞれお話を伺いたいのですが、こういった事は可能でしょうか?」


漆原はどこで覚えたのか、とても丁寧な口調で会話している。


[ええ、なるほど…。

それは素晴らしい取り組みですね。

では、そのお話私の方で一旦お預かりさせていただいて、窓口の者が明後日出社しましたらお伝え致します。

もう一度お名前と学校名、ご連絡先を伺ってもよろしいでしょうか?]


漆原は自分の情報を伝えた。


[それではまた月曜日の9〜18時の間におかけください。失礼致します。]


「失礼しま〜す。」


ピッ


「掴みはオッケーだな。」

漆原がニヤついている。


「漆原くん言葉遣いが大人みたい…すごい。」

明里はポカンとしながら感心している様子。


「ああ、普段仕事してるからね。

そんな事より、月曜また電話する事になったから白石さんも先方と会う時までに何となく設定を覚えておいて。」


漆原は夏休みへ向けた自由研究での逆取材という自分達の設定を説明した後、今後の流れを確認した。


「狙いは2000年初期頃の担当記者だけ。

過去20年の歴史年表を作っている体で聞くから、例え何人出てきたとしても最初の2〜3人の中に当時の担当記者が居るはずだ。

まあ…辞めてなければの話だけど。」


「なるほど…

じゃあ私達はインタビューを装って当時の担当記者さんを探していけばいいのね?」

明里が確認する。


「そうゆう事。

じゃあ後は…実際会うまで出来る事は何もないからそれまでは普通に過ごすようにしておこうか。

白石さんも休める時に休んでおいた方がいい。

あ、後これ。」

漆原は学生鞄から封筒を取り出した。


「何これ…?…お金!

こんなにたくさん、どうしたの?」

明里が封筒の中身を見て驚く。


「無有の諸経費。

特に食費だけどね。

めちゃくちゃ食べるでしょ?

世話になってる間は金かかるからそれ使って。」

漆原はぶっきらぼうに言う。


「守ってもらってるのは私だし…

こんなにたくさんは貰えないよ。」

明里が困っている。


「明里、受け取っておけ。

それで余に美味い飯を作れば良いのだ。」

黙って話を聞いていた無有が口を開く。


「俺はこんなの当たり前だと思うけど、白石さんが気まずいなら余った分を後で返してくれればいいからさ。

無有の事よろしくねん。」

そう言うと漆原は足早に陽神神社を後にした。


「行っちゃった。」

ポカンとする明里。


「ククク、染一には限界だったのかもしれんな。

そんな事より明里、今日の飯は何だ?」

無有がニヤつきながら明里に夕飯の献立を聞く。


「今日は肉じゃがとホッケの開き、だし巻き卵とお味噌汁よ。

すぐ作るから待っててね。」


明里は複雑な表情を浮かべながらもエプロンを巻き、台所へと向かった。






天海署 署長室






「署長、どうゆう事ですか?」


静かな部屋に反町の声がが響く。


「つまりこの件の捜査は事実上の打ち切りとし、捜査のメインを情報提供に切り替える。」


椅子に座った署長が切り返す。


「確かにこの事件、不可解な点が多く、捜査も難航しています。

ですが我々はそれでも何とか食らい付いて真相を解明しようと動いております。

それにこれは私の勘ですが…ここで捜査を止めたら、彼女達はもう二度と戻ってこないような気がしてるんです。」


「反町…これはな、本庁からの指令だ。

お前の気持ちはわかるがどうにもならん。」


「本庁!?

なぜ管轄でもない天海市の事件に本庁が!?」


驚きを隠せない反町だが、次の瞬間何かを察したようにまた署長に問いかける。


「署長…わかりました。

すぐに捜査中の部下を全員撤退させます。

ですが最後に一つだけ教えてください。

これは外部の大きな力が働いたという事で良いですね?」


署長は自分の耳の前を指でクルクル回しながら答える。


「そんなもんあるわけなかろう。

ふざけた事を言っていないで早く仕事に戻れ。」


「わかりました。失礼します。」



重厚な扉を抜けた反町の口元には笑みが浮かんでいた。







※作者メッセージ

何と今度はウィルス性の風邪にやられていました。

先週は胃腸炎、今週は風邪…どちらも熱が39度を越えるような酷さで、本業はもちろん執筆にも多大な影響を与えました。

過去このように身体を壊す事は無かったのですが、この作品を描き始めてからというもの、ちょっとした不幸に見舞われる事が多いように感じます。

安易にに結びつけるのは良くないですが、もしそうだとすれば不思議な力が宿った良い作品になると思いますので、何度病魔に蝕まれようとも最後まで描き切ってやろうと思います(笑)

まだ少し頭が痛いですがまたつらつらと綴っていきますので、どうぞよろしくお願い致します…。


黒川一

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