錬金部屋におこもり
アリストに対して感謝すべきか、うらむべきか。余計な情報を得て釈然としない思いを抱えたまま帰路へついた私は、『宿屋乙女の吐息』で夕ご飯を思いっきり食べた。
ストレス発散には食べるに限る。しかし、この世界に来てから初めての試みだ。この体ならたくさん食べてもすぐに消化されてぜい肉となることはないと思いたい。
今日のメニューは、塊のベーコンが添えられたラタトィユもどきだった。たくさんの野菜がくたっとなっていて旨味があふれている。
コンソメの素なんてこの世界で見たことない。だからきっと、手間暇かけて骨からエキスをとっているに違いない。濃いトマトのような野菜の味がなんとも際立っていた。
「美味しすぎる〜。おかわり!」
ストレスなんて関係なく、私は思いっきり食べた。
お腹がいっぱいになれば、眠くなるもので、その夜私は思いっきり眠った。
たくさん眠ってスッキリした私は、つきまとう王宮に関係する人達に対し、さてどうするかと考える。
おそらくあの人達は、この国にない技術知識を知っているであろう私が、この国にまだまだ恩恵をもたらすことができるかどうか探っていると思われる。
(たまたまこの国には無かったけど、花火なんかどこかの国にはすでに存在していると思うんだけどね)
5バツさまは私にそういうのを期待している。私もあったら便利と思う元の世界の知識を教えるのはやぶさかでもない。しかし、権力者に囲われることは望まない。面倒な事には関わりたくないってものだ。
身分による優劣は身分差がない世界に住んでいた私にはよくわからない。でも王族や高位貴族に対する平民である私の立場はかなり弱いだろうという事はわかる。だから、早いところ実力をつけて、私が望まない時は何がきてもつっぱねることが出来るようになりたいところだが、現実にはまだまだ遠い。この世界での私は単なる成人さえしていない小娘だ。
誰かを助けて、私も助けられる。そういう輪がつながっていく人間関係が私の理想だ。一方的に尽くすのは、元の世界での夫との関係だけで終わりにしたい。
「とりあえず、そんなにたいしたことない姿を見せておきますか」
私とカメチャンは錬金ギルドへと向かった。
錬金部屋をレンタルして、こもる。当面の目標である錬金スキルのレベル上げを頑張ることにした。
「レンタル料はかかるけど、ここなら外から何しているか分からないでしょ」
「げぎょ」
錬金部屋は外部からの干渉を受けないようになっている。外部から魔力とかの影響を受けると錬成陣は予想外の反応を起こすかもしれないからだ。だから部屋の中を覗くことも出来ないはずだ。詳しく調べることが出来ないだろうと思えば、少しは気が晴れるというものである。
私はまず、アルミニウム粉の抽出とポーション作りをすることにした。どちらの材料もアイテムボックスに十分に入っている。
ポーションを入れる容器は錬金ギルドで購入した。もしも魔力枯渇になったとしても、魔力回復ポーションもここで売っている。準備は万端だ。
今回もアルミニウム粉の抽出時に爆発が起きては困るから、念のためカメチャンに錬金部屋の中で結界を張ってもらう。
私は今日も何度も錬成陣を発動させたのだった。
――バタン
錬金部屋を出て、ふらふらとハリポテのいる事務所へと向かう。
「ふうぅ。魔力回復ポーションください」
「モーリーさん、飲み過ぎは体に良くないですからね。一日5本までにしてくださいよ」
意外とたくさん飲んでも大丈夫なんだと思いながら、私は完成した体力回復ポーションをハリポテに手渡す。もう何度目になるだろうか。これ3本で魔力回復ポーション1本と交換できる。魔力回復の方が値段が高いのだ。残りのポーションは現金収入となるが、飲む回数が多い私はもうけが少ない。
私は受け取るなりその場でゴクゴクと魔力回復ポーションを飲んだ。
作成と抽出、どちらの作業も錬成陣を使うとはいっても種類が違う。作成となるポーション作りには抽出作業以上に魔力を消耗するのだった。
どこかで見ているだろうつきまとう人達も私に魔力が少ないことは分かったと思う。たいしたことは出来ないアピールになっただろうか。
再び錬金部屋に戻る。
今度は、コンクリートもどきの作成に挑戦だ。
私は以前買った錬成陣が書かれた布を部屋に広げた。陣に書かれた材料を決められた割合で錬成陣の中心円の中に並べていく。セメントもどきの石、アルミニウム、石膏、ネバネバの実、ベタベタの実をそれぞれきっちり測ってだ。
「まずは少量で。【発動】」
私は錬成陣に手を触れた。いつものように一瞬、錬成陣が外側から内側に向かって光り、内側から外側に光る。
――モワッ
そこには艶のない灰色の粉が小山となってあった。
「【鑑定】 うん、コンクリートもどき出来ているね」
手応えを感じる。
魔力枯渇ギリギリになるまでたくさん錬成をこなしたことで、少し魔力が増えたような気がする。
それでもポーション作成ほどでないが、コンクリートもどきの作成にも魔力はそこそこの量使われたのがわかる。作成の工程が多いと使われる魔力が多いようだ。
私はレベル上げ出来たかどうか自分のステータスの確認をすることにした。




