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お好み異世界優良物件(家)  作者: 妃 大和


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追跡者の正体

 宿屋を出るとついてくる謎の人物の3人は翌日もついてきた。

 悪意がないとはわかっていても、どうにも気分は良くない。


「開拓者は強大な獣に襲われそうになったら素早く逃げる。ってことで開拓スキルの拡大解釈で【逃走・目くらまし】スキルが使えるはず」


 今回も自分に小声で暗示をかけた。

【隠密】も考えたが、私的には開拓者はコソコソしないイメージがあって使えない気がしたのだ。【逃走】なら問題ない。【目くらまし】も何とかなりそうで足してみた。

 今回も【開拓】スキルは超お役立ちでお得である。

 カメチャンが一緒にいるが、離れても魔力を辿ってくるようで、ちゃんと私を見つけてくるので大丈夫だろう。結界の応用でいつのまにかステルス出来るようになっていたし。優秀なカメ()で困っちゃう。


 私はさっそく大通りから1つ裏の道に入って【逃走・目くらまし】を使ってみた。

 息を潜めて、追跡者の横を通り過ぎる。………わざとらしいと思ったが、なんと私は存在を意識されなかった。3人まとめてでも効果があった。

 これでしばらくうっとおしい追跡から逃れられる。拡大解釈さまさまである。



 家作りにあたって、私が次に手に入れたいものは薄い木の板だ。コンクリートやもどきを流し込む型とするためである。

 しっかりとした家のキチンとした基礎部分を作るためには欠かせない。

 この世界の大工は木を丸太のままで使うから、木工職人のオレンデに聞いた方が板は手に入りやすそうだと考えた。

 なので久しぶりに職人街を目指して歩くことにする。

 合流したカメチャンと共にデコボコした石畳を通って行く。軒先に置かれている様々な作品を見ていれば、あっという間にオレンデの工房へと到着だ。

 引き戸を開けて挨拶をすれば、いつものように木槌を持ったオレンデが顔を出す。


「よう姉ちゃん、今日は何の用じゃ」

「あのう、ご相談があるんですけど」


 クイクイと木槌を振って、オレンデは私に話するよううながした。

 できるだけ平らで薄い長方形の板が欲しいということを伝える。

「難しい注文だなぁ」と言いながらも、スムーズに話はまとまってしまった。オレンデは難しい依頼ほど頑張ってこなしてしまうタイプの人らしい。

 気分良く私は作業場の床にアイテムボックスから丸太をコソッと取り出しす。以前にもここで木の根を出している。今回は地上部ってやつだ。多少大きなものを出しても大丈夫と判断した。


「完成したら宿屋まで連絡ください」


 そう言い残して私たちはオレンデの工房を後にしたのだった。


 ◇◇◇


「あ」


 気がつけばまた後をつけられている。まいたと思ったのに、もう追いついていた。さすが向こうはプロである。優秀だ。

 とは言っても、この2日ですでに私はうんざりしていた。何度もまくほど私には体力がない。何で私をつけるのか、聞いてみたいとさえ思う。

 この状況を誰に相談すれば良いだろうかと考えて、レイモスとアリストを思い出した。護衛騎士ならきっと王都の警備兵士に知り合いがいるだろう。

 その警備兵士に「最近だれかが私をつけているようなんです。怖くて困っているんです。どうにかできませんか?」とか言えば、若くか弱い娘を冷たく放り出すこともないはず。と信じたい。自分で自分をあざといと思うけど、ちゃんと税金を払っているのだ。使わない手はない。


 騎士団詰め所に行って、レイモスかアリストと会いたいことを伝える。入口の見張りは以前に来たことを覚えていたようで今回はすんなりと手続きが済んだ。

 待合室で少し待てばアリストが現れた。


「おう、嬢ちゃん。元気そうだな。活躍は聞いているぜ。今日はどうした?」


 アリストは目の前に座るや否や、今日も机の上に茶色いアメの包みを置いた。

 苦笑いしながら私はアメの包みの1つを手に取り、中身を口に含んだ。そして警備兵士の知り合いを紹介して欲しいことを話した。

 顎に手を当て、私の目をジッと見てくる。


「嬢ちゃん、ちゃんと紹介して欲しい理由を話せや」


 私は目を天井に少しだけさまよわせた後、仕方ないとばかりにつきまとわれていることを話した。

 フムフムとうなずきながらアリストは私の話を真剣に聞いてくれた。そして私に向かってクイクイと手招きして、「耳を貸せ」と言う。

 席を立ち、近づいて耳を差し出した。


「………そいつらたぶん王宮お抱えの奴らだわ。嬢ちゃん、ちょっと活躍しすぎたな。2、3日の我慢だ。悪いことしてねえなら探られてやれ」

「ええー」


 私は不満を口にした。

 王宮のお抱えの奴らイコール王族の影って奴と思われる。この世界には本当にいるのね。でも私に権力と関わる気は全くない。人生の目的は、マイハウスとのんびりやりたいことをするである。

 すでに土地を買ってしまったので、他に引っ越しをするわけにもいかない。早いところ家を建てて、結界でも張って引きこもるしかないかも知れない。

 私は探られていること前提にしばらく過ごすことにした。

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