レベル上げは地道な作業ってのがお約束
アルミニウム鉱石からアルミニウム粉を取り出す錬成陣は手に入れた。あとは大量のアルミニウム鉱石から実際に取り出せばよいだけだ。
コンクリートもどきの錬成陣は持っている。アルミニウムをはじめ、他の材料はそろっている。
材料のセメントもどきを高温で焼成するとセメントとなるから、錬成陣に高温焼成を書き加えれば、もどきではないコンクリートが出来るってことは以前に考えた。
(………あぁ、訳がわからなくなっってくる。禅問答をしているようだわ)
結論。どうせ錬金するならもどきでない方で家を建てたい。
「ハリポタさん、錬成陣への追加書き込みって難しいものですか?」
「錬成陣のレベル以上のスキルを持っていれば出来るはずですよ。付加する量にもよりますけどね。作成時の魔力も始めから作成するよりかかりません。しかし………モーリーさん錬金レベルはまだ低いですよね」
「あ、はい。でも使えば錬金スキルのレベルって上がりますよね」
「もちろんです。まあ、かなり錬成しないとなりませんが」
とりあえずハリポタに追加書き込みの方法を聞いておく。ペンもあるし、これでいつでも書き込める。
私はアルミニウム粉の抽出に取りかかるべく、自分の土地へと向かった。
周りには王都を囲む壁しかないので、万が一アルミニウム粉が爆発を起こしても誰かを害することは無いだろう。さらにカメチャンに結界を張ってもらった中で抽出するつもりなので、そんなことはまず無いはずだ。けれども念を入れておくには越したことがない。
「えぇー!?」
私は目の前の光景に目が点になった。
そう、買った土地を整地をして、すでに一月が経とうとしている。いくら平らにならしてあっても、日当たりは良いし、ここで灰を作ったりもした。天敵となるカメチャンと私もいない。植物にとって天国であっただろう。
めちゃくちゃ雑草が生えていた。
「あんなにスッキリきれいだったのに」
「げっぎょ」
道路で四つんばいとなった私を横目に、パクンパクンとカメチャンはうれしそうに雑草を食べていく。
これだけ雑草が生えるということは、土が良いのだろう。栄養満点に違いない………そうとでも思わないとやってられない。
私も草取りを始めた。雑草との戦いはこれからもずっと続くのだ。気長にいくしかない。
しばらくしてそこそこの広さの土がむきだしとなった。
そこにアルミニウム抽出の錬成陣が描かれてた布を敷く。さらにアルミニウム鉱石をアイテムボックスからドサッと取りだして中心に置いた。
「カメチャン、ここだけ天井無しの結界で取り囲んでくれるかな?」
「げぎょ」
「【発動】」
私は錬成陣に手を触れた。魔力が吸われ反応が始まる。
面白いことに合成でも抽出でも変形でも、錬成陣を使った作業は【発動】という言葉が開始のキーワードだ。
発動すると、一瞬、錬成陣が外側から内側に向かって光り、内側から外側に光る。
――カサッ
わずかな音と共に中心が揺らめくとそこには灰銀色の粉の小さな山が出来ていた。
「この量で握りこぶしくらいの量か。うー、買わないで自分で調達するって決めちゃったんだからしょうがないけど、先は長いわ。たくさん錬成すればレベルも上がるならやるしかないね」
自宅となる建物の基礎は全部コンクリートかコンクリートもどきにしたいのだ。どちらにもアルミニウム粉は必要だ。抽出するしかない。
私は気力と魔力が続く限り錬成陣を使ってアルミニウムの抽出を続けたのだった。
「あー、これだけ抽出したのに思ったほど量がないのね」
魔力回復ポーションは2本飲んだ。
錬成陣に持っていかれる魔力がそこまで多いとは思えない。あらためて魔力の少なさを実感してしまう。単に発動のエネルギーとして使われる魔力なので、魔法を使っているとあまり実感出来ない。なので、面白みもない。やけに疲れるだけだ。まあ、目の前の物質が全く違うものに変わるという点での驚きはある。
「さてと、カメチャン、帰ろうか」
「げぎょ」
カメチャンは頑張って食べてくれたが、雑草はまだまだいっぱい生えている。
私達はオレンジ色に傾いた日差しを浴びながら、帰ることにした。
買い物客や仕事帰りの人で王都の主立った道は混んでいた。雑多な下町には店の呼び声が飛び交っている。急ぎ足の人が多い。足元近くを歩くカメチャンと付き添う私は邪魔になっているかなと思いながらも紛れて歩いていた。
(うーん、後をつけている人いるよね。私、何も悪いことしていないはずなんだけど)
何となくずっと続く視線を感じて、気配察知スキルを使ってみれば、悪意はないけど3人ほどが私達をつけているのがわかった。
微妙な距離でさりげなーくついてくる。撒こうとしてもついてくる。どうにもプロっぽい。探られているようだ。怖い怖い。図太いおばちゃんの心を持つ私でも不安になるってものだ。
とりあえず出来るだけ人が多い道を通って宿屋まで帰ることにした。
「おとめさん、ただいまです」
「………はあぁ。全くどこ歩いているんだい」
宿屋の前にいたおとめはいきなりグイッと私に近づいた。そして背後に向かって箒を大きく振り回した。
(わぁ。あれって、つけてきている誰かを威嚇しているよね)
早朝ならともかく、こんな夕方に入口前の掃きそうじをすることはまずないはず。私のこれを予想していたのか。おとめ、恐るべしである。
『宿屋 乙女の吐息』はやはり優秀な宿屋であった。中に入れば不審な視線は全く感じなくなった。ここでなら安心して夜に眠れることを確信する。
(何か対策を考えなくちゃ)
そう思いつつ美味しい夕食を食べるために急ぐのだった。




