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婚約者である彼はある時を境に豹変しました。もう彼は私が知っていた彼ではありません。~どんな目に遭っても自業自得ですよ~  作者: 四季


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前編

 四つ年上の婚約者ディワースは、婚約し同じ家に住むようになった途端、やたらと命令してくる酷い人になってしまった。


 同じ空間で生活していなかった頃の彼は優しかった。

 暴力的な物言いなんてしなかったし、理不尽な命令をしてくることだって一度もなくて、むしろ優しさを持った接し方をしてくれていたのだ。

 だからこんなことになるとは思わなかった。

 一緒に暮らすようになっても、夫婦になっても、いつまでも良い関係を維持しながら歩んでゆけるものと信じていた。


「おい! 朝食はまだか!? 遅い! 遅すぎる!!」

「洗濯を先にやれと言っていたではないですか」

「はあ? 口ごたえなど許されない! 生意気な女め! ……いいか、俺が上でお前は下、そういう関係性だということを忘れるな」

「そのような話は聞いていません」

「ふざけるな! 言われなくても察して理解しておけよ! どこまで無能なんだ、お前は!」


 毎日、毎日、ディワースは見下した様子で怒鳴ってくる。


「で、俺の服の準備は?」

「明後日着ると仰っていたものですよね。今日準備する予定にしています」

「今日着るんだ!!」

「ええっ」

「今から着るんだよ! まだ準備できていないのか? あり得ん……なぜお前はそんなに無能なんだ!! 馬鹿なのか!? 馬鹿なんだな!? なあ!!」


 しかもこういうことがよくある。


 前日指示をきちんと聞いていても、次の日になると聞いていた話と異なることを事実であるかのように言い出し、まるで私が忘れていたかのような扱いをしてくるのだ。


「とにかく、今すぐ用意しろ」

「そんな……さすがにできません、時間がありません」

「やれ!!」

「洗濯と朝食は後回しになってしまいますがそれでも問題ないでしょうか」

「それは大問題だ。朝食の時間は絶対にずらせない。もう何でもいいからすべて完璧にこなせ。朝食も、洗濯も、服の用意も。そもそもお前が指示に従わなかったことが原因なのだから、お前が頑張ってどうにかしろよ」


 彼がこんな人だと知っていたら婚約なんて絶対しなかったのに……。


「はぁー……。さっさとやれ。いちいち動作が遅いんだよお前は」


 ディワースはソファに座ったままわざとらしく大きな溜め息をつく。そしてソファの上に置かれていた雑誌を手に取ると一瞬だけ読むような動きをしたがすぐに飽きたような面持ちになった。で、数秒後、その雑誌を床へ投げ捨てる。威嚇するかのように、意図して大きな音を鳴らしていた。とにかく早くしろよ、という圧なのだろう。それから彼は足を組み天井を見上げていた。


「服の準備、できました」

「朝食は?」

「この後用意します」

「遅すぎる」

「しばらくお待ちください」


 すると彼は両足の裏を床に強く叩きつける。


「早くしろよ!!」


 子どものように怒っていた。


「完璧なメニューでないと許さないからな」


 ああ、もう、面倒臭い……。


 それが本心だ。


 申し訳ないけれど、温かい気持ちで見守ることはできない。


「お待たせしました、食前の紅茶です」

「は?」

「え」

「朝の食前はコーヒーだって言っているだろう! 何回言えば分かるんだ。今週もう八回目だぞ!」


 ディワースはことあるごとに文句を言ってくる。こちらの行動に問題がなくても彼の文句言いは止まらない。命令の通りに動いても、指示された通りの行動をしていても、彼はあれこれ指摘してくる。しかもその指摘の内容は九割以上が意味不明であったり頓珍漢であったりする。


「八回も指摘されていませんが……」

「いいや八回目だ!」

「そもそも、一週間は八日もありませんし……」

「ああもうどうでもいいどうでもいい! そんなことはどうでもいい! 小さいことはどうでもいいんだ! 明日は気をつけろよ、コーヒーを出せ」

「分かりました。明日はコーヒーをお持ちします」

「お前は馬鹿なんだから、きちんとメモしておくように」

「はい」

「今ここで書け!!」

「インクもペンも紙も持っていません」

「ならすぐ取りに行けよ! 三秒以内に! 取りに行って、ここへ戻ってこい! 話はそれからだ!」

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