46話 ギルドでのお約束
俺達は冒険者ギルドへと向かった。
と言っても泊まっている宿から歩いて数分の所にあったので割と直ぐに到着した。
ていうかこんなに近くにあったのに、スカーレット以外誰も気付かないなんて俺達はどれだけ浮かれてたんだよ。
あ、因みにスカーレットは俺の指示通りアイリスの元へと向かってくれている。
向こうに到着したらアイリスに事情を説明し、ここへ来るように伝えてもらう手筈だ。
そしてアホのユーリはというと。
未だ二日酔いでベッドに突っ伏しているままだ。
セリーヌがそんな奴に回復魔法などかけてくれるはずもなく、彼は未だ夢の中を彷徨い続けている。
さて、そんな下らない話はさておき俺達は冒険者ギルドの扉を開いた。
すると中には男女問わず沢山の冒険者達で溢れており、どの人に声を掛けるか迷う程だった。
「だ、誰に声を掛けていいかわからないよ! エル君どうしようっ!?」
ボンズはまるで魔物を前にした時の様に狼狽えていた。
「大丈夫だよ、ボンズ! こんなに沢山人がいるんだし、きっといい人が見つかるよ!」
「で、でも〜……」
俺はそんなボンズに笑顔で声を掛け勇気付けてやった。
しかし彼の臆病さはそんなちょっとした声掛け如きで緩和される程、甘いものではなかった。
――ったく。しょうがないなぁこいつは……。
ボンズの代わりに俺が目利きをしてやるか。
どうせ修行をつけてもらうなら同じジョブの方が色々とわかりやすくていいだろう。
ボンズはタンクだからそれなりに体格のいい男がいいよな。
そして俺はギルド内をキョロキョロと見回した。
すると一人の男冒険者が俺の目の前に立った。
その男は茶色い長髪に切れ長の目で、そこそこ良さそうな防具を身に付けていた。
「あぁーん? こんなガキがなんでギルドにいるんだぁー? ここは強ぇー冒険者しか入れないはずだぜぇ?」
男は俺の顔をまじまじと見つめそう言うと他の皆の方へと目線を移した。
「でも、いい女連れてんじゃねぇか? 生意気だよなぁー? 兄弟ー?」
「ひ、ひぃぃ……!!」
男はセリーヌ、リリィの顔や身体を舐め回すように見た後、ボンズの肩に手を回した。
そして案の定、ボンズはその男に怯え情けない声をあげた。
――この男、筋肉量こそボンズに及ばないが身長はそこそこ高いな。
それに手足が異常に長い。
二メートル越えのボンズの肩に手を回せるって相当だぞ……。
「でよぉ、兄弟……。一つ頼みがあんだけどよぉ」
「な、なんでしょうか……?」
「そこの綺麗な姉ちゃんを俺のパーティーによこせ」
「は、はい!?」
男は突然訳の分からない事をほざきはじめた。
ボンズは依然怯え、狼狽えていた。
――いるんだよなぁ。
こういう馬鹿な冒険者って。
まぁこれも異世界転生もののお約束みたいな感じか。
ただ力と正体を隠している俺にとってこれはあまり必要のない展開なんだよ。
どうしよう?
「なぁいいだろー? もう一人のちっちぇのはいらねぇからよぉ」
「な、何故一人だけなのですか……?」
俺がそう考えていると馬鹿な男は更にボンズに詰め寄っていた。
ボンズは震えた声で男にそう尋ねた。
――えぇー、ボンズそれ聞いちゃうのー?
知らないぞ、俺はどうなっても……。
ていうかこの男、外見だけは一丁前なボンズにそこまでグイグイいけるのにセリーヌには直接声を掛けられないんだな。
すると男はボンズの言葉を受け、大笑いしながら彼の肩を何度も叩いた。
「アハハハハッ! いやいや……わかるだろ? 俺はボインな女が好きなんだよ。そこの胸も身体もちっちぇ女には興味ねぇの」
「へ、へぇ……」
そしてボンズは男の話を最後まで聞き終えると、恐る恐るリリィの顔を横目で見た。
すると彼女はニコニコと笑いながら杖を構え、とんでもない殺気を放っていた。
――ほら、見たことか。
言わんこっちゃない。
馬鹿な男にそんな事聞いちゃ駄目なんだって。
知らないよ、本当に。
たとえこのギルドが燃え尽きたとしても、俺は何の責任もとらないからな。
とは思いつつ、俺はいつリリィが魔法をぶっぱなしてもいいように、とりあえず言霊の能力で【透明の防御壁】とこの場にいる全員の逃げ道を確保する為に【探索】を発動させた。
――ん?
この反応って……。
俺は【探索】のレーダーに示されたとある反応に気が付いた。
すると男もさすがにリリィが放つ殺気に気が付いたのか、彼女に目を向け弁明……するどころか更に油を注いでいった。
「あれぇー? もしかして怒っちゃった? ごめんなぁ? あともう少し大っきくなったら相手してやるからよぉ。そん時また会いに来なぁ?」
「セリーヌ……。リリィあいつ殺してもいい……?」
「いいわよ。あんな男、全女の敵よ。好きなだけ痛め付けてやるといいわ」
リリィはブチ切れていた。
そして同意を求められたセリーヌも完全にドSモードへと突入していた。
すると先程まで黙り込んでいたボンズがおもむろに口を開いた。
「――くたっていいじゃないですか……」
「あぁん? おいこら木偶の坊。お前ェ何か言ったか?」
男が睨みをきかせ、そう煽るとボンズは鼻息を荒くし珍しく大声で叫び始めた。
「別にちっちゃくたっていいじゃないですか!! あなたにはわからないでしょうね! あの小さなお胸にだって沢山の愛と幸せが詰まっているんですよ!! そんな事もわからない人は……ちっちゃいものを馬鹿にしないでください!!」
ボンズは言い切った。
公衆の面前で大声で恥ずかしげもなく全てをさらけ出した。
するとそれを聞いたリリィは顔を真っ赤にして早口で詠唱を終わらせた――――
「ボンズのアホぉぉぉぉ!!! ファイアダンク……!!!」
そして遂にリリィの杖から火属性の上級魔法【ファイアダンク】が放たれた。
しかしやはりと言うべきか。
彼女が放った魔法はギルドの天井目掛けて飛んで行く。
するとその魔法が行き着く先にワープゲートが開かれその中からアイリスが現れた。
「ったく。どこ狙ってんのよ?」
「あ、アイリスお姉ちゃん……!?」
突然現れたアイリスは片手でリリィの魔法を打ち消すとゆっくりと下へ舞い降りた。
――やっぱりさっきのあの反応はアイリスだったのか。
それにしてもずっと近くで話を聞いていたんだな。
貧乳を馬鹿にされてさぞ腹が立ったろうに。
でも助かった。お陰でギルドが燃え尽きるという最悪の未来は避けられた。
俺が心の中でアイリスに感謝していると、彼女は男の首根っこをガシッと掴み口を開いた。
「ムカつく相手はこの馬鹿男でしょうが。関係ない物まで巻き込んでは駄目よ! 美しくないわ!」
「ご、ごめんなさい……」
「ふんっ。まぁいいわ。私もこの男のうざったい話を聞いてムカムカしてたの。私がこの男に制裁を加えてやるわ!」
「本当……?」
え……。
それはまずいのでは?
アイリスは五芒星の一角。
普通に強いはずだし、あの男殺されるんじゃ……?
俺は急いで言霊の能力を使った。
これは初めて使う技だけに上手く出来る確証はなかった。
でも今は一刻も早くアイリスにこれを伝えなければならない。
「頼む使えてくれ……! 【念話】! (…………アイリス。聞こえるか?)」
俺は祈るようにアイリスの頭の中に声を届けた。
するとすぐに彼女は返答した。
(え……!? エル様!? 何で、今。どうやって!?)
(そんなものはどうだっていい。アイリス。その男をどうするつもりだ?)
(どうするって勿論殺しますが?)
(駄目だ。殺すな。軽く懲らしめるだけにしておけ。人間の領地で上手くやる為には如何なる理由があろうと人を殺してはならん)
(…………承知しました)
アイリスは俺の言葉を受け物凄く不服そうな表情を浮かべたが、ギリギリ何とか理解してくれたようだった。
その証としてアイリスは男の首根っこを掴んだまま勢い良く腕を下へ振り下ろし、男の顔面を床に叩き付けた。
「ぐぅべぇえええっ!!」
「これに懲りたら二度と貧乳を馬鹿にしない事ね。ふんっ!」
アイリスはそう言うと腕を組み男の後頭部を踏み付けた。
「アイリスお姉ちゃん……。さすが……!」
「あんたもこんな男に馬鹿にされてんじゃないわよ! もっと強く美しくなりなさい!」
「うん……! わかった……!」
アイリスのその堂々とした態度にリリィは相変わらずの羨望の眼差しを向けていた。
「それとそこのデカいの」
「は、はい……!」
そしてアイリスは次にボンズに目を向けた。
「あんた……。ちょっと見所があるわね。見直したわ。あんたは全貧乳女子を味方につけたのよ。誇りなさい?」
「……っ! はい!!」
アイリスはよくわからない事を宣い、ボンズは何故かソレを理解し元気よく返事をした。
するとギルド内にいた他の冒険者達はこれまた何故かアイリス達に拍手をし始めた。
「よくやったぞ姉ちゃん!」
「そこのでけぇ男もよく言った!!」
「ちっちぇーからって何だってんだよなぁ!?」
その歓声にボンズは照れ、アイリスは頬を膨らませ不服そうな顔をしていた。
するとそこへ一人の男冒険者が迫って来た。
「おい、そこの木偶の坊。お前、女に窮地を救われて何をヘラヘラ笑ってんだ?」
その男の言葉はとても辛辣なものだった。
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