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転生ショタ魔王、世界平和の為に家出する〜チートを持ったお人好しによる世直し旅〜  作者: 青 王(あおきんぐ)
第六章 ジャペン編

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117話 閑話 動向


 エル達が鬼人ニックとの戦闘を繰り広げている頃。多数のサキュバス達でハーレムを形成し、けしからん旅を計画していたヤラカスは当初の予定通りジャペンへ向かって海を渡っていたのだが――――



「ヤラカスさまぁ……。まだ着かないのですかぁ?」


「いや、そのはずなんだがな? どうやら乗る船を間違えたようだ……」


 妖艶なサキュバスに声をかけられたヤラカスは冷や汗を流しながら慌てた様子で答えた。

 お察しの通り、彼はまた(・・)やらかしていたのだ。



「確かにこの船……やけに荷物が多いですわね……?」


「まさか……俺達は貨物船に乗ってしまったというのか……!?」


「…………ヤラカス様。念の為、荷札を確認したところ、この船はウォルトスという街に向かっているようですわ?」


「ウォルトスだと……?」


 そして、また別のサキュバスが船内にある荷札を確認すると、そこにはウォルトス行きと記されていた。

 つまりこの船はジャペンではなく、ウォルトスへ向かう船だったのだ。


 

「停泊していた船に適当に乗ったバチが当たったか……」


「そうですよ……。しっかりと行き先を確認すべきでしたわ……」


 ヤラカスは自らの行いを悔いていた。


 そもそもこの世界は大きな大陸が地続きとなっており、海が隔てているのはウォルトスとジャペンの間だけなのである。

 

 つまりヤラカス達は、魔王城を出て陸路を進み海辺へと到着し船に乗ったが、船に乗る前から既にそこがジャペンだったという何とも間抜けなオチである。


「えっ……ていうかこの船、ジャベン発って書いてあるじゃない……」


「なにぃっ!?」


 そして遂に、サキュバスの一人がこの船の出発地点がジャペンであるということに気付いてしまった。

 ヤラカスは驚きの声を上げるが、他のサキュバス達は呆れ返っていた。

 

「ヤラカス様……ガッカリです……」

「私、もうついていけませんわ……」

「実家に帰らせて頂きます……」


「ちょ、おい……! お前たち……!!」


 ヤラカスの愚行に愛想を尽かせたサキュバス達は、背中から翼を出すと瞬く間に魔王城の方へと飛び立って行った。

 ウォルトスへ向かう貨物船に残されたヤラカスは一人肩を落とし、項垂れていた。


「アイツら……飛べたのかよ……」


 そこかよ!? と、エルがいたならツッコんでいそうな言葉を漏らしヤラカスはそのまま船に乗り続け、無様にも一人でウォルトスへと向かって行った。


 ◇



 一方その頃、エルと未だ対峙していない旧四天王のトカゲマンはというと――――


「ダグラス様。手下共の仕入れた情報によりますと、ふにゃ丸があの小童(こわっぱ)の手に落ちた様子。セセリンは元よりやる気が無かったですし、あのアホ鬼は一人で何処かへ走り去って行きました。我々はどうしましょうか……?」


「ふっ。雑魚共の事など捨ておけ。ワシらは魔王の首を取るのじゃ。腑抜けた旧四天王などハナから戦力になど入れておらんわ」


 こちらも旧四天王と面識があった現五芒星の一角"風来坊"ダグラスと合流していた。

 そしてトカゲマンが仕入れた情報を聞き、彼らを見限ったダグラスは遠くを見つめていた。


「流石はダグラス様。して、今後は如何にして奴に近付きましょうか?」


「そうじゃのう。ワシの手下の竜軍共は魔王の力に恐れをなして戦うことを放棄しよったからのう……」


「何と……。竜族の風上にもおけん奴らですのう。まぁかくいうワタシの手下共も情報収集はやりおるのですが、肝心の戦闘には関与しないと申しております……。ほんに、誇りは無いのかと問い正したいところですじゃ」


「まったくじゃわい……。――――ん? トカゲマンよ、ありゃなんじゃ……?」


「はい……?」


 二人は自らの手下達の愚痴を吐き連ねていた。するとそこへ、物凄い魔力を発し多数の魔物を引き連れながら近付く影を発見した。

 そしてその影の主はゆっくりと彼らに近付き、遂にはその正体が視認出来る程にまでなったところで、二人は声を上げた。



「マ、マゼンタ様……!?」


「何故お主がここにおるのじゃ……? 何をしておる?」


 その影の主とはマゼンタだった。彼女はサキュバスの香りと魔力を放ち、そこらにいた魔物を引き寄せていたのだ。

 そして十年ぶりに顔を合わせた二人はマゼンタに対し口を大きく開け驚愕していた。



「あらぁ……久しぶりねぇ。えっと……竜にトカゲだったかしら……?」


「ダグラスじゃ……!」


「トカゲマンですじゃ……!」


 先代魔王の存在以外、全てにおいてどうでもいいと思っているマゼンタにとって、彼らの名前など覚えるに値しないものだった。


「あー、そうそう……そんなのだったわぁ。で、何だっけ〜?」


「チッ……。お主は相変わらずよのう……。お主はこんな所で何をしておるのかと聞いておるのじゃ」


 ぼんやりとした態度でそう言ったマゼンタに対し、ダグラスは呆れつつも再度同じ問いを重ねた。


「えー、私〜? それより二人は何をしていたの〜?」


「し、質問に質問で返すのですか……。えぇ、ワシとダグラス様は恐れながらマゼンタ様の息子であるエルという童を始末しようとしておったところですじゃ」


「お、おい……トカゲマンよ……!?」


 質問に質問で返すという奇行をやってのけたマゼンタに対し、トカゲマンは正直に事の顛末を話した。それを聞いたダグラスは驚愕し、慌てふためいていた。


「どうせ殺ってしまえば後にバレる事ですじゃ。ハナから隠し通せるものでもありませぬじゃ」


「ぐっ……まぁ確かにそうじゃが……」


 トカゲマンは開き直った姿勢でダグラスにそう話す。ダグラス自身もそれを聞いて納得はしていたが、恐る恐るマゼンタの表情をうかがっていた。するとマゼンタはゆっくりと口を開いた。


「うーん……それはダメねぇ……」


「「…………っ!!」」


 マゼンタの答えに対し、二人はやはりといった様子で表情を固くする。しかし次にマゼンタから発せられた言葉は彼らにとって予想だにしないものだった。


「だってあの子は私が使うんだからぁ」


「ん……? 使うじゃと……?」


「どういう意味ですかな……?」


 ダグラスとトカゲマンは怪訝な表情でマゼンタに問うた。するとマゼンタは自らの計画を全て二人に話した。


 ◇


「――――というわけなの。つまり、あの子は魔王様の依代となり、魔王様が復活なさるのよ……!」


「そ、そんな……。そんな事、出来るのか……!?」


「可能性は0では無いですじゃ……。じゃが、さすがに思い付いても実行しようとは……」


 二人は驚愕していた。マゼンタの計画そのものに対してもそうだが、それよりも彼女が抱く魔王への異常とも呼べる愛の深さに。



「そうだわぁ……! あなた達も協力なさい? あんな子供よりも、私達がお慕いする魔王様の方がいいと思っているのでしょう?」


「そ、そりゃあそうじゃが……。ワシらは……」


「…………いいじゃないですか、ダグラス様。ワタシは今の魔王より先代の方が良いですじゃ」


「んふふっ……。じゃあ決まりね?」


 未だ戸惑いを見せるダグラスに対し、トカゲマンはやる気を見せ始める。そして不敵な笑みを浮かべるマゼンタに連れられ、二人は行動を共にする事になった。



「うわっ、ビックリした……。何じゃこの者は……?」


 すると早速、ダグラスは情けない声を上げた。何に驚いたのかといえば、魔物に担がれたロクサーヌに対してだった。


「ん……? あぁ、ソレ(・・)も使うのよ〜。魔王様の復活に必要なの」


「そ、そうか……。まったく……あんたら夫婦には驚かされてばかりじゃわい……」


 そんな心臓に悪いマゼンタとの旅を続ける事に酷く不安そうな表情を浮かべるダグラス。そしてその後ろを無表情でついて行くトカゲマン。

 彼女らは次に目指すのはどこなのか。そしてエル達との再会はいつになるのか。それはもう少し先のお話――――

ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

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