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転生ショタ魔王、世界平和の為に家出する〜チートを持ったお人好しによる世直し旅〜  作者: 青 王(あおきんぐ)
第六章 ジャペン編

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111話 ロクサーヌに起きた悲劇


 俺の叫びにより、町を破壊して回っていた死人(アンデッド)は武器を下ろした。

 そんな中、どう見ても他の死人(アンデッド)達とは格が違う者が一人、こちらへ近付いて来た。

 


「ま、魔王様……! よくぞご無事で……!」

 

 見た目は骸骨。だが、高そうな武器や防具を身に付けた彼は他の者との格の違いを見せ付けるかの様に、容易く言葉を操ってみせた。


「む……。貴様、話せるのか?」


「えぇ、一応は……」


「そうか。他の者はやはり話す事は出来ぬのか?」


「元魔人であれば可能です。ですが、この者達の大半が元魔物でして、言葉を話せる物は少ないです」


 ――なるほど、そういう事か。

 元々話せない意思なき魔物は人型に生まれ変わっても、言葉は話せないままなんだな。

 ……つまり死んでしまった人間を蘇らせても、これまで通り言葉を話せるってわけだ。

 これはいい事を聞いたぞ……!


 

「そうか。して、貴様は身に付けている防具や武器を見るに、他の者とは一線を画すようだが?」


「はい。これでも生前は、魔族内序列で上位10位以内を保っておりました故。死後ロクサーヌ様に蘇らせて頂いてからは、贔屓して下さっておりました。他の者からはロクサーヌ様の一番のお気に入りだなんて冷やかされておりますが……ははは……」


 ――ロクサーヌの一番のお気に入りだと……?

 こんな、どこの骨かもわからん奴にそんな称号を与えてなるものか……!


 

「ろ、ロクサーヌは貴様にはやらんぞ……」


「はい……?」


「何を言ってんだエル様ァ……?」


 俺は、周りの男子に『お前ら、付き合った方がいいんじゃね? お似合いだからよ!』と言われ、『やーめーろーやー! 別にこいつとはそんなんじゃないし!』と言いつつも内心満更ではなさそうな小学生男子の様なムーブをする骸骨騎士に、嫁入り前の娘の彼氏に言い放つ嫉妬深い言葉を送った。

 だが、その言葉を受け骸骨騎士は戸惑い、横にいたゴラムですらも困惑していた。



「はい……? ではない!! 武器や防具にそんなに沢山のキラキラとした石を貼り付けよって……! 何だそれは!? アピールか!? それは自分がロクサーヌのお気に入りであることの自慢か!?」


 俺は叫びながら骸骨騎士の武器を指さす。長く綺麗なロングソードの刀身には刃部分以外の所にぎっしりと小さな光る石が装飾されていた。


 ――これは所謂デコレーション剣。略して"デコ剣"だな。

 まぁこんなのが流行ったのは平成初期……。

 恐らくこれは、微妙に古臭いギャルを踏襲していたロクサーヌの仕業だろう。

 うん。ならば尚更度し難い。


 

「い、いえ……! そんなことはないです! ただ……ロクサーヌ様がこれは外すなと。こっちの方がかぁーいいし(・・・・・・)と仰るので……ふふ」


 俺の問いに骸骨騎士はロングソードの装飾された部分を撫でながら、うっとりとした目で笑みを浮かべた。

 

 ――は……?

 こいつ今、笑ったか……?

 笑ったよな……?

 嫉妬に狂う俺を見て、自分の方が勝っていると……そう言いたいのか……?

 自分がロクサーヌの特別だと……そう言いたいのか……?



「――――殺す……」


「ひぇっ……!?」


 俺はおもむろに骸骨騎士に向かって手の平を向ける。まだ何も唱えてはいないが、その気になればすぐにでも言霊の能力を発揮出来る。


「お、おい、ちょっと待てエル様……!? 一旦落ち着けよ!?」


 するとゴラムが横から俺の身体を抱き締めるようにして動きを止めた。


「な、何だゴラム!? やめろ……! 俺はこいつを許せない……!」


「ンな事、言ってる場合かよ!? 頼むから落ち着いてくれ! エル様に本気で暴れられたら、俺様達はただ死んでいく事しかできねぇ!」


 ゴラムは必死に俺を強く抱き締めながらそう叫ぶ。だが、その悲痛な叫びは俺に届いてはいなかった。なぜなら俺が――――童貞(・・)だからだ。


 ――あぁ……ゴラムの柔らかいものが当たってるぅ〜。

 これはどんな苦痛をも忘れさせてくれる最高の感触だぁ〜。

 魔王に生まれて、ヨカッター!



 俺はゴラムの柔らかい感触が伝わる自らの右半身に、全神経を集中させていた。すると気が付けば、骸骨騎士への嫉妬心はきれいさっぱり消え失せていた。


「すまない……。もう大丈夫だ、ゴラム」


「そうか……? じゃあ離しても大丈夫そうだな」


「……っ! いや、まだ大丈夫ではないかもしれん……」


「はぁ? 何言ってんだエル様!? ……ンな事より、テメェ骸骨野郎! あのアホは誰に襲われたか見てねーのか!?」


 俺の痛恨のミスにより、ゴラムは俺の身体から離れてしまった。そしてゴラムは骸骨騎士に向かってロクサーヌを襲った犯人について問うた。


 

「えぇ、見ました……見ましたとも。ですが私供は、何も出来ませんでした。いや、させて頂けませんでした……」


「……? なんか含みのある言い方だなァ……? 何があった!? テメェが知ってること、全部話せ!」


 うつむき加減で答える骸骨騎士に、ゴラムは更に詰め寄った。すると骸骨騎士は顔を上げ、ゆっくりと話を始めた。



 ◇ side骸骨騎士〜



 ロクサーヌ様の指示で、先にジャペンへ潜入していた私達は着々と計画の実行へ向けて準備を進めておりました。

 するとそこへ、計画に無いタイミングでロクサーヌ様がジャペンへと入って来られました。私は慌ててロクサーヌ様の元へ行き、理由を聞きました。



「ロクサーヌ様、どうなさいましたか?」


「おー、骸骨ナイト略してナイトーくん! 計画変更だよー!」


「へ、変更ですか……?」


「そ! とりま、あーしはタピって来るしぃ、ナイトーくんは他の子達に招集かけて先に魔王城に戻っててー!」


「えっ……? ですがロクサーヌ様、例の計画はよろしいのですか?」


「あぁ、恐怖の夜(ホラーナイト)の事ねー! それはもういいよ! エルぴが何か色々やってくれるっぽいから!」


「え、エルぴ……? もしや、魔王様が……!? そ、そういう事なら承知しました……」


「うぃー! じゃあ後は頼むねー! よろー!」


 そう言うとロクサーヌ様は近くの店へと入って行かれました。私も慌ててロクサーヌ様の指示通り、ジャペンにいる他の同族達に声を掛けて回りました。

 それから暫くしてからの事です。突如として、町の結界が解かれました。



「……!? 結界が解かれた!? 何故? いや、ひとまずここはロクサーヌ様にご報告を――――」


 私は再度、ロクサーヌ様の元へ向かいました。ですが、私の身体は骨……。速く走ろうにも、生前の様な動きは出来ず、今日程自らが死人(アンデッド)である事を恨んだ事はありません。


 それから二、三分程でしょうか。

 漸くロクサーヌ様が入られた店の近くまで到達すると、そこでロクサーヌ様と誰かかま話しておられるのを確認しました。



「ロクサーヌ様……! ん……? あの方はもしや……」


 そう思ったのも束の間。ロクサーヌ様の様子が途端に変わってしまいました。その後、ロクサーヌ様は天に向かってこう叫ばれました。――――「蹂躙せよ」と。


 

「ろ、ロクサーヌ様……!? 今なんと……!? ――――うぐっ……!」


 私はすぐにロクサーヌ様の異変に気が付きました。ですが、私共の主はロクサーヌ様。主の命令を無視する事は出来ません。

 これはロクサーヌ様の意思に反する事。そうだとわかりつつも、破壊行動を止める事は出来ませんでした。


 その後、ロクサーヌ様は精気を吸われてしまったかのようにパタリと倒れてしまわれて、先程まで話していた女性も消えておりました。



 ◇


 

「それからは、私もジャペンの破壊をしておりました故、見ておりません。ですが、エル様がそれを止めて下さった後、すぐにそこへ確認しに行ったのですが……もうそこにロクサーヌ様はおられませんでした……」


「そうか。洗脳された後、精気を吸われたかのように倒れた……か。やはり犯人は俺の…………」


 ゴラムが導き出した答え――――ロクサーヌを襲った犯人は俺の母であるという事。骸骨騎士ことナイトーくんの話を聞き、推測が確信へと変わった。


「申し訳ありません。私が近くにいながらロクサーヌ様をお守り出来ず……。騎士としてお恥ずかしい限りです……」


「恥ずべき事じゃねーよ。今回は相手が悪すぎたってだけだ。残念だが、テメェがそん時、助けに入ってたって今の状況は何も変わんねーよ」


「そう……ですね。相手はあの……王妃様ですからね……」


 俯くナイトーくんにゴラムはそんな言葉を掛ける。そしてナイトーくんもどうやら俺の母と認識していたようだった。


「今更悔やんでも仕方がない。とりあえず、ロクサーヌが消えた場所へ行ってみるか。何か手掛かりがあるやもしれぬ」


 俺がそう言うと、二人は黙って頷いた。そして俺達はロクサーヌが消えたという店の前へと向かった。


 


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