110話 期待と不安を胸に
自らの野望をゴラムに打ち明けた俺は、早速彼女と共にジャペンへ戻ろうとしていた。
「ゴラムよ。早速だが、俺と一緒にジャペンへ来てくれるか?」
「あぁ? ンなとこにあのアホはいんのかよ?」
「あぁ。そこにロクサーヌもいる。貴様らはそこで合流し、俺の計画を実行してもらうつもりだ」
「わかった。了解だ。にしても、こっからジャペンにはどうやって行くつもりだ? 海を渡んなきゃいけねーだろ? 俺様、金なんて持ってねーぞ?」
ゴラムは顎に手を置き、思案顔を浮かべる。
今俺達がいるのは北の山脈の麓にあるチミニチ村。そこからジャペンへ向かうなら本来は、ウォルトス経由で船に乗って行く必要がある。その為には金と時間も必要になってくる。そして勿論、俺達にそんな物はあるはずがない。だが――――
「問題無い。転移魔法を使う」
「転移魔法だァ……?」
――転移魔法って言っても、実際は言霊の能力を使った瞬間移動なんだけどな。
まぁ女神様から貰ったチートスキルをわざわざひけらかす必要も無いし、魔法って事でいいだろう。
俺、魔の王だし。
「どうした? 何か問題でもあるのか?」
「い、いや……。ただ転移魔法っていやぁ、闇属性の"ワープ"と聖属性の"召喚"を掛け合わせたかなり高度な魔法なはずだろ? ンなもん、本当に使えんのかと思ってよ。……まぁ俺様が尊敬するエル様にとっちゃ、ンなことくらい朝飯前っつうことだな! ガハハッ!」
ゴラムは怪訝な表情を浮かべた後、豪快に笑って見せた。
ゴラムの言う闇属性魔法のワープとは、任意の場所に術者本人が赴きゲートを開き、そこへ物や人を移動させるもの。
そして聖属性の召喚とは、術者本人の元へ物や人を呼び寄せるもの。
転移魔法は、そのどちらにも該当しない二つを掛け合わせた高度な魔法。故にこの世界でその存在こそあれど、噂レベルでしかなく、誰もそれを実現した者はいない。
――あっぶねぇ……!
これゴラムが相手じゃなかったら、俺の存在も危うかったんじゃないか……!?
ゴラムが俺に対して盲目で本当に良かった……。
魔族は基本的に聖属性魔法を扱えない。故にそれを扱えるとなると、俺が魔族の中で異端である事が証明されてしまう。七つの属性を扱えた先代ですら、聖属性を扱えなかったのだから当然の事である。
「念の為に言っておくが、俺が転移魔法を使える事は口外しないようにな」
「あぁ、勿論だぜ。俺様は約束を破ったりはしねぇ。信じてくれ」
ゴラムはそう言うと真っ直ぐな瞳で俺を見つめた。
――誰も疑ってないって。
だからそんな目で俺を見るなよ。
そんな可愛い顔で見つめられたら勘違いしちゃうだろ?
「勿論信じている。ならば、そろそろ行くか」
「へへっ……。嬉しいじゃねーか。よっしゃあ……! エル様となら、地の果てまででも何処までだって行ってやるぜ!!」
俺がそう言うとゴラムは張り切った様子で拳を掲げた。
――いや、行くのはジャペンだって言ってんだろ……。
どこまで俺を……ってもういいか。
そこまで俺を慕ってくれているのは素直に嬉しいし、可愛いしな。
それに、そんな可愛いゴラムを含めた俺の配下達と、ユーリ達を含めた人間達に殺し合いをだなんて、俺は絶対にさせたくない。
想像しただけでも胸が張り裂けそうだ。
この世界に魔王として転生して、俺は一度挫折をし魔王城から家出した。結果的に勇者であるユーリに拾われて沢山の人間達と関わりながら、配下である五芒星達を上手くこちらに引き入れる事が出来た。
女神様はここまでの事を見越して俺を魔王として転生させたのかはわからない。
寧ろ、あの適当な女神様がそこまでの事を想像していたとは到底思えない。
本来、勇者として俺を転生させるつもりだったはずだが、うっかりユーリを先に誕生させてしまっているくらいだからな……。
そんな明言をしていたわけではないが、あの女神様のことだから恐らくはそうなのだろう。
だが、これは考えようによっては女神様も関与していない自らが切り開いた運命だ。
なら、きっと全てが上手くいくはずだ。
なぜなら――――俺が選んだ道なのだから。
そして俺は少しの期待と不安を胸に、ゴラムに服を着せ、共に瞬間移動をする為、彼女の手を握った。
手を握るとゴラムは嬉しそうにはにかんでいたが、俺は変な気を起こさないよう下唇を噛みながらジャペンへと瞬間移動した。
◇
ジャペンの門前に到着してすぐ。俺は違和感に気がついた。
「ほぇー。でけー門だなァ……。ここには巨人族でもいんのか?」
「いや、いないはずだ。それよりこの門……。何故、開いている……?」
昼間は俺を、訳のわからない立ち入り審査で一歩も通さなかった固く閉ざされたジャペンの門。
だが、俺達が到着すると何故かその門は少し開いていた。
「門が開いてんのはいい事じゃねーか。これで簡単に町へ入る事が出来るってもんだぜ!」
「いや、待て。もしかすると結界がはられているかもしれん」
「あ? ンなもんねーよ。いや……無くなったって言った方が正しいか?」
俺の制止にゴラムはそう言うと怪訝な表情を浮かべる。そしてある一点を見つめ、再度口を開いた。
「エル様、あれを見てみな?」
「ん……?」
「あれは人間が魔力を結集して作った魔道具ってやつだ。あれを町の四隅に置く事で魔物除けの結界をはっていたっぽいな。――――だが、それが今は壊されてる。つまりそれと、この開いた門を照らし合わせて考えっと、悪意ある誰かが町に外から侵入したっつう事だな」
「お、おい……。ちょっと待て……」
ゴラムはそう言いながら、何者かに破壊された結界の核となっていた魔道具を指さした。
俺は彼女が言っている事は事実なのだろうと理解した。だが――――
「ん? どうした、エル様?」
「いや、だって……おかしいだろ?」
「何がだよ? あぁ、アレか? 五芒星の俺様達が殆どエル様の下についたはずなのに、こんな勝手な真似する奴が他にいるわけねーってことか?」
「いや、そうではなくて……。――――貴様、その感じでよもや、頭が切れるのか……?」
「はぁ……!?」
俺の言葉を受け、ゴラムはひどく面を食らっていた。
「いや、おかしいではないか。貴様のその姿は俺との戦闘を終えた後に作ったものだ。だがその前はゴリゴリに脳筋な岩男だっただろうが。口調も荒っぽいし、すぐ暴力で解決しようとするし、そんな奴が頭も切れるだなんて想像も出来ないだろう?」
「失礼な奴だなぁ……。いくらエル様でも怒るぞ?」
ゴラムは眉をぴくつかせ、怒りを滲ませていた。だが俺は止まれない。それだけ彼女の意外な一面に驚いていたのだ。
「怒ってもいい。だがその前に説明しろ。貴様はそのなりで何故、頭が切れる?」
「ンだァ……? エル様が相手じゃなかったら、頭が切れる前に、俺がキレちまってたぜ、まったくよォ……。俺様は――――」
ゴラムはイラつきながらもそう言うと、丁寧に説明を始めた。
要約すると、どうやら以前のゴラムは先代魔王の妻となる為、必死で勉学に勤しんでいたらしい。魔道具や魔法に詳しく、それらを淡々と説明出来たのはそのせいだ。
だが、とある強き者を前にして、自らの考えを改めたそう。その後、五芒星まで上り詰めた彼女は俺を見て、更に強さを追い求めここに至ったという事らしい。
「――――とまぁ、つまんねー話だがそういうわけだ。今となっちゃあ、その憧れた奴もただの腑抜けに成り下がっちまったけどな」
「そうなのか。いや、興味深い話だった。ありがとう」
「へへっ……。それならよかったぜ。それよか、俺様達の他に侵入者がいるってんなら、早く中に入った方がよさそうじゃねーか?」
「あぁ。そうだな。ひとまず中の状況を確認するか」
そうして俺達は門を潜り、町へと入った。
しかし、日本文化が色濃く反映され、和食に舌鼓を打てると俺が想像していたジャペンは、死人の大群が暴れ回る凄惨な状況になっていた。
「ど、どういう事だ……これは?」
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