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12.男の夢

 朝。目が覚める。

 ハルサメ国2日目の朝だ。

 時刻は6時。

 いつもよりいいベットで寝ているのに、つい目が覚めてしまった。

 

 一瞬二度寝するか迷ったが、二度寝する気分でもないので素直に起きることにする。

 俺はベットから起き上がり顔を洗うために、寝ぼけた頭で洗面所に向かう。

 洗面所の鏡には、むくんだ顔が映った。


 「ひっでー顔…。」


 ぽつりと呟き、蛇口を捻る。

 蛇口からは冷たい水が流れる。

 手で水をすくい、顔にかける。眠っていた細胞が起きていくのを感じた。


 「ふぅ…。」


 部屋にあったタオルを使って顔を拭く。

 顔を拭き終わり、喉が渇いていたので、もう一度蛇口を捻って水を出して水分補給をする。


 「うまぁ…。」


 これは自論だが、朝飲む水は世の中で一番美味い。


 部屋に居てもすることがない。

 俺は部屋を出て、まだ人の少ない早朝の街を歩く。

 朝の冷たい空気が肌に触れる。

 少しだけ肌寒いだろうか。

 吐き出した息が白く濁った。


 「そろそろ冬か…。」


 吐いた自分の息を見て、冬の始まりを感じる。

 

 しばらく歩くと、草木が雑に伸び、整備されていないような場所に出る。

 軽い森みたいな場所だ。

 勿論周囲には住宅や店もない、人もいない。

 恐らく余った土地で使われていないんだろう。

 特訓するにはベストな場所だ。


 周囲をもう一度確認して、俺は魔力を練り始める。

 別に特訓場所を探すために部屋を出た訳じゃない。

 でも、特訓出来る場所を見つけてしまった。

 毎日特訓していて習慣になってしまっていたためになんとなく。なんとなく、やらないと気持ち悪い感じがした。


 そして、特訓を始めて一時間程が経った頃だった。


 「いい魔法だなぁ。」


 背後から聞き覚えのある声が聞こえた。

 後ろを振り返ると、そこには金髪の男が1人立って居た。


 「マーズか。なんでここに居るんだ?」

 「いや、こっちのセリフだ。俺はここでたまに体鍛えてんのよ。」

 

 そう言ってマーズは俺の近くに来る。


 「ファーシナルがさっき放った魔法ってファイアボールか?」

 「そうだけど」

 「いやぁすげーな。俺は魔法が苦手で剣しか使えないから尊敬しちまうぜ。」


 そう言ってマーズは剣を取り出し、素振りを始めた。

 マーズの剣を振るスピードはとてつもなく速かった。

 空気を斬る音が周囲に響く。


 「すげぇ…。」


 こんなに速いスピードで剣を振れる人は初めて見た。

 驚きからつい声が漏れる。

 

 「そ、そうか?」


 マーズは少し照れたように頭を掻きく。


 「ファーシナルのファイアボールも凄かったぜ。」

 「いや、俺のファイアボールは全然だよ。」

 「そうか?

  結構いい感じだと思ったんだけどな。」


 俺はウェスザンスのファイアボールを思す出す。

 あいつのファイアボールはこんなもんじゃなかった…。

 

 「まだまだなんだ…。」

 「へぇ。じゃあ紹介してやろうか?」


 マーズが言う。


 「何を」

 「この国屈指の魔法使いをだよ。

  何かアドバイス貰えるかもだろ?

  俺が何かアドバイス出来ればいいんだけど、さっき言った通り俺は魔法は苦手だからな。」 

 

 そりゃ何かアドバイスが貰えるなら貰いたい。

 でも…


 「いいのか?俺金ないぞ?」


 アドバイスを貰っても俺には返せる物がない。

 授業料を求められたら終わりだ。


 「んー。まぁ行くだけ行ってみようぜ」


 マーズはそう言って俺の腕を掴み、ほぼ強制でその人の元へと俺は連行される。

 そしてとある家の前で止まる。

 他の家と何も変わらない普通の家だ。


 「ここだ」


 マーズはそう言って、その家の玄関の扉をノックする。

 しかし、反応がない。

 

 「留守なんじゃないか?」

 「いや、居るとは思うんだけどなぁ」


 もう一度ノックする。

 反応なし。


 「んー…。」 


 3度目のノック。

 すると、ゆっくりと扉が開いた。

 家からはとても立派な胸を持った1人の女性が出て来る。

 もし道ですれ違いでもしたらつい見てしまう程の大きさだ。


 その女性はマーズの顔を見ると舌打ちをかまし

 分かりやすく嫌な顔をする。 


 「またお前か。

  いくら積まれてもてめぇに揉ませる胸はねーぞ。」

 「胸も揉ませて欲しいけど。今日は別の頼みさ」


 ん?

 何。今の会話。

 え?こいつ胸揉ために何しようとしてたんだ。 

 もしかして、マーズは変態なのか?

 何か変態に見えて来たぞ。

 いや、恐らく変態だ。

 絶対変態だ。

 まぁ今の件は聞かなかったことにしよう。


 「こいつに魔法のアドバイスをして欲しいんだ。

  メイさん魔法得意だろ?」


 マーズが俺の事を指差して言う。

 この女性はメイという名前らしい。


 メイは俺の事を見ようともしない。

 面倒くさそうな顔をして、絶対無理と言わんばかりの態度を取る。


 「嫌だね。面倒くさい」

 「少しくらい良いだろう?」

 「私は忙しいんだ。さっさと私の前から消えろ」


 凄い機嫌悪いなこの人。

 普段からこういう感じなのか?

 いやそれとも、単にマーズのことが嫌いなのか?

 まぁどちらにせよ、これは無理っぽいな。


 そう思い、諦めようとマーズに言おうとした瞬間。メイさんと目が合った。

 ほんの一瞬だったが、しっかりと目が合った。 


 メイさんは俺と目が合った途端に、顔を下に向けてプルプルと小刻みに体を震わせる。


 「あれ?メイさん?急にどうしたんだ?」


 マーズがメイさんを心配するが、反応はない。

 

 急にどうしたんだ?

 俺と目が合った瞬間急に…。


 すると、メイさんが俺の腕を掴む。

 結構な力だ。

 いや、とんでもない力だ。


 痛い痛い痛い!!!ゴリラかこの人は!


 そして、メイさんは俺の顔を自分の胸に沈めて叫んだ。


 「超タイプぅ!!!」


 オッパイ、ヤワラカイ。


 「ちょ、ちょっとメイさん?!」


 マーズが突然のメイさんの行動に驚く。


 柔らかい!

 超柔らかいけど!

 呼吸が!!

 呼吸が出来ない!


 「いやぁーん!めっちゃ好きぃ!!」


 俺を抱きしめる力が徐々に強くなっていく。

 あ、やばい。

 幸せ?いや、死!!

 酸素。

 酸素が足りない!!!

 

 「いいなぁ…。」


 マーズが指をくわえながら羨ましそうに俺を見る。

 そう。俺は今全男子が羨む状況にいる。

 それは間違えない。

 今俺がマーズと立場が逆なら俺もマーズを羨んでいるだろう。


 しかし、俺は今そんな夢みたいな状況から一秒でも早く抜け出したかった。

 何故なら呼吸が、酸素が吸えないから。


 「私の男にしてあげるぅ~!」

 「俺もあなたの男にしてくだい!」

 「黙れ!殺すぞ!」

 「えぇ?!」

 

 圧倒的酸素不足。

 意識が

 マーズとメイさんの声が

 どんどん遠くなっていく。

 マジで…ヤバい…。


 全男子の夢と希望が詰まった

 柔らかで豊満な胸の中で


 俺は意識を手放した。

 


  



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