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記憶の上書き  作者: ゆゆゆ
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命令違反

 

第一章 これが私達のいつも通りです


 第一話 命令違反



  ▪️


「私、やっぱり悪くないと思うんだけどなあ」

「いや、あなたがあんなミスしなければ今回の作戦は終わってたのよ?あなたのミスで長引いているんだから、あなたが悪いに決まっているじゃない」

「でも〜」

「デモも機動隊もありません」

「古!」

「あぁ?」

『二人とも喧嘩しないで。今は作戦中よ?』

「いや、だって本来ならもう作戦は終わって家で昨日買った本を読んでる時間なのよ?それなのにこいつがあんな簡単なミスをするんだから文句のひとつも言いたくなるわよ」

『今回はあなた達二人がペアの作戦。片方のミスは自分のミス。そこは衣愛(いあ)をフォローできなかった詩織(しおり)のミスよ』

「えへへ、ごめんね?今回の作戦が終わったらドーナツ買ってあげるから。ね?」

「あたしに食いしん坊キャラをつけないでくれる?子供じゃないんだからそんなので大人しくなると思ったら大間違いよ」

「ええ〜?じゃあいらないの?」

「いらないとは言ってないでしょ」

「え!?じゃあ許してくれるの?」

「別に怒ってないわよ。ただ、今回の作戦自分のせいでミスったと思うのなら誠意を見せてみなさいってだけよ」

「うぅ、なんかうまい感じに誘導されてるような気が…」

「気のせいよ」

『喧嘩は終わった?』

「喧嘩してないっての」

『では、次の作戦に移ります。状況は標的が銃をもって銀行内の金庫の前で人質六十名とたてこもっていて、銃を七発撃っていたわ。種類はベレッタM92で、入っている弾は十五発。さらに突入の際に七発撃っていて、今入っている弾は満タンに入れていたなら一発。十四しか入れていないなら零。さらに犯人が撃つのは突入してきた警官ばかり。使っている銃にも改造の跡が見られず、その割に使い込まれていたような銃だったわね。その辺の中古で買ってきたものと推測できるわ』

「つまり、金に困った素人の犯行ってわけね」

『その通り。おそらく銃もそれ一丁と考えて問題ないと思うわ。でも、ナイフを持っている可能性もあるから、十分注意してね』

「ええ」

「…作戦は?」

「なんで分からないのよ。現在の状況からして、標的が持っている銃には弾が零か一、こちらから突入して一発撃たせてナイフを取り出す瞬間の隙を狙って殺しなさいっていう作戦よ」

「え?しおりん頭良すぎじゃない?」

「分かるでしょこれくらい。あなた何年この仕事してきてるのよ!」

「痛っ!けらないでよぉ」

「あたしを蹴らせるあなたが悪い」

『作戦は詩織が言った通りです。標的がこちらの思惑とは違う行動をした場合はアドリブで対応。だけど人質に被害が出るようなら、標的を落ち着かせて仕切り直す。では、作戦開始』

 通信機から聞こえる合図でふたりが突入する。

「だ、誰だ!」

 カチッ、ヒュッ!

「な、何だ!?」

 パァン!

「う、前が見えない!な、なんだ!どうなってやがる!」

 ヒュッ!ドっ!

「死になさい」

 パァン!



  ▪️


「今回の標的は素人だったわね。別に衣愛がミスった時もそのまま突入しても被害が出なかったんじゃないかしら?」

「だよねだよね。私もそう思ったから突入したんだよ」

「スタングレネードも分かってないし、人質の使い方も間違ってる。あんなのを危険視していた警察も警察よね」

「あ、しおりん口の周りにドーナツの食べかすついてるよ?とってあげる」

「いらないわよ。というよりなんでそう言いながら舌を出してくるのよ。なに?レズなの?」

「いやいやいや、食べかすも食べ物だもん」

「あんたは犬か」

「わんわん!」

「犬のまねすれば許されるわけじゃあないから」

「あれ?もしかしてしおりん猫派?」

「そういうことじゃないわよ!あとしおりんって言うな!」

「私はしおりんの方がかわいいと思うんだけどな?」

「知らないわよそんなの」

 わいわいがやがや。昨日作戦を実行したはずの二人はその事を何事もなかったかのように話している。

 どう考えても日常的に行われるような内容じゃないし、普通の人なら精神的におかしくなる人もいるのだが、この二人にしてみれば、「あ、昨日オープンしたアイス屋さんめちゃくちゃ美味しかったよ」等といった感じの何気ない日常でしかないのだ。

 しかしこの二人が今集められている理由は、決して昨日起きた事件の報告ではなく、昨日起きた事件の反省のためによばれているのだ。

「衣愛、詩織。分かっているの?昨日のことについて反省をしているんだけど、次ふざけるようなら撃つわよ?」

「ふざけていません!ごめんなさい!昨日のアレはしおりんがやりました!」

「ちょ、あたしを身代わりにしないでくれる!?元はと言えばあなたがミスったのが原因で!」

 バァン!

「次、ふざけるようなら撃ちますよ?」

「「…すみません」」

 二人の頬の間を通り過ぎていくように撃ったのは、昨日作戦の指揮をとっていた桜井(さくらい)ひなこ。そして撃った銃はスミス&ウェッソンM500。ハンドガンの中でもめちゃくちゃ威力が高い銃だ。

「昨日の作戦の命令無視は本当に反省しているの?」

「いや、命令無視はしていないよぉ。ちゃんと、スタングレネードで相手を無力化して、」

「相手の銃に入った弾をちゃんと撃って消費して殺したじゃないの」

「…そんな屁理屈言ってていいのかしら?」

「ってしおりんが言ってました」

 カチャ…

「私達は仲間を撃つことに躊躇いがないように教育されているのよ?しかも、この銃で撃たれたならまず即死級のダメージがいくと思うの。…あまり私を怒らせない方がいいと思わない?」

「は、はいぃ」

「とりあえず二人には課題を出します」

 そう言いながら本棚に置いてある書類の束を引っ張り出す。

「この書類に目を通して、レポートにまとめて提出して下さい。二人で協力して、ね?」

「はい!」

「よろしい。では、今週中にお願いしますね?」


 そう言われて部屋を出た二人は既に疲れきっていて、もう何もしたくない、今日生き残った喜びを噛みしめながら眠りにつきたいと、そう言いたそうな顔で、なぜか作戦時より疲れた表情をしていた。

「はぁ、疲れた。いやもう疲れた。おうち帰りたい」

「おかえり!」

「いつあんたがあたしの家になったのよ」

「疲れたねー。ひなちゃんもあんなに怒らなくてもいいのに。私たちが一体何したっていうんだ!」

「あたしが命令違反。あんたが準レズ行為よ」

「私はそんなのしてなくない!?」

「ともかく、このレポート終わらせるわよ。どうせあたし達に面倒な仕事押し付けただけなんでしょうけど」

「うーい」


「おはよう、二人とも。元気なさそうだね」

「…あんたの顔見るともっと元気なくすわ」

「おはよう!リリィもコレやる!?というか手伝って欲しいな☆」

「あら、それはいい考えね」

「いややらないから。それって君たちが昨日した命令違反のペナルティだろ?僕はやらないよ?」

「えぇ〜、お願い!おっぱい触っていいから」

「……だめ、それは君達のペナルティだし、僕が手伝ったら意味がないだろ?」

「今の間はなに?」

「いやいや、それにあれだよ。ここで僕が手伝うと、君たちが味を占めてこういうことをやるのが面倒になるだろ?そうならない為にも僕は…手伝えないよ、うん……仕方ない」

「だからその間はなに!?」

「リリィってたまに欲望入るよね〜」

「欲望に忠実なだけだよ。恥じることはない」

「変態は恥じなさいよ」

「リリィはこんな所で何してんの?もしかしてひなちゃんに用事?」

「まあそんなとこかな。いきなり呼びだされてね、何をやらされるんだか、よく分からないな。ほら、あの人病んでるからさ」

「あ〜、確かに。さっき私たちあの人の銃で脅されたし」

「…さっきの銃声は君たちか。ということはアレだな。可哀想な私を慰めてとかっていう感じのヤツか…」

「ふん、頑張りなさい?私達の安全はあなたにかかっているんだから」

「僕を危険な目にあわせた君は、今度からこういうことがないように頑張りなさい」

「善処するわ」

「…便利だな、その言葉。僕も今度から使おうかな」

「じゃあ、リリィも頑張ってね〜」

「生きて会えるといいわね」

 それだけ言って二人はその場をあとにする。

「…ハァ、今回はどうやってイかせようかな…。毎回同じプレイだと文句もうるさいからなぁ」

 前に同じプレイをした事があった時、彼女は泣きながら「どうしてこの前と同じプレイで終わらせようとするの?このやり方が慣れているの?ということは私の他に女がいるのね。その子を今回の抹殺計画の一部に組み込もうかしら。他にも……」なんてことがあった。

「今回は焦らしながらやるか…」


 ドアを開け、目の前にいたのは、やはり桜井ひなこで、涙を流して、しかし泣き声は出さずに泣いていた。

「…梨衣、私、頑張ったよ?頑張った、のに、どうして?どうしてあの子たちは命令違反とかするのよ。私があの子たちに弾を撃たせるのにどれだけ手を回したと思っているのよせめて命令くらい聞きなさいよなんでいつもこう言うことが聞けないのあの子たちだってもう大人なんだから言うことくらい聞けてもいいんじゃないかなそれとも私の教え方が悪いのかな私だから聞けないのかな私以外ならきいてくれるのかしら私はあの子たちにとっていらない存在なのかな死ねばいいのかしら私が死んで喜ぶ人間がいるのかしらでもそうよね人を殺しなさいなんて上から命令してるだけの私の言うことなんて聞かないわよね私はいない方がいいのかもしれないわね今思うとあの子たちって昔から私の言うこと聞いてないわよね梨衣が作戦指揮した時とかはスムーズに進むのにどうして私の時はいつもこうなのああやっぱり死んだ方がいいのかしら私って私を必要としてくれている人なんているのかしらいていいのかしらどうしてそういえば別の会議の時なんかもあの無能な奴らはただ尻で席を温めていただけなのに私の言うことにはいちいち文句をつけてかかってきたわよねもしかして私が無能なんじゃなくて私が有能すぎて他の人たちがついていけないのかしらでもそうよね今この世界で必要なのはつかえる人間より連携のとれる人間だものねあいつらは尻で席を温めているっていう共通の目的があって動いているものね私が入る隙なんてなかったのよねそうよねもうあんな会議に二度と私を呼ばないでほしいわまるで連携の取れない私はさっさと消えていなくなるからいなくなればあの子たちも幸せになれるしあの無能な連中も笑っていられるのかもしれないわねそうだとしたらこんな席に座って席を温めている私はなんだと言うのだってそうじゃないアイツらとは違うはずなのにやっていることは同じそうかもう嫌あいつらと同じなんて死んでも嫌死ねば変わるのなら死にたいわもう私はこの世界にいらないのねええ知ってます知っていましただって私がこの学校にいるということはあの家には私はいらなかったということですもんねどおりで最近私の扱いが雑になって来たと思ったらこんなことがあるんですものねそんなことだからあの家はあの子はあの子たちは…」


 理由もなく呼ばれた時点でこうなっていることには予想がついていたが、やはり何度目にしたところでこうなってしまったひなこは面倒なことこの上ない。

 落ち着かせる方法はあるにしても、ひなこはシチュエーションにもこだわりがあるため、レイプなどの系統を目的としたエッチ以外では無理やりやるのは逆効果。

 しばらく落ち着くまでひなこを喋らせたあと、梨衣はひなこに近寄り、ささやく。

「大丈夫、ひなこは悪くない。そうだよね、辛いこともあるし、皆が楽をしている間だってひなこはこんなに頑張ってくれていたじゃないか」

「…本当に?」

「あぁ、もちろん。だからほら、体の力を抜いて僕に身を任せて。気持ちよくなろう?一緒に、ね?」

「…り、ぃ…んっ♡……はぁっ、ふみゅぅ…」


 ―――――


「毎回毎回、リリィも大変だよね」

「そうね」

「だってひなちゃんは病んでるし、そのお世話をするのもリリィだし?なんかすごいな〜って思うよ」

「あたしは楽でいいわよ?楽なことに越したことはないのに、あなたって疲れそうな人に憧れるわよね」

「そう?でもかっこよかったり、強かったりする人ってすごいな〜っては思うじゃん?」

「あたし達の生活では、梨衣位の実力がなければ、目立つだけで殺されるわよ。まあ死にたいのなら止めないけど」

「う〜ん、死にたいわけじゃあないけど、バレずに強くなりたい!どうすればいいかなあ」

「強くなったことを見せつけなければ強くなったことがバレないわよ」

「それだ!しおりんあったまい〜」

「…あなたに褒められると馬鹿にされてる気分だわ」

「なぜに!?」

「理由は自分で考えて。馬鹿がうつる」

「うううううぅ…………分かんない♪」

「じゃあ諦めなさい」

「しおり〜ん、ヒント、ヒントだけでも〜」

「…そうね、あなたが馬鹿であることに気づいたら気づくんじゃあないかしら」

「…ん?」

「…ハァ、まあいいわ。さっさとレポート終わらせるわよ」

「そういえばしおりんって明日暇?暇だったら遊ばない?」

「暇じゃないわよ。というか明日はあなたも学校あるでしょ?」

「明日は休みって聞いた!」

「誰によ…。そんな適当なこと言ってないで続きをやりなさい。ほら、手が止まってるわよ」

「うぅ、いいじゃん〜。こんなの適当にまとめて提出すれば終わりだよ?」

「適当にやったらもう終わってんのよ。あなたが手を動かさないからいつまでも終わんないの。分かる?」

「うぇ〜、私、夜にやる気が出るのぉ」

「やる気を出したところで疲れきって眠ってしまうでしょう?」

「いや〜?私、アレだよ?やればできる子だよ?」

「そんなこと言ってるやつは基本的やらないし、やってもできないのがオチよ」

「あ、じゃあ私やらなくてもいいんじゃない?」

「あんまり小学生みたいな屁理屈言ってるようなら撃つわよ?」

「ひなちゃんみたいなこと言わないでよぉ。あれすっごい怖かったんだから」

「じゃあやれ。あと四秒以内にやらないと撃つわよ」

「ええ!?あのおばさんだってその十倍は待ってくれたよ?」

「四、三」

「カウントダウンしながら銃を出さないで!やる!やるから!ほら!」

「…まったく」

 まあ、衣愛は本当にやればできる子なので、適当にやったとしてもかなり早くレポートが終わった。

「…だとしてもこいつとは仕事したくない」

「酷くない!?」


 ―――――


 帰ろう…家、どこだっけ?どうしたら帰れるのかな?あれ?そもそも、あれ?名前はある。苗字、は…?ここ…あ、れ?溶ける?言葉が、盗られる?私が消えていく?というより、


 ー記憶が失くなるー



  ▪️


「もしも、どんな願いでも一つだけ叶えてやろうなんて都合のいいことを言われたら、僕は迷わずどんな願いも好きな時に叶えることができる能力が、ノーリスクで欲しいと願うかな」

「…どうしてあなたは子供の夢を壊すような発言をなんの考えもなく言うのかしら」

「いや、最近の子供も意外と欲張りかもしれない」

「あー、なんか分かるかも。最近の子供って、皆スマホとか持ってるし、子供らしい遊びなんてしてないもんね」

「つまり、最近の子供はあなたより精神年齢が上なのかもしれないわね」

「そんなことないもん!私、スマホめっちゃ使ってるもん!なんか面白そうなアプリで遊んでるもん!」

「発言内容が子供か馬鹿ね」

「馬鹿って言う方が馬鹿なんです!」

「…あなた達っていつも仲悪そうにしているけど、めちゃくちゃ仲良いわよね」

「そう見えるんだったら眼科に行くことをおすすめするわ」

「だよね。仲はいいけど、仲悪そうには見えないもんね」

「あなたは精神科へ行くことをおすすめするわ」

「では、私はあなたに中学校へ行くことをおすすめするわね」

「…なんでよ」

「友達を友達と呼べない恥ずかしさを克服するには、思春期真っ盛りの中学生になって学んでくるといいと思うわ」

「しおりんツンデレだからね」

「違うわよ!…というかなんでこんな話になったのよ」

「お昼ご飯を食べながら他愛もない話をしているのも、なんだか学生らしくて素敵だろう?」

「そうですね。私もここの学食は久しぶりに来ましたし、梨衣もたまには気が利くじゃない」

「私もそう思う。リリィが買ってくれたこのりんごパイめちゃくちゃ美味しいし」

「あなたは食べ物に釣られただけでしょ。ほっぺに食べカスついてるわよ。ほら、とってあげるから、少しこっちを向いて」

「ん、ありがと〜。やっぱしおりんって優しいよね」

「別に、これくらい普通よ」

(あの二人ってほんと仲いいわね。なのに詩織はなんであんなにつっかかっていくのかしら)

(自分では気が付かないことってあるだろう?特に、詩織はその典型だからね)

「なにこっちを見ながらにやにやしてるのよ」

「や、仲いいなって思って」

「…ハァ、ええそうね」

「やったあ!しおりんデレた!」

「ええそうね」

「しおりん私のこと好き?」

「ええそうね」

「…デレているのかしら?」

「そういうことにしておこう」

「そういえば二人はどういう関係なの?」

「恋人同士さ」

「それは分かるけど」

「待って分からないで梨衣の嘘だから」

「え?違うの?」

「この二人は僕達を恋人同士だと思っていたらしいが、それでも否定するかい?」

「あまりふざけないでね」

 カチャ

「僕達はただの友人さ。昔から仲が良くてね、今も仲がいいのは腐れ縁みたいなものだよ」

「へぇ、この学校に昔からの知り合いがいる人がいたのね」

「そういえばそうだよね。これってアレかな?運命ってやつ?」

「…ただの偶然よ」

「人はそれを運命と言うんだよ」

 バァン!

「…いっっっったぁ……耳、耳がぁ?」

「自業自得よ」

「え!?なんだい!?もう一回言ってくれないか!?」

「うるさい」

「仕方ないだろう!君が僕の耳元で銃を撃つから声が分からないんだよ!」

(あの二人ってめちゃくちゃ仲良いけどホントに付き合ってないの?)

(…いや、どう見ても付き合ってるでしょ、見れば分かるわよ)

「私はこれとレズカップルなんて嫌よ?」

 カチャ

「毎回毎回銃を出さないでよ、普通に怖いから」

「銃を出させないように努力してね?」

「善処するわ」

「あら、便利ねその言葉。今度私も使おうかしら」

「………」

(結婚すればいいのに)

「そういえばあなた達って、明日も仕事が入ってたわよね?」

「あぁ、明日は暗殺だったかしら?もらった資料ではそんなに難しくない相手だとは思うけど、明日もこいつとペアだし、前みたいにミスらないでほしいものね」

「違うし!前はあれ、あの…焦っただけだし!」

「それを世間一般ではミスというのよ」

「次はミスらずにいけると思うんだけどなあ…前回も行けたと思ったのに…」

「まあ、人間ミスはつきものだ。そのミスをどれだけ小さくしていくかが君の課題だね」

「大丈夫!次は絶対ミスらないから!」

「…そう」

「さて、そろそろ昼休みも終わってしまう。僕は教室に戻るけど、君たちはどうする?」

「私は要件があるから別の教室へ行くわ」

「あ〜、私も資料室に用があるし、そっちに行かなきゃ」

「あたしも教室に行くわ」

「なら、一緒に行かないかい?」

「結構よ。先に行くわね」

 そう言って詩織は席を立ち、食堂をあとにした。

「…あ〜、しおりんって、悪い人ではないんだけどね、なんか思春期って感じだよね」

「年頃の女の子っていう年齢でもないのに、扱いが難しいわね」

「それもまた、慣れてくると可愛く見えるものだけどね」

「あ、そろそろ私も行かなきゃ。またね、二人とも」

 衣愛も食堂を出て行き、ひなこと梨衣の二人が残った。やがて梨衣がひなこに対して口を開く。

「僕達、恋人同士に見えていたらしいね」

「…恥ずかしいから、あんまり言わないで」

 照れた彼女は、いつもの冷静な指揮官ではなく、一人の可愛い女の子でしかなかった。






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