警邏隊の隊員等は騒がしいのじゃ
こんにちは。
今日もよろしくお願いします。
まず修道会メンバーとブリーフィングなのじゃ。
食堂に姿が見えぬと思うておったら間延びした口調のリーダはこちらにおったのじゃ。まあ老人と母親、母親と同年輩のおばさんに囲まれた環境から同輩がおる環境に変わったゆえ気持ちは分かるのじゃ。
しかし、お仕事としては神殿側におるべきなのじゃ。まあそれは老リーディンやらマードが注意すべきことゆえわらわ的にはどうでも良いのじゃが。
そのリーダはわらわが修道会本部に着くのと入れ代わりに、警邏隊の面々を受け入れる準備のため一足先に神殿の礼拝所へ向こうたのじゃ。
リーダのことはまあ良いのじゃ。
通達事項はまずリーディンからお許しが出たゆえ治癒関係の祈祷を伝授してもらうための学習をすること、なのじゃ。ぱっぱと教えてもらっても良いのじゃが、やはり有り難みが必要じゃろうとベルゾと話し合った結果なのじゃ。学習とは言うても祭文の意味なぞを学んでもらうだけなのじゃがの。そして伝授されてからわらわ特製の等級外魔漿石の修道会の紋章入りバッチの授与を行う予定になっておるのじゃ。正直虚仮威しなのじゃが、まあ権威とはそうやって着けていくものなのじゃ。
この通達には歓声が上がっておったのじゃ。
続いてはちゃんとわらわからは説明したことがなかったゆえ、聖祝期の祭事と祭りに神殿から屋台を出すことの告知なのじゃ。遊戯の大会のことも屋台と連結したコンテンツゆえ説明しておくのじゃ。
遊戯大会の運営に冒険者を使う予定であった対象者でもあるゆえむしろ当事者達なのじゃ。
「勿論働いてもらうつもりですので、ここでの休憩時間に審判が出来るよう遊んでもらっています」
ベルゾよ、それは休憩時間ではのうて業務になるのじゃ。まあ良いのじゃ、連中はニコニコとしておるからの。
次の祈祷治療会の日となる海の日に神殿で食事会をするにあたってこのメンバーにも食事を出すという通達には皆大喜びなのじゃ。
ガントなぞからわらわの料理の話が流れておるのかの。
まあ神殿の食堂には入りきれぬゆえこの修道会本部で、となるのじゃ。
ここの厨房を使うことと当日こちらにも客を通すやも知れぬ、と言うことだけ押さえておけばよいのじゃ。
そして最後に今日の警邏隊相手の祈祷治療会のことなのじゃが、まだわらわの他に<治癒>が使えるものがおらぬゆえ前回と全く一緒の流れなのじゃと言うだけでお終いなのじゃ。
厨房へ行くモリエ等とはしばしのお別れをして、筋肉ダルマどもを癒すために移動なのじゃ。
移動中にガントには個別に話があることを伝えておくのじゃ。老リーディンがそれとなく言うておるゆえなんの話かは分かっておるようなのじゃ。
「マーティエ! 参りました」
「よろしくお願いします、マーティエ!」
「マーティエ!」
「ええい、お前等黙れ! まだご挨拶差し上げておらんだろうが!」
神殿の礼拝所に着くと警邏隊のゲノール隊長の部隊はもう先に着いておったのじゃ。騒がしい限りなのじゃ。
「リーディンもお出ましになるゆえ挨拶はまとめてで構わぬゆえ、暫し待つが良いのじゃ」
前回はわらわに全投げしおった老リーディンなのじゃが、修道会メンバーへの引継を兼ねて今回はちゃんと出てくるのじゃ。まあ単純に修道会メンバーの若手等に良いところを見せたい年寄りの見栄なのじゃ。
老リーディンがマードを先触れにやって来おったら隊長と挨拶を交わして、早速治療の会なのじゃ。
「其方等はマーティエ、マーティエとわらわを持ち上げるのじゃが、リーディンへの敬意と感謝も忘れてはならぬのじゃ」
「はい、マーティエ!」
「返事はいいのう」
サクサクと仕事は進むのじゃ。しかしこの筋肉ダルマども、前回<洗浄>を皆に伝授した結果清潔感がだだ上がりなのじゃ。軽い口先の話としてモテると言うたのじゃが、実際モテておるのではないかの。
「ああ、そうだ。それもあってマーティエへの感謝が大きいんだよ」
「城市の安寧のために身を張って働いておるもの等の生活に潤いがあることは良いことなのじゃ。それで怪我もしておらぬのに来ておるものもおるのじゃな」
わらわがそう言うと無傷であるのに来ておるもの等が照れ笑いをしておるのじゃ。
「折角ゆえ祈りだけでも捧げていくと良いのじゃ。祈りとは本来喜びと感謝で捧げるものであるのじゃ」
「はい、マーティエ!」
うむ、返事は良いのじゃ。
老リーディンと二人懸かりであるゆえ大した時間も掛からず治療は完了したのじゃ。わらわの<治癒>の扱いもかなり上達しておるしの。
礼拝の指導を受けておる警邏隊の隊員等を見つつ、ゲノール隊長の話を聞くのじゃ。
「極秘扱いだが、数名の内通者を拘束して尋問したぜ。それで一応捜査は進展している。あの副官に始末をつけてくれたマーティエのおかげだ」
そこで一旦切ってわらわに感謝を伝えてきたのじゃ。
「皆揃って言うことに曖昧なところがあって難航してるんだが、マーティエが助けてやった執政府の密偵がいただろ。あいつが支隊長と情報のやりとりしてるんでどうにかなってる。これもあいつを治療してくれたマーティエのおかげだ、感謝するぜ」
「重ねての感謝に礼を言うのじゃが、その密偵の治療に関しては其方の手柄なのじゃ。割れた魔漿石の石代は支隊長から出たかや?」
ゲノール隊長はうなだれて首を振ったのじゃ。自腹のようなのじゃ。
「支隊長が上手に立ち回って、死んだことにしたんで内通者どもに油断が生まれたのさ。解決後に経費として認められると良いな、報奨金だとこいつ等に飲まれてしまうからよ」
苦笑しつつゲノール隊長とハンケル支隊長を食事会に誘うのじゃ。
「ちと急な話で悪いのじゃが、あの副官が問題の冒険者どもと繋がっておったゆえ冒険者協会側の情報との交換と、ちょっとした予定を話し合いたいのじゃ」
「隊長ばっかずりぃ!」
「俺もマーティエの料理が食べたいです!」
ききみみ頭巾になっておった隊員等が騒がしいのじゃ。じゃが、話を此奴らにも通しておくのじゃ。
「まあ其方等も少し聞くが良いのじゃ。神殿と警邏隊の屯所間の、つまり出て目の前の広場での、盤上遊戯の大会を開くのと神殿前に食べ物の屋台をいくつか出すのとが今度の聖祝期の祭りの予定なのじゃ」
隊員等が聞いておるのを確認して続けるのじゃ。
「屯所の前で面倒事を起こす莫迦もおらぬとは思うのじゃが、警邏隊にも目を配ってもらいたいと思っておるのじゃ。礼は屋台で出す食べ物の類となるのじゃが」
「おお! 任せてください、マーティエ」
「応! 格好いいとこ見せますぜ!」
騒がしいのじゃ。しかし、冒険者を運営や審判に回すと場内警備が多少薄い気がしておったのじゃ。ちょうど良い連中なのじゃ。
騒がしい部下どもを一声怒鳴りつけ静かにさせたゲノール隊長は怒鳴った顔を手で揉みほぐしながらわらわに答えたのじゃ。怒鳴り顔なぞを子どもには向けられぬと言うゲノール隊長の謎の拘りを垣間見たのじゃ。
「例年閑散としているここの広場で大規模な催しが開催される。で、警邏隊にも警備などの要請があった、ってことなら確かにその話し合いに支隊長が神殿を訪れても不思議じゃないな。いい煙幕だ。予定は無理にでも空けさせて支隊長と一緒に来よう」
「うむ、よろしく頼むのじゃ。食事は楽しみにしてくるが良いのじゃが、祭りの会場警備は案外本気で大変かも知れぬのじゃ。そちらは覚悟しておくと良いのじゃ」
ただの口実や欺瞞ではのうて祭りは祭りでガチであることも伝えておくのじゃ。後で騙されたと言われても困るしの。
そんなこんなで警邏隊の祈祷治療の会はお開きなのじゃ。
帰って行く警邏隊の連中を見送った後、修道会メンバーは老リーディンに治療関係の祈祷伝授の内諾があったことを感謝し、その為の学習を神殿内の雑務と併せてこなしに向かったのじゃ。但し、ガントは別なのじゃ。
無論、リーダを目指すか否かの話もあるのじゃが今日は元よりガントの魔術の師匠に会いに行く予定であったのじゃ。
お読み頂きありがとうございました。