プレゼント!!!(2)
由衣と絆ちゃんの誕生日プレゼントに感動していると――。
机を挟んで俺の正面に座っていた如月が徐に立ち上がる。その顔は真剣で……まるで今から戦場におもむくようだ。
「さて……次はわたくしね」
「がんばって! のぞみおねえちゃん!」
「ふふっ、絆、ありがとう……お姉ちゃん頑張ってくるわ」
……お前ら、いつの間に仲良くなったんだ?
バレンタインの時か……?
「あああ!!! 望ちゃん、次は私がいこうと思っていたでござる!」
「アヤメさんの後なんて嫌よ。質はともかく、あそこまでの面白さはわたくしのプレゼントにはないわ」
「あっ……私も嫌です。お父さんには渡す瞬間も、より鮮明に想い出にしてもらいたいので。あの、巨大な物の後ではインパクトが弱くなりそうです」
「未来ちゃんがそう言うなら、自動的に私もそんな感じで~~。わおっ、わたしっていいお姉ちゃんだぁぁ!」
「お前なぁ……自分で言うなよ」
「み、皆ひどいでござる……『ガンダルシアちゃん』は可愛いのにぃ……」
生き物なのか!?
ま、まあ、なんにせよ、あの巨大プレゼントは面白さはピカいちだろう……俺も、もしプレゼントを用意しているとしたら……あれの後は嫌だ。
ハードルが高すぎる……。
「…………」
俺がそんなことを考えていると、如月の横に座っている明菜が不安そうな顔で、如月の方を見ている。それに如月が気が付く。
「あら……? 夢野さん、どうかしたのかしら?」
「き、如月さん、プレゼントをわたしも一緒に渡してもいいですか?」
「えっ……? それは構わないのだけど……何か理由があるのかしら?」
如月が何かを探るような口調で聞く。何か策謀がある、とか考えているのだろうか……でも、相手は明菜だぞ。
「よかったですぅ。やっぱり最後はわたしよりも家族のプレゼントの方がいいですから」
「…………」
「ふふっ、わたしが如月さんと一緒に渡せばあとは家族だけですから」
女神の様にほほ笑む明菜。
……その心遣いは明菜らしいな。でも、もう少し自分に自信を持ってもいい気がするけど……。
「ゆめちゃん……ううぅ、行動が美少女過ぎる……」
「お姉ちゃん、同性でも眩しく見えます……由衣はどう思いますか?」
「……店長の馬鹿」
「何で俺に飛び火したの!?」
「…………」
そんな明菜を見て如月は目を丸くしている。
やがて、深くため息を吐き、俺に聞こえなくらいの音量で何かを呟く。
「…………はぁ、自分のひねくれ具合が嫌になるわ」
「ん? 如月何か言ったか?」
「いえ、何でもないわ。それよりもわたしのプレゼントはこれよ。ふふっ、ほら、夢野さんも渡しましょう」
「は、はい。あ、あの……受け取ってもらえると嬉しいです」
「あ、ありがとう……」
俺は如月と明菜から差しだされたプレゼントを受け取る。
如月のプレゼントは手のひらに収まるぐらいの小さい包みだ。
明菜のプレゼントは筆箱ぐらいの大きさで、そこそこの重量感がある気がする。
「…………」
ちなみに……いつもは堂々とした態度の如月だが、今は俺と視線を合わせようとしない。いや、顔はいつもの冷静なものだから……いつもと変わらないのか?
「……さぁ、開けてみなさいな」
「あ、ああ……」
俺は如月にせかされる形で、包装を開けていく。すると……中からはプラスチックの箱が出てきた。それを開けてみると……綺麗な木製のオルゴールが出てきた。
えっと……如月からのプレゼントだと考えると……ビビるんだが……。
「な、なんかおしゃれだな……」
「……ありがとう。ちょっと、鳴らしてみなさいな……」
「鳴らす? ここを回せばいいのか……?」
俺はオルゴールをゆっくりと回す、かちっ、かちっと子気味よい感触が手に伝わり、離すと――。
綺麗な音楽が流れ始める。
「わあああああ、すっごい! おんがくがながれた!」
絆ちゃんは無邪気に喜んでいるが……
いや、確かに綺麗な音楽なんだけど……なんか邪悪な感じなんだが……。
これは――クラッシックの曲か? 何か聞いたことがあるけど……。
悩んでいると、心当たりがあるのか、未来がジト目で如月を見る。
「えっ……? な、なんで『魔王』なんですか……?」
ああ……シューベルトだっけ……?
「それはこの国に王になる男性への贈り物だもの。当然の選曲だわ」
「…………て、店長、魔王になる予定があるんですか……?」
「……あるわけねぇだろ……。というか、無粋なことを言うと……これすげぇ、高そうなんだけど……」
如月の家のことを考えると、これで家が買えると言われても不思議ではない……。
だが、俺の不安をよそに如月は俺の反応が嬉しいのか、得意げにほほ笑む。
「値段は気にしなくていいわ」
「い、いやでも……」
「だってこれ……わたくしが作った物だもの……」
「うわ……のぞみん、相変わらずハイスペックだなぁ……」
「のぞみおねえちゃん! すっごいいい!!!」
「は? えっ……こ、これを?」
皆驚いてる……いやだって……。
如月の言葉を聞いた後、俺は再びオルゴールを見る。温かみのある木材に、お洒落な蝶や花が彫られていて、外見だけでも、名のある骨董品だと言われても普通に信じるぞ?
えっ……マジで?
俺の視線に照れたのか、如月は明後日の方向を向く。
「…………元々、物を作るのは好きなの。これは……自信作よ。光栄に思いなさいな」
「ありがとう……」
なんか、手作りと聞くと、如月の想いがこもっているようでいいな……。
……こ、ここは感動してるのがバレるとなんか恥ずかしいので、ごまかしてしまおう。
「い、いや、如月のことだから、土地の権利書や、国宝級の宝石を出してくると思った」
俺の言葉にキョトンとした表情で、可愛らしく小首をかしげる。
「ん? あら、その方が好みだったかしら……だったら、すぐにフレアに用意させるわ」
「ま、待て!」
スマホを取り出して本当に電話しようとしている如月を慌てて止める。
「俺はお前の手作りが嬉しい! これは一生大切にするからな!!!」
「そ、そう……そこまで言ってもらえるなんて、用意した甲斐があったわ……わたくし、少し外の空気を吸ってきます」
如月はそっけなくそう言うと、部屋から出ていく。
……あ、あれ? 照れたのか? あれ……。
「お父さん……最初から素直にそう言えいいのに……」
うっせえよ。男のちっぽけなプライドだ……。
でも……最初から……ごまかさない方がよかったな。




