番外編 母は見た!
ある日の午前中、ブリジットは体重計を何度も乗り直していた。難しい顔をして体重計の目盛りを睨む。
「ねえ、メリィ。私、甘味禁止になってここのところ甘味を食べてないよね」
「はい、食べてません」
近くに控えるメイドのメリィはきっぱりと答える。ブリジットは真剣な様子でメリィに相談する。
「甘味を断ってるのに、まったく変わらないのよ…なにかの呪い?それとも、食事にこっそり砂糖入れてる?」
「砂糖は入れておりません」
メリィはキッパリと答えた。
「だよねー…なんで痩せないのかしら」
ブリジットは首を傾げながら体重計に乗り直す。目盛りは変わらない。
「これはもうこっそり誰かが私の料理に砂糖混ぜてるんじゃない?」
「そんなことはされてないと思うのですが」
メリィは困惑げだ。ブリジットは腕を組んだ。
今のところメリィに嘘はない。ならば…
「メリィ、犯人は思いもかけないところにいるわ。まずお母様に聞きましょう」
*
ブリジットは母とお昼を食べる際、直球で聞いた。
「と言うことで、お母様が哀れに思って私の食事に砂糖入れてない?」
「誰が入れますか。哀れに思ったら解禁しますよ。あなたが夜な夜な食べてるんじゃない?」
母が上品に食事を食べながらブリジットにひどい予想をたてた。
「人を妖怪みたいに言わないでくださる?ねえ、メリィ」
ブリジットは同意を求めてメリィに声をかけた。
「夜な夜な徘徊の記録はございません」
メリィが記録で否定する。
「そうじゃなくてデータなしでするわけないと否定して欲しかったんだけど…でもなんでだろう?」
「キッチンメイドやシェフ疑ってもだめよ。特に砂糖は減ってないそうよ。砂糖は貴重だからきびしく管理してるもの」
母もしっかり記録データでブリジットの新たに浮上した容疑者を否定する。
「じゃあなにが原因だろ。食べる量はおなじより少なめにしてむしろサラダ多めにしてヘルシーにしてるのに。ほらサラダ多いでしょ」
ブリジットは母にサラダを見せた。皿の上のサラダには、つやつやと光るほどドレッシングがかかっている。
「…確かにサラダ多いわね」
母は一瞬の間の後、 ブリジットに同意する。
「ほんと何が原因なのかしら」
ブリジットは首を傾げながらドレッシングを手に取った。とぷ、とぷ、とぷ。
さらに、もう一度。とぷ、とぷ。ドレシッングをサラダにかけた。
母はブリジットとドレッシングの瓶を交互に見た。そして静かに目を閉じた。
次に目を開けたときは、母にしては珍しく声をどもらせた。
「ブ、ブリジット、サラダ食べ過ぎじゃない?サラダを控えたら?」
「いえ、お母様。甘味を控えてからサラダを食べて野菜の甘みに目覚めたところなんです」
ブリジットは真剣な面持ちで話す。
「そ、そう。ほどほどにしなさいよ」
母は遠い目をしたまま席を立ち去った。
(それ、野菜じゃなくてドレッシングの甘さよ……)
残されたブリジットは原因が判明しないのに首を傾げながら、サラダから溢れたドレッシングをパンにつけて食べた。
後日、母から甘味禁止は解かれた。その際、サラダを食べるのは控えなさいと注意が入った。
結局、ブリジットには痩せない謎が最後まで解けなかった。甘味禁止が解けてブリジットは大変喜んだ。
迷宮入りだわ。
お母様も急に甘味禁止を解くなんてどうしてだろう…やっぱり嘘がわかってもわからないことが多すぎるわ。なんにせよ!今日は甘味解禁のお祝いだわ。早速シェフにクロカンブッシュを作ってもらおう。だってお祝いだもの。
ここまでお付き合いいただきありがとうございます。
嘘は見えても、人の気持ちは見えない。そんなブリジットの物語は、まだ続きます。
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次回から第3部に突入します。
少し更新をゆっくりにして、文章や構成をもう少し練りながら書いていく予定です。
より楽しんでいただける形にできるよう頑張りますので、気長にお待ちいただけたら嬉しいです。




