13.死の舞踏会と見える嘘⑨その後
あの舞踏会の事件の次の日の三時ごろ、ブリジットは温室で紅茶とケーキを楽しんでいた。
「ああ、美味しい。ショートケーキは正解だわ。しっとりとしてきめ細かいスポンジ、そしてみずみずしい苺。最高だわ」
「ブリジット様が美味しそうに食べられてシェフも喜んでるでしょう」
メリィが誇り高そうにブリジットの隣に立ち給仕する。甘い緩やかな時間が流れていた。
その時間を断ち切る声が聞こえた。
「ブリジットーー!!
「今の声…お母様?」
「奥様ですかね?」
「どうしたんだろう?メリィ見てきてくれる」
「かしこまりました」
メリィは席を外したが、すぐに帰ってきた。新聞を握りしめ怒りをあらわにした母を連れて。
「ブリジットーー!この記事はなんですか!!」
母は新聞をテーブルに置き、該当記事を指差した。ブリジットは記事に眼を通す。
なになに…見出しは"舞踏会に颯爽と駆けつけ現れた黄昏の美貌を持った姫君が事件を解決する"か。
《姫君は気品とユーモアを兼ね揃えたモチーフの果物のペンダントトップを左手にブレスレットにつけ、右耳にもう一方の同じモチーフのペンダントトップをイヤリングとしアシンメトリーで上品な装いをしていた、姫君は外見だけではなく内面も美しくご聡明であられあっさりと事件を解決した。筆者はこの姫君に会えたことを心から感謝したい。
素晴らしい手腕に栄光あれ》
あらー。ベタ褒めですね。いやん。恥ずかしい。姫君って私のことよね、照れるー。
メリィは食い入るように記事を読んでいる。
「これは、ブリジット様のことですね。素晴らしいです。ブリジット様」
ふふふ。メリィも褒めてくれた。もしかしてお母様も感極まって駆けつけてくれたのかな。
ブリジットは期待を込めて母を見た。
「ブリジット。これはあなたのことですね」
「はい!」
「大人しくするようにいったのに」
母はこめかみをピクピクさせている。母の反応が思っていたのと違ってブリジットは焦りはじめた。
ま、まずい。これは不可抗力感出さなきゃ!
「あのですね、たまたま事件に居合わせただけです。たまたま犯人がわかり暴いただけです」
「たまたま?」
「はい!」
「うそおっしゃい!よく見なさい!颯爽と駆けつけって書いてるでしょ!あなた自ら事件に関与したんでしょ!!おまけに淑女にあるまじきことに走って駆けつけたんでしょ!!」
「えっ。すごい。この記事でそんなことまでわかるなんて….お母様どこかから見てた?」
「誘いに軽々しく応じたり淑女にあるまじき行為はしてはなりませんよと伝えたはずよ!ブリジット」
「まあまあ、つい刑事のフィンの背中を追いかけてしまっただけです」
「あなた、そんなどこの猫みたいなこといってるの!いい!ブリジット。淑女である自覚を覚える為にあなたには我慢を思い出させます!」
「へ?」
「しばらく甘味禁止!!メリィ、このケーキを処分しなさい!!」
「そ、そんなー!!待って!メリィ持っていかないで!」
「ブリジットさま。すいません。奥様の命令は絶対なんです」
「そんなーーせっしょうなー!!」
ブリジットの叫び声が屋敷に響き渡る。母がため息を吐き、 ブリジットに忠告する。
「こんな状態じゃ当分解禁にはならないわよ、私は甘すぎたわ。これからは厳しくしますからね」
ブリジットは改めて決意を込めた。
「次はは絶対、関わらない!!!」
…と、その時は本気で思っていた。




