人生ユーモア短編集

＜９６＞ 瞬発力

　人生には瞬発力が求められる。悪口ではないが、ゲームの囲碁や将棋etc.のように、ジィ～～っと考えている時間はありません。真剣勝負の人生では瞬発力のある的確な次の動作が求められます。失敗は決して許されず、はいっ！　もう一度っ！！　などといったドラマ制作のテーク２はない訳です。＾＾

　とある山村農家の稲架(はさ)は、刈り込むか、もう少し時期を待つか迷っていた。まさかこの夏の暑い時期に雨は降らないだろう…と考えれば、明日でも刈り込みはよかったのだ。早春に植えた早稲(わせ)はすでに黄金色の稲穂を垂れ、豊作に実っていた。だから今日でも明日でも刈込は可能だった。

『よしっ！　やるか…』

　決断した稲架は瞬発力ある動作でコンバインの調整、刈込の準備を始め、その日のうちに何反もの稲を刈り取ってしまったのである。

　次の日は雨だった。稲架の瞬発力は功を奏したのである。一日遅れた今日では刈り込みは手間取ることは必死だった。

『昨日、刈っておいてよかったな…』

　稲架は日延べせず、よかった…と思ったのである。昨日の瞬発力に稲架は自分自身を褒めた。

　このように、的確な瞬発力は人生を生きる上で大きな成果をもたらすのです。＾＾

　　　　　　　　　　　　　　　　　　完