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<82> 回想

 人生も年老いると、過去のよかった想い出を振り返り、回想する機会が増えます。侘しい話です。^^

 とあるホルディングスのトップ役員である十河は今年で古希を迎えていた。最近、めっきり身体が弱ってきた自分を、十河は肌で感じるようになっていた。ふと、回想するのはバイタリティーに溢れ、若かった頃の動き回っていた自分だった。今から考えれば、あれだけよく動けたなぁ~と思える十河だった。

「ははは…十河さん、(さかずき)が進みませんなぁ~」

 経済団体で知己となった、とある会社のトップ役員が銚子を持ち、杯を促した。この日は懇親会を兼ねた酒宴が超一流料亭で開かれていた。

「ははは…年ですかな。若い頃は日本酒ををコップに注いで飲んでおりましたが、今ではワインやビールの方が口に合います」

 十河は注がれた杯の酒を飲みながら小さく返した。

「いや、それは私も同じですな。では…」

 返杯された杯を飲み干し、赤ら顔でとある会社のトップ役員は呟くと、他の会社トップの席へと足を向けた。こうして夜は更けていった。

 このように、人生は老いるに従って回想する機会が増えるようです。私はこれを加齢にともなう回想比例の法則と呼んで研究中です。^^


                  完

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