表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/85

<24> 風

 人生には風が吹いている。生きていこう…と進む方向に吹く順風と、反対側の方向へ吹く逆風だ。風と言葉が交わせるなら、どうか一つ、味方になって下さい、出世した暁には美味しいパンを食べてもらいますから…くらいのことは言いたいものです。^^

 高林は、とある会社に勤めるしがない中年社員だ。

「高林さ~ん! これ、お願いねっ!」

 高林のデスクの上へ、ドサッ! と書類の山を置いたのは、結婚もせずキャリア・ウーマンの道をひた走る課長の半田美沙だった。うざったい視線を半田に向けた高林だったが、直属の上司の命なのだから従う他はなかった。

「はい…いつまでにです、課長?」

「そうね、今週一杯まででいいわ…」

「分かりました…」

 素直に応諾したが、どう贔屓目(ひいき)に見ても十日、いや今月一杯はかかるな…と、高林には思えた。高林は救いの神風が吹くことを願った。すると、その思いを知ってか知らずか、今まで吹いていなかった会社ビルに強風が突然、吹き始めた。それまで微風すらなく、会社ビルの窓は全て開けられていたから堪らない。高林の上に置かれた書類の山は瞬く間に課内に吹き飛び、舞い散った。課内の誰もが書類を拾い集めようと右往左往したが吹く風は一向に吹き止まず、全書類が高林のデスクの上へ戻ったときは退社を告げるチャイムが鳴り響いた頃だった。ところが、誰もが気づかない不思議な現象がこの書類に起きていた。それに高林が気づいたのは、次の日の朝だった。諦めていても、まあ仕方がない。少しづつやるか…と最初の書類の一枚に高林が目を通したときだった。書類は処理すべき箇所がすべて処理れていたのである。まさか…と思いながら、次の一枚、そしてさらに次の一枚と高林は書類に目を通したがやはり同じで、全ての書類が処理されていたのだった。

『そんな馬鹿な…』

 高林は我が目を疑ったが、書類の山が全て処理後の書類に変身していたのは(まぎ)れもない事実だった。

「あの…課長、出来ました」

「ええ~~っ!!」

 半田は悲鳴に近いソプラノの高音で驚いた。それもそのはずで、今朝から処理にかかったとして、まあ今週一杯では無理ね…くらいに踏んでいた矢先だったからである。とはいえ、処理済みなものは仕方がない。

「や、やるじゃない。ご苦労様…」

 半田は高林にそうとしか言いようがなかった。半田は味方の風だったのか…と、助けられた昨日吹いた順風に感謝した。

 まあ、こんなお話のようなことは有り得ないでしょうが、人生を守る風と攻める風は、確かにあるようです。どうもその風は運なのではないか? と思います。^^


                  完

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ