忘れるのは、忘れたいから…。
忘れなかったのは忘れたくなかったから。
夢を見た。遠い遠い過去の幻影…。
【初恋】だった…。ソレ以前にもソレ以降にも、あれ程までに恋い焦がれた人はいなかった。【初めての失恋だった…。】生きる希望を失った気がした。ソレからの人生は惰性だったと思う。
ソレからと云うもの、好意を寄せる人が現れたとしても、ソレが恋なのか愛なのか解らなくなった。人伝に聞いた。【初恋の人】は結婚をしたみたいだ。しかも、その結婚相手は私の見知った人物だった。至る事が容易に想像出来た。
だからこそ私は興奮をしたのだ。
私の記憶の中の彼女が…。
私の記憶の中の人物に抱かれる。
幾度と妄想をしていくと。
客観的なソレは…。
いつからか主観的なモノへと変わった。
私の記憶の中の彼女は…。
私の記憶の中の人物になった…。
そんな私に抱かれるのだ。
いつからか私は私ではなくなっている。
そんな感覚で満たされていく。
私は彼となり、彼は私となる。
そんな私に…。
四月一日二葉と云う人物が尋ねてきた。可愛らしい女性だった…。ただ生きているのか死んでいるのか解らない程に色白い。整い過ぎた顔は造り物の様に見える。
そんな生ける屍は云った。
「他人と入れ替わる方法。お教えしましょうか?」
そして…。私は私ではなくなった。




