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足首
彼はボランティアの医師としてー
内戦の絶えない異国の地へと旅立った。
他人の為に命を危険に晒してまでー
自らの信念を貫こうとするー
そんな彼をー
私は心から尊敬していた。
彼が旅立ってからー
半年程、経った頃。
彼からー
1通の手紙が届いた。
その手紙にはー
小型で低威力の爆風型地雷を踏んでしまった事。
足の踝より下が吹き飛ばされてしまった事。
普通の生活をする事でさえ困難になってしまった事。
ー が書かれていた。
それ以来ー
私は夢を視る様になった。
足首が吹き飛びー
片足を引き摺りながらー
歩いてくる彼からー
私は逃げている。
私の知る彼ではない彼がー
恐くなったからだ。
私はー
例え彼が事故に遭いー
半身不随になろうとも愛せるのだと思っていたのだが…。
それはー
間違いなのだと気付いてしまった。
もう…。
彼はー
私の知る彼ではない。
足首が失くなってしまった彼をー
愛せる自信はない…。
だからー
私は…。
街に行ってはー
足首を探している。
もう1度ー
彼を愛する為にー
彼に合う、足首を探している。




