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ガルドフェルト帝国戦記  作者: やしき丸
序章

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第一皇子ヴィルヘルム

迫り来る剣を避け、お返しにこちらも剣で斬りかかる。

しかし俺の剣はあっさりとかわされ、更にそのお返しが飛んできた。


回避は間に合わないと判断した俺は同じく剣をぶつけて競り合いを挑んだ。


力は互角。互いに押し合う剣はびくともしない。


ならばと隙をついて俺は蹴りを入れた。

しかし、読まれていたのか簡単にかわされてしまい、逆に軸足を払われ俺は地面に転倒した。


最後に剣先を突き付けられて勝負は決まった。


「参りました」


俺が降参すると、エルザはにっこり笑って俺に手を差し出した。


「腕を上げられましたね」


俺の手を引っ張って起こしてくれたエルザが俺を褒めてくれた。


「そうかな?」


いまいち実感はない。


「初陣で実戦を経験したからでしょうか。落ち着きが感じられます。考えて動いているのがわかります」


「エルザには勝ててないけどな」


俺は今まで一度たりともエルザに勝った事がない。


「当たり前です。私は騎士です。指揮官より弱い騎士など、存在意義が疑われます」


「そんなものかねぇ」


「そんなものです」


エルザとの剣の稽古は毎日欠かしていない。

別に強くなりたいからと言うわけではなく、運動しないと体が鈍ってしまうと思ったからだ。


指揮官に剣や魔法の強さが必要だったのはだいぶ昔の話だ。

剣も魔法も体系化され、徹底的に対策されるようになった。


個人の武力が戦況を左右する時代はとうの昔に終わっている。


もちろん例外はいる。

どこそこの国の誰かが『一人で一万の敵兵を屠った』なんて言う話もたまに聞こえてくる。

大体こう言う話は誇張されているにしても、一人が大暴れした結果戦況が変わるなんてことも、ごく稀にだがある。


ただまあ例外は稀だから例外なのであって、基本的に戦争は戦略と戦術、そして何より数がモノを言う。

この間のはロレアーノ王国の兵が弱兵だから勝てたのであって、強い国が相手だったら負けていたのはこちら側だっただろう。



エルザとの鍛錬を終えた所に城の使用人が俺を呼びに来た。


第一皇子ヴィルヘルム殿下からの呼び出しらしい。


『はてなんだろう』と首をかしげながら、俺はヴィルヘルム殿下の執務室に向かったのだった。




「ロッカには総督府を置くことにした。ついてはお前に総督を任せようと思う。引き受けてくれるか?」


開口一番こんなことを仰るヴィルヘルム殿下。

引き抜きですね。わかります。


「辞退させていただきます」


ここは迷うことなく断る一択だ。


「ほう。何故だ?」


ヴィルヘルム殿下は面白いものを見るような目で俺を見ている。

……遊んでやがる。


「私はただの伯爵家四男です。それがいきなり総督と言うのは分不相応と考えます。加えて私はフランツ殿下の配下でもあります。総督となるならば、まずはフランツ殿下が相応しいかと」


一気に言い切ってヴィルヘルム殿下の顔色を伺う。

相変わらず『こいつおもしれー』みたいな顔をしている。

……怒ってないだけマシだと思おう。


「ふむ。試しただけのつもりだったが、こうなると少し惜しくなってきたな。どうだ、俺の配下にならないか?」


ヴィルヘルム殿下はついに飾る言葉も捨てて俺を勧誘してきた。


「申し訳ありませんが。私の主はフランツ殿下です」


「……そうか。あいつは良い配下を持ったな。勝ち馬に乗る事しかできぬあくたどもと比べると、お前はよほど輝いで見えるぞ」


「過分なお言葉、光栄です」


ヴィルヘルム殿下からの俺の評価が高すぎる。どうなってんだ。


「俺が皇帝となったら、お前は俺に忠誠を誓ってくれるか?」


「……フワンツ殿下はどうなさるおつもりですか?」


ヴィルヘルム殿下が皇帝となったら……フランツ殿下を排除するつもりなんだろうか。できれば穏便にフランツ殿下を大公にして仲良くやってほしいんだけど……。


「フランツを排除するつもりはない。あいつは野心家だが、それはこの皇太子争いが正当な競争だからだ。俺が皇帝になればあいつは俺に従うだろう。あいつは馬鹿ではない」


フランツ殿下の事を嫌っているのかと勝手に思い込んでいたのだが、どうやらただのライバルと言う認識のようだ。

フランツ殿下が害されるような事はないと言い切ってくれたのはありがたい。

それなら俺も安心して――


「では、私はフランツ殿下の副官として帝国に尽くします」


俺の答えはこれしかない。主を定めたのなら、最後まで通す。


「……そうか。フランツを頼んだぞ。あいつには味方が少ない」


良いお兄さんじゃん。



ヴィルヘルム殿下の執務室を辞した俺は、その足でフランツ殿下の私室へと向かった。



「そうか……。ヴィルヘルム兄さんはアルバートを引き抜こうとしたんだね……」


怖い笑みを浮かべるフランツ殿下。


「ちょっと試されただけです。本気ではなかったようですよ」


「それでも、だよ。どうやって仕返ししてやろう……」


フランツ殿下はご立腹のようだ。


「下手に手を出してもこちらが痛い目を見るだけです。自重してください」


「ちっ……。仕方ない。……それにしても、やっぱりヴィルヘルム兄さんは見る目があるね」


「いきなり総督と言うのは驚きましたが……」


過大評価にもほどがあると言うものだ。


「でも良かったよ。総督なんてすぐにちっぽけなポジションに感じるようになる。断わって良かったと思うようになるはずさ」


殿下はほんとに野心家だなぁ……。



そんな会話をしていると、殿下にお呼びがかかった。

今後の帝国の方針を決める会議に、フランツ殿下の参加が認められたのだ。



なぜか俺も。

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