ロレアーノ王国の滅亡。そして――
翌日。
俺はローゼンベルク侯爵の領軍を率いて王城の門の前にやってきた。
城の中からの攻撃はない。完全に立て籠もっているだけのようだ。
「さて。門は固く閉ざされている。中には死兵が詰まっているだろう。どうする?」
ローゼンベルク侯爵が聞いてくる。
「ベルントなら門を壊せると思います。後は……しらみ潰しにするしかないかと」
「そうだろうな。一応王族は捕らえておくのが良いだろう」
「そうですね」
王族は、生かして捕らえておくに留めるのと皆殺しにするのとでは、勝った後の統治のしやすさに違いが出てくるだろう。
残虐な略奪者だと思われると面倒だ。
後で担ぎ上げられる可能性を考えると処刑される可能性もあるかも知れないが、それにしたって一旦は帝国に移送してからだ。
「ベルント。あの門を開けるか壊すかして軍が通れるようにしてくれ」
「腹いっぱい食わしてもらったもんで、その分きっちり働きます」
ベルントが門を開けようと力を入れた。
――が、軋む音はするが、開きそうにない。
ベルントは普通に開けるのを諦めて、門を壊すことにしたようだ。
思いっきり腕を振って拳を叩きつけた。
――ドガンッ!!
とんでもなく大きな音が響き渡り、門にひびが入った。
ベルントは更に何度も拳を叩きつける。
――ドガンッ!!ドガンッ!!
ベルントが拳を叩きつける度に門に入ったひびが広がっていき、ついにグシャッと言う音と共に門は破壊された。
「乗り込むぞ!相手は死兵!気を抜くな!潜んでいる敵を見逃すなよ!」
俺は大きな声をあげて兵を突入させた。
城の中には結構な数の兵が残っていたようで、あちこちで剣での斬り合いが発生している。
「オラァッ!死ね!」
「お前も道連れにしてやるっ!」
ロレアーノ王国軍の兵はもはや生き残る事など考えてはいないようで、相打ち覚悟の攻撃にこちらの兵も少しずつ削られている。
城の一階から始まり二階三階と制圧が進んでいく。
玉座の間にロレアーノ王国の王はいなかった。
恐らく上の階の私室にいるものと思われる。
城の中はあちこちに家具などが積み上げられていて、その障害物越しに魔法や矢が放たれてくる。戦うには狭すぎる王城の廊下では回避する事もできない。
こちらも遠距離から敵兵を攻撃するように指示を出した。
敵兵を倒してから障害物をどけなければならないため、中々制圧が進まない。
上の階に行くほど障害物が多く積み上げあられていて、今日中に城の制圧が終わるかは微妙なところだ。
「……何をしてるんですか?殿下」
制圧が終わった玉座の間で殿下が玉座に座っていた。
「ちょっと玉座の感触を味わってみたくてね。中々体験できないだろう?帝国の玉座に座ったりしたら首が飛んでしまうし」
「……」
うちの主はたまにおかしくなる時がある。
今も戦闘中だと言うのに……。
「そう怖い顔をしないでくれ。王族を捕らえたら僕がおもてなししないといけないだろう?適度に後をついていかなきゃいけないからね。こうして進軍を待っているのさ」
「まあいいですけど。完全制圧にはもうしばらくかかりますよ。死兵がうようよいますので」
「みたいだね。まあ負ける事はないだろうし、気長に待つさ」
そこらをうろつかれるよりはマシか。
俺は玉座に座ったままの殿下を放って上の階へと移動した。
「王族を見つけたぞ!」
しばらく待っていると、どうやら王族が見つかったらしい。
現在は5階の制圧を目指していたはず。
王の私室にいたのかな。
「傷をつけるな!安全に下に移送しろ!」
ここで王族に傷をつけられると面倒な事になるので、扱いは慎重にしなければならない。俺は兵に王族の移送を指示した。
「お初にお目にかかります。ガルドフェルト帝国第三皇子フランツ・フォン・ガルドフェルトと申します」
「……」
フランツ殿下が挨拶をしたが、ロレアーノ王国の王は黙ったまま口を開かない。
他の王族もこちらを睨みつけたまま黙っている。
「お気持ちはお察しします。しかし敗軍の将の扱いを決める権利は勝者にあります。抵抗などせず、大人しく従って下さいね」
「わかっておる」
「できれば残りの兵に投降を呼びかけてほしいところですが……」
「もはや私の声など聞かないだろう。皆ここを死に場所と定めておる」
「そうですか」
ロレアーノの王は大人しくついてきているが、兵に投降を呼びかける気はないようだ。王の言う通り、言っても聞かないかも知れないが……。
城を出て陣幕に戻る。
城の完全制圧ももうすぐだ。
この戦いももうすぐに終わる。
ロレアーノの王族には一つの陣幕が与えられた。
見張りはいるが、拘束はしない。
「城の制圧が終わりました!」
伝令がやって来て、城の制圧が終わったことを告げた。
やっと終わった……。
ルオーレに入ってから結構な被害を受けてしまった。
殿下曰くいらない諸侯がほとんどだけど。
「終わったね。とりあえずロレアーノ王国方面だけは獲れた」
「ええ。あとはルバリエ方面ですが……恐らく負けたでしょうね」
「まだ報告が来てないからわからないけど、さすがに雷神を落とせるとは思えないし、負けるだろうねえ」
その後、殿下とロレアーノ王国の後始末について話していると、伝令が陣幕に飛び込んできた。
「大変です!」
慌てた様子の伝令に緊張が走る。
「何があった?」
「ザカルシュが……」
「ザカルシュが?どうした」
ザカルシュは帝国の西の隣国だ。
そのザカルシュがどうしたと言うのか。
「ザカルシュが、我が国に攻め込んできました!」
「何!?」
「すでに国境を越え侵攻を開始しております!現在我が国は大軍を派兵しており、防衛は難しく――」
帝国の西の隣国ザカルシュが、突如帝国に攻め込んできたらしい。
ルバリエとロレアーノ王国に大軍を派遣している帝国に、防衛しきるだけの戦力は残っていないだろう。
伝令が到着するまでの時間を考えると、もうだいぶ侵攻されてしまっているかも知れない。
「殿下」
「大変な事になったねえ」
「随分落ち着いてますね……」
「そうでもないさ」
「とにかく諸侯を集めて、急ぎ帝国に戻りましょう」
俺は殿下の返事を聞く前に動き出した。
こうしてロレアーノ王国は滅亡した。
しかし、同時に帝国は大きな危機を迎えたのだった。
ここまでお読みいただきましてありがとうございます
もしよろしければ評価や感想をいただけますと大変励みになります
よろしくお願いします




