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ガルドフェルト帝国戦記  作者: やしき丸
第一章 ロレアーノ王国侵攻編

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狂気

ロレアーノ王国軍は王都ルオーレの中に退いて行った。

恐らく街を丸ごと利用しての防衛線を挑むつもりだろう。


殿下の指示によって帝国軍は進行を止め、街を包囲するように展開したのだった。



「なぜ止めたのですか!あのまま攻めていれば、今頃王都は陥落していたはず!」


「明らかに引き込もうとしてたからねえ。誘いに乗る必要はないだろう?」


「弱気過ぎます!弱兵相手に小細工など不要!攻めて攻めて攻めまくるのです!」


「……」



軍議は荒れた。

あのまま戦えば勝てたと諸侯は口を揃えて主張している。

殿下は呆れて黙ってしまった。


「ルオーレを包囲しましたが、これからどうするおつもりか。まさか兵糧攻めなどと仰るつもりですかな?」


「……」


「相手が反撃してこないのは、我らを恐れているからです!ちょうど良い。今我々は街を包囲しています。四方の入り口から同時に攻めかかれば良いでしょう!」


諸侯は強気な姿勢を崩さない。


「良いだろう。じゃあ、明日の朝から始めよう。四方の入り口から同時に攻め入る」


殿下は諸侯の案を受け入れてしまった。何か考えがあるんだろうか……?




そして翌朝。

帝国軍は四か所ある街の入り口から同時に攻め入った。


最初はさすがに慎重に街に入った諸侯達だったが、街に侵入すると『何もないではないか』と勢いを取り戻して進軍して行った。


そして帝国軍が街の中心付近まで到達するのを見計らったように、遂にロレアーノ王国軍の反撃が始まった。

街のあらゆる場所から攻撃が開始されたのだ。


建物の屋根の上から魔法と矢が降り注ぎ、路地裏から死兵が突っ込んでくる。

たちまちの内に乱戦となって、帝国軍は大混乱に陥ってしまった。


退こうにも後ろは味方が詰まっている。逃げようにも道幅が狭く、路地裏にはロレアーノ王国の死兵が潜んでいる。


ルオーレの住民は避難させてあるようで、建物の中からも敵兵が飛び出してきた。




「これはまずいですね……」


「そうだねえ。大きな被害で出るだろうねえ」


殿下は全く気にした様子はない。……おかしい。


「殿下。退いた方が良いのでは?」


「いや。まだ退かないよ。退くのはもうちょっと後だ」


「……。何をお考えですか?」


()()()()()()から間引こうと思ってね」


間引く……?


(まさか)


「利用するつもりですか。この状況を」


「こういう機会は中々ないからね。()は減らしておかないと」


「そう言う事ですか……」


周りに聞こえないように小さな声で話していて良かった……。



殿下は敢えて力押しを継続している。

()()()苦戦している。


排除するためだ。自分の《《敵》》を。



「あまり好きなやり方ではないですね……」


「僕だって好きなわけじゃない。でも、皇帝になるためには、やらなきゃいけない」


「……大公では、だめなんですか?」


「全ての手を尽くして、その結果が大公なら受け入れるけどね。まだやれる事はあるだろう?」


恐ろしい人だなあ……。


「僕の元から離れるかい?」


答えなんか決まっている。


「私の主はフランツ殿下だけです」


「ふふ。……しばらくしたら兵を退く。アルバートはその後の事を考えておいてくれ」


「……わかりました」




結局その後もしばらく殿下の()()()は続けられた。

帝国軍の兵はもちろん、諸侯にも多くの被害が出た。




「それじゃあアルバート。どうすればいいか教えてくれ」


殿下が満足した辺りで兵を退き、これから軍議が開かれるまでの間に殿下に献策する。


「まず、敵は路地裏や建物の中にもいます。どこにでもいると思った方がいいでしょう」


これはここまで散々見せつけられた事だ。


「ならば、こちらは数の優位を使って外から内へ掃討していきます」


「相手は逃げ場なんかないからね。段々狭めて行けば、いずれ街はきれいになるってことか」


「はい。裏路地も、建物も。街の外側から徹底的に潰していきましょう」


「よし。それで行こう。配置は僕が決めるからいいよ」


まだ間引くつもりなのか……。


「あまりやりすぎませんよう……」


「わかってるさ」


そう言って殿下は軍議が開かれる陣幕に向かって行った。




翌朝。

改めてルオーレへと侵攻した帝国軍は、まず街の外周を徹底的に潰して回った。


外周を潰し終えた帝国軍は、その網を少しずつ狭め、徐々に街の中心部へと進んで行った。


「そこの建物!中に兵士がいたぞ!潰せ!」


「屋根の上!矢を射かけろ!」


ロレアーノ王国軍も決死の抵抗を見せたが、徐々に王国軍側の領域も狭まっていき、残すは中央広場に陣取った部隊だけとなった。


「残すはこいつらだけだ!数は少ない!勢いで押しつぶせ!」


中央広場に残された部隊は一瞬で呑みこまれた。

ルオーレの街を制圧するのに、実に三日もの時間がかけられたのだった。


「良い感じに減ったねえ」


「……まだ王城が残っています。あそこに残っているのは死兵です。慢心は控えてください」


「わかってるさ。ちゃんと使()()()諸侯は残してある」


うちの主は過激すぎやしないだろうか……。暗殺とかには気を付けてほしい。



残すは王城のみ。

ロレアーノ王国への侵攻は、いよいよ最後の仕上げを残すのみとなった。


フランツ殿下の間引きを生き延びた諸侯が、最後の軍議に集まった。



「街の制圧も終わって後は王城を残すのみ。おそらく死兵しか残っていないだろう。誰か一番槍に志願したい者はいるかい?」


「……」


諸侯は誰も手を上げない。

ルオーレで大きな被害を受け、皆消極的になっている。


「困ったねえ。誰もいないのか。……仕方ない。アルバート。君がローゼンベルク侯爵の軍を率いて潰してきてくれ」


「わかりました」


子飼いの俺に手柄をたてさせようって事か。

ローゼンベルク侯爵の軍を使うのは、俺との関係を深めさせて、今後侯爵を味方に付けようと考えてるからか。



王城に残っているのは死兵だけ。

油断して殺されないように気を付けないと。

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