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がんばらんば〜Another〜  作者: 尋木大樹
ショートストーリー

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23.さしすせそ

保育士の海が悩んでいる後輩を見つけた時のお話。

(うみ):どったの? 元気なかね。


後輩:……海先生。……私、この仕事に向いてないかもしれません。


海:な、なして!?


後輩:だって、みんな言うこと聞いてくれないし、先輩には叱られるし、保護者の方からクレームも入るし……。子供が好きってだけじゃやっていけないことくらい、保育士を目指す前からわかっていたし、大変なのを覚悟してこの仕事を選んだつもりです。それでも……もうやっていける自信がなくなっちゃいました。


海:そんなに叱られとった? わたしの方が叱られちょるよ!


後輩:それはそうですけど……。だけど、園児に人気あるし、私と違って保護者とのトラブルもないじゃないですか。


海:なんでだろうね? わたしよりしっかりしとるのにね。……あれか? 意見が言いやすいとか? そういうの? うん、そうかも。だって、わたしはみんなと走り回ったりして遊んでばっかで、先生はそんな時も周りに気を配っとるもん。それで大人も話しかけやすいんよ。わたし、お迎えの保護者にいっつもグイグイ園であったこと話しちゃうの。きっと、向こうの要望を言う隙間がないんよ。先生は偉かね。子育ての不安とかみんなあると思う。それを受け取ってくれる存在ってことだもんね。


後輩:そう……なんですかね。


海:わたしね、元気な子の相手は得意よ。ばってん、静かに過ごしたい子の相手は先生の方が向いちょる! ピアノも工作も上手だし、お遊戯会の準備もいっぴゃあ(たくさん)助けてもらったよ! 先生おらんと、わたしが困るし寂しい! いつもありがとね!


後輩:そんな、私なんて……。あんなアクロバティックな動きができる方がかっこよくて憧れますし、こちらこそいつも元気を分けてもらえてます。ありがとうございます。


海:いやー、それほどでもー! 子供の頃にチア習っとってよかったぁ。


後輩:あれ、チアの動きなんですね。運動神経いいですけど、ほかにもスポーツはされてたんですか?


海:習ったのはチアだけだね。あ、ダンスも興味あったんよ? 気になった教室に見学に行ったら(りく)……あ、兄ね。陸が「お前は腹出して踊れんやろ」って。それでお腹出さん衣装だったチアのチームにしたんよ。リフトで持ち上げてくれる子がおらんもんで、コーチにひとりで踊るよう言われとったね。


後輩:(昔からぽっちゃりだったんだぁ)


海:高校のマーチングでそれが活かせて、あの時も楽しかったなぁ。


後輩:へぇー、マーチングですか。


海:うん。吹奏楽でね。


後輩:あ、それでたまにクラリネットを。


海:そうなんよ。部活で身についたもんは全部宝物だね。部員とは今でも連絡取り合っちょる。


後輩:人数多かったんですか?


海:えっとね、高三の時は全部で七十五人。


後輩:それだけ多かったら、嫌でもコミュニケーション(コミュ)能力()が身につきそうですね。そのスキル、私も学生時代に手に入れときたかったです。


海:わたしは部活関係なく誰とでも話せたよ。


後輩:(でしょうね)

 

海:そういえば、陸からいい感じの教えてもらった。「さしすせそ」を使うと会話が弾むんだって。陸はヤマさんから聞いたみたい。あ、ヤマさんはわたしの知り合いののんべえで、陸の呑み友達ね。


後輩:それって褒め言葉のですよね? 営業とか合コンで使われる。


海:知っとった?


後輩:はい。たしか、「さすがですね」「知らなかったです」「すごいですね」「センスありますね」「そうなんですね」の五つだったかと。


海:そなの!? わたしが聞いたのと違う! 「最高にすごい!」「シンプルにすごい!」「スーパーすごい!」「世界一すごい!」「そうめんくらいすごい!」だって教えてもらった!


後輩:最後の「そうめんくらい」ってなんなんですか?


海:そこ、わたしも変だなとは思ったんよ。ばってん、そういうもんかなって。


後輩:いや、どう考えても変ですよ。


海:陸に騙されたー。酔っ払いの伝言ゲームが正確なわけなかったね。なるほど。本当の「さしすせそ」はそうなのかぁ。今度みんなに使ってみよっと。








後輩:この前は相談に乗っていただいて、ありがとうございました。


海:相談?


後輩:ほら、「さしすせそ」ですよ。


海:あぁ! あれね!


後輩:できるだけ意識して、プラスの褒め言葉を言ってみたんです。そしたら、子供たちは可愛いドヤ顔してくれるし、先輩や保護者の方も機嫌が良さそうでした。


海:そっか! よかったね! わたし完全に忘れてた!


後輩:え……。


園児:てんてー(先生)。


海:なぁに?


園児:ちゅくった(ご飯を作ったよ)。


海:くれるの? ありがとう!


後輩:ありがとう。これは何かな?


園児:ちゅるちゅる(拾った小枝で作った麺)。


後輩:美味しそうだね。いただきます。


海:モグモグモグモグ……。おいしー!


後輩:お料理上手だね。さすがおねえさん!


園児:へへへっ。


海:この麺はコシがあるよ!


園児:こしぃ?


海:うん! 麺が元気ってこと! 出来立てを持ってきてくれたんだね! だから、麺がふにゃふにゃになってなくて先生嬉しい! このコシはねぇ、島原そうめんくらいすごいよ!


園児:しょーめんしゅき(そうめん、好き)!


海:先生も!


後輩:(その言葉実際に使うんだぁ)

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