嵌めるならやっぱりこれでしょう
〝ファイアアロー〟を撃ちつつ、焼夷筒をも同時に投擲。
「おぉ……投擲のスキル補正がしっかりと掛かってるなぁ」
「この距離でも当たってるのは凄いよね……ゴーレムの体が大きいってのを除いても」
遠投なんてレベルじゃないし、投げているのはボールじゃなくて竹筒。普通に考えたら命中する事なんて無いだろうって思うような条件なんだよね。
距離だって100メートルどころか200に近いんじゃないかな? って感じだしね。目測でだけど。
ただ、そんな距離を飛ばすのに適していない形をした物を使い命中させる事が出来る。どれだけスキルの補正は大きいんだって思ってしまうんだけど……それを考えている暇は現状無い。
「あ、ゴーレムの動きが変わった。あれかな? このままだとじわじわHPが削られるだけって思ったのかも」
「……無理がある」
「そうね。私の総魔力的にもこのままガードし続けるってのは無理だから、こうして動いてくれたのはありがたいわ」
このままこの状態を続けると、先にばててしまうのは恐らく俺達。
いくらダメージを与え続けているとはいえ、そこまで大きなダメージと言う訳でもないみたいだし、スタミナならゴーレムの方が有ると思う。
逆に俺達はと言うと、防御は秋山さん任せ。と言うか、彼女以外に出来る人はいない。ロックウォールで防げない分は、ネズミの誘導を聞いた春野さんが皆に伝えて回避をしているんだけど、それでもいつかは捕捉されてしまう可能性が高い。
なのでさっさと此方の狙い通りに動いて欲しい……と思い始めた所に、ゴーレムが行動を開始してくれた。ただ、移動をしつつも投石は忘れていないようだけど。
「うぁ……距離を縮めながらの投石だから、威力と投げてからの到達時間がやばい事になって来てるわね」
「大丈夫? 矢で少しでも投石の威力を落とそうか?」
「気にしないで! 今は少しでも目標値に達する事だけを考えて頂戴」
数歩進んでは石を投げるゴーレム。
何んというか、俺達の攻撃は全く気にしていませんと言わんばかりの動きで、少しずつ焦りが募って行く。おかしいなぁ、結構燃やしているはずなんだけどなんの変化も見えてこない。
焼夷筒を当てた場所とか、確かに炎上こそしているモノの……本当にダメージが入っているのか? って疑問になって来るような反応なんだよね。
とは言え、今は信じて撃ち込んで行くしかない。と言うか、もうそろそろゴーレムが目標地点に到達してしまう。
なのでラストスパートと、俺達は手を休める事無くゴーレムへと攻撃を撃ち込んで行った。
――ズシィィィン
衝撃音が周囲に響き渡った。何があったのかと言えば、ゴーレムがトラップに嵌った合図。
「一応これで第二段階目の目標到達って感じかな」
「第一段階が到達しているか分からないけどね……」
そんな事を話しながら、ゴーレムの様子を確認してみる。
ゴーレムは見事に深く掘り下げられた穴に落ち、尻もちをついたかのような体制でジタバタと蠢いていた。
そして、その穴からはジュワァァァァァと言う音と共に水蒸気が立ち上がっている。
落とし穴の中には、たっぷりと溜められた水。ゴーレムはそんな水に体の半分程漬かっている状態でいる。うん、ジタバタとゴーレムが動く度、水がバシャバシャと飛び散っているかな。……あぁ、ゴーレムが熱を持っていたから、その為に水じゃなくてお湯になっているけど。
更に、水魔法で溜まっている水の補給もしておく。
「うん、成功の様だね」
「てか、思ったよりも熱せられてた? これ、次の段階が逆に心配になるんだけど」
ゴーレムを見ながらそんな会話をしていると、ゴーレムも此方を認識したのか、思いっきり腕を伸ばしてくる。とは言え、落とし穴の高さ的に尻もちをついた状態で腕を伸ばしたところで届かない。
ただ……その姿は実に迫力満点。恐怖心を煽るには完璧な構図と言えると思う。
「と、とりあえず仕上げ行くわよ」
そう秋山さんが言うと同時に、春野さん以外全員で氷系の魔法を次々と撃ち込んで行った。
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アイスアロー(初級魔法)
特徴:微・貫通
アイスを圧縮し矢の形にした魔法なので、威力はかなりアップしている。
刺さった場所からゆっくりと凍結させていく。
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撃ち込んでいる魔法の鑑定結果はこんな感じ。
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アイスショット(初級魔弓技)
特徴:貫通後に静止
矢の形をした氷。動きを止めた瞬間、一気に周囲を凍らせる。
通常の矢にも付与する事が可能。媒体になる矢によって威力が変化する。
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どちらもファイアの火の部分を氷系にした感じだね。
そしてそんな凍結系の魔法や技を撃ち込んでいるんだけど、最初の内は熱くなっていた為にダメージもそこそこといった感じだったんだけど……。
「お、効果が出て来た?」
「予想通りと言った感じかしら」
ピシピシと音を立て、穴の中が氷結されて行く。そしてゴーレムもまた、動きがどんどんと鈍くなっていっている。
「てか、これ別に水だけで良かったんじゃない? 熱する意味ってあった?」
「んー……説明すると大変なんだけど」
秋山さんは大変だと言いながらも、皆に分かるように説明を開始した。
どうやら水蒸気を発生させる事に意味があったらしい。
と言うのも、ゴーレムの体が色々なサイズの石で構成されている為に、その体というか石同士には微妙な隙間が有った。なので、その隙間に水を浸透させよう! と思ったそうなんだけど……それだけなら水だけで十分だよね。
「水だと表面張力とかあるのよね。隙間のサイズでは水が止まってしまう可能性だってありそうだったもの。だから水蒸気なら? って」
液体じゃなく気体にして運んじゃおう! と思ったらしい。
確かに大小さまざまなサイズの石で構成されていたからなぁ。小さいのが大きい石同士の隙間を埋めているなんて事もありえるよね。で、気体なら確かに奥へ奥へと進んでくれそうな気がする。
「あぁ、説明が難しいわ……もっとこう、教科書とか科学書があれば説明も楽なのに……」
ウガー! と発狂しそうな秋山さん。
当然その視線の先には……「……ほえ?」と言った声を出している冬川さんの姿が。あぁ、彼女にどうやってわかりやすく説明するかで悩んでいたのか。
とまぁ、こんな会話をしている間も、当然だけど魔法を次々に穴の中へと撃ち込んでいる。
ゴーレムは必死に起き上がり腕を伸ばそうとして来ているのだけど、その腕が俺達の立っている高さを掴んだと同時に、完全に凍り付いて静止してしまった。
「……根性」
「ゴーレムこわ……あの状態から立ち上がって、更にここまで腕を伸ばしてくるとか」
ただ、現状ゴーレムは凍っただけ。これって溶かしたら復活するんじゃないかな? と言う疑問が残っている。てか、レベルアップ音とか討伐完了の通知音が鳴っていないので、まだ生存しているのは間違いがない。
「凍らせたはいいけど、この後どうするの?」
「衝撃を与えて砕いていくとか? あ、でも私達って物理攻撃が出来るジョブは居ないんだけど」
「……ネズミ齧れる?」
「ちぅ!?」
全員がどうしようと頭を抱えている。
秋山さんも凍らせるだけで終わると思っていたのか、この状態は予想していなかったらしい。
「てか、齧歯類の歯は確かに丈夫だけど、それって木の根や硬い木の実を齧ったりする為のモノだから。流石に氷は削れないと思うよ」
「……残念」
「ちぅ……」
ね、ネズミが。精霊であるはずのネズミがなんだか安堵している。
あれか? 本気で氷を齧らされると思ってしまったのかもしれないね。確かに、冬川さんならゴーサインを出しそうな気もするし。
「……失礼な考え」
「何も言っていないけど?」
「……顔」
顔で言っているらしい。俺はそんな表情をしていたのだろうか。うーん、余り顔には出ないタイプだと思っていたんだけどな。
「そうね……とりあえず土系の魔法でやるのは怖いから、衝撃が与えられそうなモノを使いましょうか」
「石斧とか?」
「雷の魔法とかどうかな?」
ともあれ、どうやら次の行動は如何に氷を割るかと言った作業になりそうだね。さて、一体どれだけ時間が掛かるのやら……出来れば溶けてゴーレムが再び動き出す前に終わらせたいかな。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございますです!!
ゴーレムは水分がたっぷりなので凍ってしまいました。石同士の隙間から大量に水や水蒸気が入り込み、濡れ濡れとなってしまったようです。
ただ、一体どんな速度で温度を下げたんだよ!! って話ですが、魔法だからと言う事で。
因みにどうでも良い話ですが、「じたばた」と打ち込み変換しようとすると「ヾ(:3ノシヾ)ノシ」になってしまう。お陰で書き直しを数回ほど……(´-ω-`)




