船は動きだしたのだけども……
あれやこれやと先の事を心配した。ただそれは、戦況が確実に有利と言える状態になりつつあるからだ。そしてまた、船上の人達もその流れを感じ取ったのだろう。海へと向かって魔法撃つ人の数が増えていた。
とは言え、獲物まっしぐらなモンスターではあるがただのバカではない。今の状態が自分達にとって不利だと理解したのか、彼らはその攻撃方法を変えてきた。
ドォン! と響き渡る打撃音と共に、船が少しだけ浮き上がった。
どうやらクラーケン達は船を掴むのを止め、殴って破壊する攻撃にシフトした。
大きく揺れる船。船員達はその揺れに耐えるためにと近くにある物にしがみつきながら振り落とされないようにしている。それでいて、チャンスとでも思ったのだろう。直ぐに帆を揚げ前進。風の魔法が使える者は、柱などにしがみつきながらも帆へと風魔法を撃ち込んで加速させようとしている。
「こちらからも援護をって思ったけど、ちゅめらはクラーケン達と戦闘させないとだしなぁ」
「ちゅん吉の物資輸送は終わっているのだから、ちゅん吉に船を押させたらどうかしら?」
「……ん。やらせてみる」
チュン吉が船体を押した。グンと加速する船だが、無理やり押して加速したためなのか……。
「うわぁ……船がウイリーをしてるじゃん」
「雪! ちゅん吉に少し速度を落とすように言って! アレでは転覆してしまうわよ!!」
徐々にだが、海に対して船の角度が恐ろしいことになり始めている。あれは既に45度ほど持ち上がっているかもしれない。洒落にならんぞ……助けようと思ったら、船が90度持ち上がってそのまま海へと沈んでいったなんてのは。
ただ、それぐらいの速度を出さないとクラーケンはまだしも、シーサーペントに追いつかれてしまうという問題もある。
「いや、クラーケンも大概よ? 彼らはジェット推進を持っているもの」
確かに瞬間速度はジェットによって恐ろしいモノがあるけど……そのクラーケンさんは今、ちゅん吉にまっしぐらな状態なんだよね。
船がクラーケン達から少し距離を離したことによって、一瞬クラーケン達は船を見失ったのか船に対するロックオンが外れたんだ。
そして、次にクラーケン達の視界へと入ってきたのは巨大化したちゅめら。お? 何か巨大で魔力が豊富なのが居るじゃん!! と、クラーケン達は思ったんだろうね。直ぐにちゅめらへとその触手を伸ばし始めたんだ。結果、船は無事……無事なのかな? とりあえず、クラーケン達の魔の手からは逃れる事が出来た。
「とは言え、ここからは移動しながらの戦闘だからなぁ……下手な援護射撃は出来ないかな。ってなわけで、ヒーロー君にはそのカノン連射を止めて違う手段で援護射撃をして貰わないと」
「彼の攻撃はばらつきが激しいものね……」
別に味方ではないからFFにはならないんだけどね。下手に当ててしまったら後々の交渉が面倒なんだよ。本当そうなると、今までの苦労はなんだったんだ? って話になるから。
「しっかし、ああも加速した状態ともなるとなぁ……狙撃も辛いものがあるじゃん」
「ここからだと距離もあるしね」
七海さんが弓でシーサーペントを狙っているようなんだけど、普通の狙撃では命中させるのが厳しいみたい。それと、スキルにホーミングアロー系のモノがあると言えばあるんだけども……。
どうやら距離が離れすぎていて、ホーミングアローが突き刺さる頃には威力がガクッと落ちてしまって意味が無いらしい。
「ここからだと、ダメージが入りそうなのはスパイラルアロー系とか曲射系なんだけどさ……どっちもこの距離だと命中率がくっそ下がるんだよなぁ。それに、曲射だと船にヒットしかねないじゃん」
「シーサーペントの行動を妨害する程度にしか使えない感じ?」
「だなぁ。もう少しあの船がこっち側に来てくれると良いんだけど……あぁ、また少し離れた」
船と意思疎通が出来ない状態だからね。それに、こちらの指示に従ってとお願いした所で、相手さんも「はい、分かりました」なんて言わないだろうしね。下手をしたら、自分達を全滅させる為の策じゃないか? と思われる可能性もあるし。
いやはや……実にままならない状況だね。もう少し相手と会話が出来ていれば良かったんだろうけど、そんな時間は無かったしなぁ。
「ちゅん吉に軌道修正をお願いしたら?」
「残念だけど、ソレをやると確実に船が異常な航行を開始することになるだけね」
帆に当たった風と、ちゅん吉が押す方向が違うとね。もしかしたら船がその場で大回転するかもしれない……それはそれでちょっと見てみたい気もするけど。今それをやるような余裕は無い。
ともあれ、変な動きにならないためにも、ちゅん吉には船が進む方向へと押して貰うしかない。
「それに、このまま海域外に出るってんならそれはそれでも良いし」
再び入ってくる事が可能かどうかは別として、あの船が1度モンスターの追撃を切る事が出来るのならソレも有りと言えば有りだ。
「てか、速度を落とすよりも風魔法で船の甲板でも押さえてくれないかなぁ」
「それバキって船が真っ二つになったりしない?」
確かに船体に多少の無茶はさせる事になるだろうけどさ。モンスター達の1撃の方が重いからね。風魔法で押す程度では真っ二つになるなんて、そこまでのダメージが入るってことはないと思う。
あぁ……本当に、意思疎通が出来ないってのは面倒で仕方がない。とは言え、ちゅん吉に持たせていた道具を相手に融通するってのも違うしなぁ。
しまったな。これならちゅん吉にちゅー太でも乗せておくべきだったか。ただまぁ、今それを言ってもどうしようもないんだけどね。
そんな事を思っている間にも、どんどん船が島から離れていってるんだよね。これでは援護が可能なのって、錬金人魚や雪さんの精霊ぐらいしか居なくなるんだけど……大丈夫だろうか?
ブックマークに評価ありがとうございます!ヾ(*´∀`*)ノ




