生身では絶対に使えない武器
2P君に天使と悪魔は見えない場所で待機させている。
あれ? ロボも潜水艦も出してないのだから戦力の出し惜しみ過ぎじゃないかと思うかもしれない。だけど、今この状況を誰が見ているか分からないからね。それなら彼らもまた隠しておきたい切り札だったりする。
それに敵は人じゃなくモンスター。小賢しい手など考えるはずもなく、むしろ船という〝餌〟にまっしぐらな状態。そうであるなら、俺達が強化外骨格を使わなくても何とかなるのではないだろうか。
「と思うんだけど……もう既に絶対正義マン君がヒーローしてるなぁ。あ、もう彼の事はヒーロー君で良いかな」
変身したヒーロー君はどうみてもノリノリである。遠距離用に換装し、「うぉぉぉぉぉ!」と叫びながら、両手に持つ巨大カノンから交互にどでかい魔力弾を海中へと撃ち込んでいる。
周囲の被害なんて考えていないんだろうなぁ。あちらこちちらで水柱が……うん、かなり狙いは悪いみたいだね。船に当っていないのが奇跡なのでは? ただ当っていないだけで、水柱が出来たことで発生した波に思いっきり揺られていたりするけど。
「ぶっちゃけ、支援はヒーロー君だけで十分では? むしろ、彼が撃ち出した魔力弾が船に着弾しないようにフォローしたほうが良い気がする」
「なんであんなに弾がバラけているのよ……機関銃みたいに連射が出来る訳でもないのに」
きっとソレは彼が2門のカノンを交互に撃っているからじゃないかなぁ? きっと撃っているのが1門だったり、両方同時だったらあそこまでバラけないと思う。もしくは、もう少しゆっくりと撃つとか。
だけどテンポ良く撃ち放っているからね。だから狙いが甘いというか、ある程度の所でぶっ放しているんだろうなぁ。
「ともあれ、船に向かって撃ってはいないからね。船側もこちらを敵とは思ってないんじゃないかな」
「命中させられていないだけって思われている可能性もあるじゃん」
……その可能性は否定できない。
ただ、ヒーロー君の行動が終わるのも時間の問題だと思う。と言うのも、カノンに蓄積されている魔力の量なんだけど、あの撃ち方をしていたら直ぐ底を尽きるから。
本来はあんな撃ち方をする武器じゃないからなぁ。もっとこう、落ち着いて狙いをつけて撃つ武器だから。
きっと、やけくそでヒーロー化をしたけど思いの外楽しくなってしまい、後先考えずヒャッハーしているんだろうね。
「あのカノンなんだけど、実は以前にテストしてもらった時に使っていた物よりもバージョンアップしているんだよね。きっとソレも理由の一つかなぁ」
「バージョンアップ版を試していなかったのね……」
「それは暴走するのも当たり前じゃん」
取り回しが随分と良くなっているからね。だから撃っている時の爽快感も段違いなんだと思う。
「……ん。気持ちよくなっちゃった?」
「今頃マスクの内側で「快感!」とか「愉悦!」って言ってそうだなぁ」
そういった部分はヒーローにあるまじき性質と言えるんだけども。こっちの方にも時々聞こえてくるヒーロー君の叫びがなぁ……。
「アハハハハ! コレで! 僕は! 皆を守れる力を手に入れたんだ!!」
なんだろう。少し昔のヒーロー君に戻っている気がする。きっとこれ、後で黒歴史だとか言いながら地面に膝を着くパターンだろうなぁ。
あれだね。楽しくなっちゃったために、学んできたモノよりも本能とか本質ってのが打ち勝っちゃったんだろうなぁ。
「悪くはない性質ではあるんだけどね……押し売りが面倒なだけで」
「彼を見るフォゥの目が少し変わっているわね。最初は怯えていたのだけど、今は子供さながらといった感じだわ」
あー……ヒーローショーといえばヒーローショーみたいな状態だからね。
ピンチの船・船に群がるモンスターの大群。そこへ巨大な力を携えて援護をするヒーロー。これがもし、近接戦闘ならもっと盛り上がったというか、子供達に思いっきりぶっ刺さる映像だったんだろうけど。
しかも叫んでいる言葉が「絶対に助けるんだ!!」とかそんなワードだし。
「と、そうだアル。人魚達側に問題は? アレだけヒーロー君が乱射していると少し弊害が起きたりしてない?」
「問題ありません。反対側に居たとしても距離を少し取るように指示をだしました」
水中でも影響はあるからね。なにせモンスターに着弾するとあの魔力弾は弾け飛ぶから。
「ダイナマイト漁みたいな状態になるんだよね。ま、ダイナマイトほど爆発は大きくないけど」
「海面をよく見たら数匹の魚型モンスターがプカプカ浮いてるじゃん」
爆心の近くに居たモンスターがモロに衝撃波を受けちゃったんだろうなぁ。ただ、爆発の衝撃波で浮いてくるモンスターは基本雑魚。だからモノの数じゃないんだけども、周囲を飛び回る羽虫みたいでウザいといえばウザい存在だから、こうして処理出来るのは楽かもしれないね。
「あ、そうだフォゥ。ヒーローがんばれーって応援してみたら?」
「止めて差し上げて。間違いなく心に大きな傷を負うわよ」
確かに後でヒーロー君は大きなダメージを負うかもしれない。でも、今ノリノリで最高潮と言える彼ならば、かなりのスペックブーストな応援になると思うんだ。
「その後のダメージがきつ過ぎるわよ」
「……必要な犠牲だよ。コラテラル・ダメージってやつだ」
「はいはい。コラテラル・コラテラル。って、何でもコラテラルって言えば良いモノじゃないじゃん」
やはり七海さんはネタが良く分かっていらっしゃる。かなり昔のネタだというのにこうしてノッてくるからね。なので彼女の方を見てグッとサムズアップ。すると彼女もフフンとドヤ顔で返してきた。
「とまぁ、ネタはこの辺にしておくとして。結構有利だと思うんだけど、それでも船体へのダメージは増えていってるなぁ」
「やっぱり人魚部隊の救助が必須かしら?」
まだ航行は可能なレベルではある。でも、いつ不可能になるか分からない攻撃を受けているのも事実。……流石に揺れでダメージは受けていないと思いたいけど。
「せめてクラーケンを全て排除出来たら良いんだけど」
「……まだ潜んでいるヤツが居る」
数体のクラーケンは俺達に対する壁として出てきたんだけどね。……ま、そんなクラーケン達はヒーローの砲弾によってかなりの大ダメージを受けたか、もしくは消し飛んだけどね。
「ともあれ、こちらの最大戦力をヒーロー君と思わせられている状態ってのは大きいね」
「誰にって思うんだけど?」
誰にと言われたら……誰だろうね? ただ、あの船がこちらの世界に来たからね。もしかしたら違う異世界人も居るかもしれない。
異世界人が来たことで島の結界に何らかの影響が出ているかもしれないってのもある。なにせ彼らが現れたのは結界の内側だから。そして、その影響により島外へと島の情報が漏れるなんて可能性もあるからね。
「慎重になり過ぎじゃないかなぁって思うけど」
「こういうのは臆病なぐらい慎重な方が良いのよ。ソッチの方が自分も皆の命も守れるわ」
「……ヒーロー君を生贄にささげ」
彼はいい囮だよ。そして本人もソレは理解している。でなければ、アレだけノリノリでカノンを撃ちまくる訳がない……と思いたい。
それにだ。俺達が戦力を温存しているってのも彼は知っている。もし彼が以前の彼だったり、囮として自覚していなければ、俺に向かって戦力を出せって言っているハズだしね。
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