大混乱です!~エリカ視点~
衝撃的な状況ってのは続くみたいだね……。
まず、エルフって言えば良いのかな? フォゥちゃんが少しずつ友好関係を結ぶためにと、がんばって通訳してくれていたんだけど、相手も相手で状況が分からないからなのか喚くのみ。
しかもマシンガントークを数名が行っているらしく、フォゥちゃんも通訳に困り果てている。こっちの声を届けようにも相手が遮るし、相手の言葉を訳して伝えようにも次々と新しいワードが飛び出している状況だからね。困るなって方が無理な話だよ。
そんなワケで、いったいどうしようか? って皆で頭を捻っていたんだけど……。
私達は忘れていたんだ。この場所がどんな場所だったかを。
最初に気がついたのは景くん。……いや、ちょっと違うかも? 景くんはアルくんからの報告を受けて気が付いたと言ったほうが良いのかな。
とにかく! 景くんが突然「不味い!」と声を発したんだ。当然、私も含めて皆が〝いったい何!?〟となって景くんの方を見て問おうとしたんだけど、それよりも先に彼が口を開いた。
「この海は島に管理されてないモンスターがって話はしてたよね? それで、そのモンスターがうじゃうじゃと集まりだしてる!」
はっ!? と全員が思い出した。いったいドレだけの苦労をして本土へと戻ったのかを。
あの時は景くんがしっかりと護衛をしてくれていた。それでも、私達が必死になって戦う状況だったんだよね。最後の方なんて、もうお代わりラッシュでどれだけ泣きたくなったか……。
とは言え、あの当時とは違い今は錬金人魚達もバージョンアップしているから楽勝じゃないの? と思わなくもないんだけど……それでも無理なものは無理と言いたくなる状況がある。
だってそうでしょう? 私達の時と違って、彼らとは信頼関係なんて築けていない。そんな相手を護衛しようとしても、意思疎通なんて取れないから確実に穴が出来てしまう。
更に言うと、彼らの船は停船してしまっている。……そう、動いていた私達の時と違ってただの的なんだよね。
「フォゥ! 今直ぐ彼らに帆を揚げるように伝えるんだ!」
「分かったの!!」
景くんがフォゥちゃんにお願いをして、フォゥちゃんは必死になってマイクに向かって通訳した言葉を発していく。……いくんだけど、彼らの船の帆は一向に揚がる事が無い。
やっぱり信頼関係が皆無だからかな。私達側の言葉なんて聞き入れるつもりなど無いって事だよね。
フォゥちゃんもしっかりと〝モンスターが向かってきている〟とかのワードも含めて伝えているって言うのにね。あぁ、相手が全く話を聞いてくれないからか、フォゥちゃんがちょっと涙目になりつつあるよ……。
そんなこんなで、私達の伝える努力も虚しく。この間にもモンスターはどうやら船の下に集まってしまったみたい。
錬金人魚達が間引いてくれたらしいんだけど、圧倒的にモンスターの数のほうが多いらしく……うん、多勢に無勢だったんだって。
一応この間引きをしている間で、錬金人魚達の被害は皆無。勿論、多少の軽傷? 軽損? は有ったみたいだけど、1体も欠ける事はなった。
それで問題は錬金人魚じゃなくて船の方。
彼らがモンスターの接近に気がついた時にはもう時すでに遅し。
ガンガンと船体に体当たりや触手アタックが開始され、騒いでいた人達はより一層騒ぎ出す……と思っていたんだけど、どうやら戦闘に入ったという事で意識が切り替わったみたい。
リーダーと思われる人が全員を纏め上げ、攻撃してくるモンスターに対して防衛を開始。
とは言え、防衛出来るのは船内へと飛び込んでくるダツ系の魚型モンスター。触手は残念ながら、船体の上側を掴んだものは切り飛ばすことが出来るみたいだけど、船底などに張り付いたものはどうしようもない。
なので景くんが錬金人魚達に手助けをするように指示を飛ばしたみたいなんだけど……海中はモンスターによる魔境となっている。船に絡みつく触手へと攻撃を行うのはかなり厳しいモノが有ったみたい。
「これはヒーローの出番だよな!」
「え? マジ? 俺、水中戦闘なんてほとんど経験が無いんだけど!」
「とりあえず遠距離魔法とかで援護をしたら良いんじゃないかな!」
もふもふの壁の向こう側でも、戦闘準備をしていた皆が騒いでいる。
元々は上陸された後に戦う事があったらというだけで、何方かというと数を揃えて威圧するっていうのが集まった理由だったからね……水中戦なんて想定外だって言いたくなるのも分かる。
「えっと、水中専用の装備は……あぁ、これじゃない。えっと、こっちでもない!! あれ? どこのチェストにしまったっけ!!」
「ブラスミさん早く早く!!」
ブラスミさんも焦っているようで、作ったものを何処に仕舞ったかど忘れしてしまったみたい。何やらちょっと危険な武器? がポイポイとチェストから取り出され山積みになっているけど……うん、見なかったことにしよう。
「……ちゅめらを向かわせた」
「それは頼もしい味方ね。それで、潜水艦やロボは出すのかしら?」
「そっちは出さない。ただ、換装タイプの錬金人形達は人魚モードで突入させたよ」
海中戦力を一気に増やしはするけど、全ての札は切らないみたいだね。そして多分だけど、景くんはソレで戦力は十分だと思っているんだろうね。
「ヒーロー達も動くだろうしね。それに最悪、船が破壊されても錬金人魚達に救助させるから。後はその時までドレだけモンスターが間引けるかって感じかな」
「私達も魔法を撃った方が良いかしら?」
「船に直撃させない自信が有るのであればって感じかな。船を避けて撃つと効果はかなり低いからね」
モンスターは船の下に集まっているからね。だから船を避けて撃った所で、討伐出来るモンスターの数は少ない……下手をしたらゼロになるんじゃないかな。
「あ、でも錬金人魚達の事は気にしなくていいよ。全戦力が船を挟んで反対側に寄せているから」
「なるほど……それなら安心して攻撃する事は出来るわね」
「とは言え、海中の相手に対してのスナイプは難しいじゃん」
物理矢じゃなくて魔法矢だから海中に向かって撃っても問題無いといえば問題無い。ただ、相手の姿が見えないのが厳しい。
「集まっているから、船の底がある場所より下を狙って撃てば何かにはヒットしそうだけどね」
「弱点を狙えないのがキツいじゃん」
クラーケンとかの触腕に当たったとかだったら意味が無いからね。彼らって自分の触腕を切り飛ばして再生する事が出来るから。
あ、でもそうなると……。
「私達が魔法で援護し始めたら、クラーケンタイプのモンスターが壁になるんじゃない?」
「それは……ちょっと面倒ね」
「ま、それならソレで良いんじゃないかな。こっちの壁になるってことは、ソレだけ船に纏わり付くクラーケンが減るって事になるから」
確かに景くんの言う通りになるのなら良いのかも? 少しでも纏わり付く数が減れば、船も動き出すことが出来るだろうしね。
「とりあえず! 少しでもモンスターの数を減らすか、こっちに気を惹き付けるじゃん!!」
対話をしようと思っていたのに、まさかの第三勢力の登場で大混乱になるなんてね……あ、でもこの事をきっかけに少しは態度が柔らかくなってくれると良いんだけどね。
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大根は両手に持ったか?(・∀・)




