話しておくべきことを話さないってどういう事かしら……~桔梗視点~
取り巻きとトラップルームに湧き出る雑魚モンスターを討伐すると、室内から出る扉が突然出現した。
良かった。これでなんとか望月くんと雪の救助に行ける。そう考えながら扉をくぐると……。
「うわぁ……まさかまさかの展開じゃん」
「えっと、レベル的に大丈夫なのかな?」
「とりあえず声を掛けましょうか」
扉から出た私達がいる場所。それはあのごちゃまぜ神殿が建ち並んでいる大通りのような場所。
しかしその通路には……どういう訳か、大量のモンスターで溢れかえっており、更にはそのモンスターの中心でくるくると踊るようなステップを踏みつつ、巨大な武器を振り回す女子。そしてそんな女子を援護する影が3つ。
えぇ、もう誰か分かりきっているような状況よね。そう、巨大な武器を振り回しているのは、望月くん曰くバーサーカー女子の詩麻さんで、他の3つの影は彼女のパーティーメンバー達。
「ブラスミさんブラスミさん。いつの間にこの場所に?」
「おわ!? っと、あれ? 秋山さんも来ていたんだ……って、まぁ当然か」
「勿論最後のフィールドだもの。この場所を攻略するのは当然よ。ただ、ブラスミさんたちってここに来れるだけのレベルじゃなかったわよね? 少なくとも私達が最後に会った時はまだ90台にもなっていなかったはずよ?」
「えっと……それ何時の話をしてます? 自分達が最後に顔を合わせてから、既に半月以上は経ってるんだけど……」
え? ちょっとまって。私達が顔を合わせたのってついこの間だったような……。
「あ、でもそういえば、僕達が島の攻略をしている時から皆の姿を見なかったような?」
「確かにそうかも! あきちゃん達はてっきり籠もっているからだと思ったんだけど……でもこの様子だとちょっと違うかんじぃ?」
これはかなり気になる話だけど……今はまず、目の前の敵を殲滅することが先よね。
「私達も手伝うわ。多分だけど詩麻さんが相手をしているのが取り巻きよね? なら私達は雑魚の方をやってしまうわね」
「それで頼むかな。……下手に詩麻さんのターゲットを横取りすると後が怖いし」
彼女のターゲットか。確かに彼女は「もっと! もっともっと!!」と叫びながら、巨大な武器を振り回している。
そして相手もまた「ユカイダ!!」と叫びながら、詩麻さんへと突撃を繰り返している。
いやはや……どういうことなのかしら? 今回の取り巻きだけど、ちょっと毛色が違うわね。
姿は望月くんが錬金人形を最初に作った時モチーフにしたケンタウロスタイプで、そこそこの巨体。
そのケンタウロスは突撃槍を所持していて、ソレを振り回しながら詩麻さんと打ち合っている。……いやいや、突撃槍なのだから、まっすぐ構えて突進攻撃をするのが基本じゃないの? と思うのだけど、このケンタウロスはブンブンと横薙ぎにしたり、縦に振り下ろしたりしているのよね。
巨体から繰り広げられる攻撃はかなり威力が高いはず。多分だけど、私が作る防壁も1枚程度なら軽く粉砕出来るのではないかしら? と思う一撃。
でもそんな一撃を、詩麻さんは軽々と巨大なハンマーで往なしている。
はっきり言おう。こんな戦闘に誰が横槍を入れるのかと。
どう考えても、私達が手を出すのは邪魔にしかならないでしょ。下手に魔法や矢で支援をしたとしても、なんだか詩麻さんに撃ち落とされる気がして仕方がない。
「てか、彼女のレベルは幾つになったのかしら」
「あ、確か今は95ぐらいだったかな?」
な! どれだけレベルを上げてきているのよ……でも、確かにソレだけのレベルがあれば、この取り巻きと拮抗した戦闘が出来ているのも頷ける。
「ねぇ桔梗、あのケンタウロスだけど私たちが相手した取り巻きよりも強くない?」
「負けはしないだろうけど、かなり苦戦しそうじゃん」
うーん……それは相性の問題もあるのではないかしら?
ケンタウロス型のモンスターはオークと同じパワータイプとは言え、どちらかというとパワー+スピードといった感じなのよね。
でもオークはパワー+物理防御なのよ。ほら、どちらが私達にとって戦いやすい敵かなんて火を見るより明らかでしょう?
「その点、詩麻さんはパワーファイターなのだけど……あれって天然なのかしら? 完全にカウンター狙いよね」
「あー……しーちゃんってそういうのは全て感性でやってるかなぁ」
天然だったのね。天然であそこまで出来るなんて、とんでもない才能だと思うわ。
そしてそんな才能が、今はあのケンタウロスと上手くマッチしている。これが逆に、彼女の相手がオークだったら……また話は違ったでしょうね。
「ともあれ、私達はこのまま彼女の戦闘に邪魔が入らないように、他の雑魚モンスターを討伐していくわよ」
「了解だよ! っと、そしたら私は一気に支援を掛けちゃうね!! あ、でも詩麻ちゃんに支援って掛けても大丈夫かな?」
「大丈夫かな。攻撃魔法じゃなかったらなんの問題もないから」
さて、それならさっさと話を聞くためにも、雑魚を一気に殲滅しましょうか。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
途中で雪が合流してからはあっという間だった。
私達は次々に現れる雑魚モンスターを討伐し、最後は詩麻さんの戦闘を見守る形になった。
実に楽しそうにハンマーを振るう詩麻さん。本当戦闘狂よね……なんて思っていたのだけど、その戦闘が終わると彼女は糸が切れたように眠りについてしまった。
そしてそんな彼女を抱えながら、歌を歌っているのは綾音さん。これは完全に子守りといった感じね。
「で、少し話を聞きたいのだけど……」
私は戦闘中だからと棚上げをしていた話の内容を彼らに切り出した。
正直、今すぐにでも望月くんの救助に行きたい。だけど、この話は放置して良いのかもちょっと分からない。だから、望月くんが居そうな場所を探しつつ、私は会話をすることにした。
とは言え、聞きたい事と言っても、どちらかと言えば確認みたいなものかしら? 彼らと前に会ったのが本当に半月以上だったのかとか、95レベルになっているというのが事実なのか? とかそういう事。
それの確証を取れば、私の疑問は疑問ではなくなるのだから。
「スマホを見てもらえば一目瞭然だけど。ほら、日時がこれで、僕達のレベルは間違いなく95レベル」
「……本当ね。これはまた、ちょっと信じたくはないのだけど、間違いなく現実ということかしらね」
はぁぁぁぁ……思わず思いっきりため息を吐いてしまったわ。
だってそうでしょう? どう考えても私達の感覚ではそんなに時間が経っていない。だというのに、ブラスミさん達はしっかりと時間が経過している。
この事から分かるのは、私達があの空間にいる間に結構な時間が過ぎてしまったということなのだから。
「いや、もしかしたらこのごちゃまぜ空間が捻れているという可能性もあるわね」
「げ……となると、僕達も浦島効果が起こるかもって事だよね」
このごちゃまぜ空間が原因ならありえるわね。
まぁでも、恐らくだけどあのシステムさんが居た空間が原因な気がするのよね……。全く、そういうのはしっかりと説明しておいて欲しかったのだけど。
「あのシステムじゃ仕方ないじゃん。どうせど忘れという大ポカをしただけでしょ」
「あー……ありえるかも」
「……ん。アレはドジっ子」
とは言え、時間を捻じ曲げる事が出来るという事なのよね。あぁ、なんだかこのとんでもない力が、私達の思いもしない所で作用しているような気がして仕方がないのだけど……。
気になる。とても気になる。でも今は、望月くんを見つけることが先よね。
でも、どこのトラップルームに居るのかも分からないのよね……本当、これはもう総当りでトラップルームを調べるしかないかしら。
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