ランクアップだ!
「「「やったぁぁぁぁ!」」」
「……ぐっど」
女子達の黄色い声が飛び交った。というも、遂に全員のレベルが30という大台に乗ったからだ。
「長いようで短かったような、大変のようで大変じゃなかったような……」
「……もっちーは大変」
「だよね。休憩時間も道具作りとかしてた訳だしね!」
暇なく動いていたから、30になるまではあっという間に時間が過ぎた気もするけどね。
ただ、それは皆もあまり大差がない気がする。特に冬川さんは召喚したちゅー太達を、安全確保の為に動かしていた訳だし。
「……問題無い」
「召喚した後は命令さえしておけば勝手に動くのよね。だから、召喚者の労力は少ないのよね」
「……そう」
「でも、気にはかけているんだよね?」
「……あたりまえ」
「やられて召喚が解除なんてパターンもあるし。そしたら再召喚が必要じゃん」
俺の言葉から、次々と女子達が補完していってくれている。……聞きたい事が全部埋まってしまったな。
あ、因みに地精霊がちゅー太なのに対して、風精霊はちゅん吉らしい。……ちゅんシリーズなのかな? いや、そうなると、火や水とかはどうなるんだろう。火って……馬を叩いて手に入っているんだよね。そうなると姿は馬だと思うんだけど。ちゅん?
いやいや、それよりも! 地も風もレベル1だとその姿は其処まで大きくなかった。となると、火はレベル1から大きな馬なのか? それはどうなんだ……って思っちゃうけど、これは姿を確認するのが楽しみになってきたね。
そして、その姿を確認する為にも、さっさと次の行動へ移る必要があるかな。
「そしたら、この拠点を破棄する準備をして、さっさと塔まで行っちゃおう」
「破棄しちゃうの? 少し勿体なくない?」
「しょうがないわよ。だって維持が出来ないもの。堀や壁はそのままでも良いかもしれないけど、流石にテントや焚火とかはね……」
「……ドームの屋根は?」
「それも解除しておきましょうか。このドームを巣にするモンスターが出てくるかもしれないし。そうなると、再びこの堀と壁を利用しようと思った時に大変だわ」
ドーム状になっているからね。もし巣穴にされでもしたら、その姿を確認するのが大変。
もし何も考えずに再利用しようとしてドームに入ったら、モンスターとご対面! なんて事になる可能性も。……いやないか。利用出来るかのチェックは最初にやっておくしね。
でも、ドームを防衛拠点として使われたら面倒なのは間違いないので、ドームだけは破壊しておく必要がある。
堀や壁は良いのかって? そんなの、バブルボムなりなんなりを上空から投げ入れる事が出来るからね。……それならドームでも出来るだろうって? ドームの入り口は狭いから厳しいんだよ。
そんな訳で、俺達は撤退をする為にテキパキと準備をしていった。
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撤退準備中や撤退中に上空からススメの襲撃を受けはしたものの、俺達は誰1人として怪我をする事無く石の塔までたどり着く事が出来た。
「さて、以前はレベルを上げてこい! って言って来た塔だけど、今回はどうなるかな」
高鳴る期待を胸に、皆が見守る中、スマホを塔にある窪みへと入れる。すると、やはりスマホから機械音声が発せられてきて……。
『ピーーーー! デバイスを確認しました。チェックしますチェックします……チェック終了。レベル30を確認。ぱんぱかぱーん! おめでとうございます。これにより塔の機能が作動しました。デバイスのアップグレードが始まります』
お、おう……なんで機械音声で「ぱんぱかぱーん」なんだ……そこはこう、SEとかじゃダメだったのか? なんというか、これもシステムと同じ匂いを感じるなぁ。
と、そんな事を思っているうちにデバイスのアップグレードが終わったらしく、スマホは俺の手の中へと飛び込んできた。
「おっと!」
飛んできたスマホを落とさない様にキャッチしてから、一体何が変わったのかをチェックしてみる。
「ふむ……なるほど。まずはお知らせが入ってるな。で、そこにはジョブについてって項目がある」
「最初の時には無かった親切さよね……本当に、なんで肝心と言えるはじめの部分で、お知らせも何も無しに手探りだったのかしら」
「パーティー設定みたいに、色々と苦情が出たのかもね……っと、とりあえず皆もアップしておいたら?」
「……二番手」
アップしたら? と言うのが先か、冬川さんの行動が先か、彼女は既に塔の前でスマホをもってスタンバイしていた。実に抜け目がない。
とまぁ、別に順番で何か変化がある話でも無いので問題は無いかな。他の女子も「仕方がないなぁ」って感じで見守っているし。
とりあえず女子達はアップグレードがあるからまだまだ時間が掛かるはず。だからその間に、俺はこのお知らせを読んでみる事にしようかな。
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ジョブについて
レベル30になり、お使いのデバイスがアップグレードされた事で一つ上のジョブを選択する事が可能になりました。
ランクが上のジョブについては、基礎となったジョブをベースにしておりますので、他の基本ジョブから選択できるジョブに関しては選択する事が出来ません。剣士であれば剣士系のジョブしか選択肢に現れないのでご注意ください。
他のジョブが良かったという人に対して。
塔の機能で転職する事が可能です。しかしその場合は今まで育てたレベルはリセットされます。そしてまた、スキルも全てリセットされてしまいます。ですので、全てが最初からやり直しと言う事になります。
それでも! と思う人のみ、この機能をご利用ください。
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「転職機能があるみたいだけど、それは完全なリセットかぁ……これやる人いるか?」
いや、居るんだろうなぁ。きっと誰かからお願いメールがシステムさんに送られたんだろうね。
こんなジョブだとは思わなかったという事なのか、それとも間違えて選択してしまったという事なのか。ただ、どちらにしても、レベル30まで一度上げろってのは割と鬼畜な仕様じゃないかなぁ? 転職に関してはもう少しレベルを緩和しても良いと思うよ。
で、ジョブのランクアップに関してだけど、これは当然といえば当然だよね。だってランクアップだもん。
これで錬金術師の俺が、例えば他の……魔法使い系の上位を選択可能とかだったら、色々とぶっ壊れすぎてるもんね。そしたら、さっきの転職システムはなんなんだ! って話になるし。
それにしても、このランクアップの説明は少し気になる点があるよね。……何というか、複数ランクアップ先があるみたいな? とりあえず、これは直接見て見るべきだよね。
という事で、ステータスアプリをタップしてみる。すると、最初にジョブを選択した時みたいな文字がスマホに現れた。
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ジョブのランクアップが確認されました。ジョブを選択してください。
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そんな文字が表れた後、再度画面をタップしてみる。
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中級アルケミスト
ウェポンアルケミスト
アポセカリーアルケミスト
バトルアルケミスト
マジックアルケミスト
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選択肢が多いわ!!
えっと、純粋な上位互換といえば中級アルケミストなんだと思う。恐らく一番バランスが取れていて、何でも出来るモノを選択しようと思えばコレだろう。
で、他はどうなんだ? と言うと。
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ウェポンアルケミスト
武器関連に錬金能力を伸ばしたジョブ。
ただ、やっぱり純粋な鍛冶師に比べたら微妙ではある。が、それでも中級アルケミストよりは高性能な品を作る事が出来る。
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次に。
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アポセカリーアルケミスト
ポーション製作などに錬金能力を伸ばしたジョブ。
しかし純粋な薬剤師に比べたらry。
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ウェポンアルケミストの薬剤師版と言う事らしい。
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バトルアルケミスト
戦闘に力を振ったアルケミスト。
戦闘系のスキルが生えるけど……やっぱり中途半端になりがち? 道具も使える劣化魔法戦士みたいな感じかも。生産が犠牲になるけどね。
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そして最後に。
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マジックアルケミスト
魔法戦闘に能力を振ったアルケミスト。
本来なら覚える事の出来ない全属性中級魔法に手が届く。正直バトルアルケミストを選ぶより戦闘が楽になるかも? でもやっぱりこちらも生産が犠牲になる。
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さてさて、一体どれを選ぶべきか……なんて考える必要もないよね。ぶっちゃけ俺の立ち位置を考えたら、答えなんて一択しかないもん。
ブックマークに評価などなど、いつもありがとうございます!(o*。_。)oペコッ
さぁ、ランクアップですぞー!! そして、さり気なく転職という機能も実装。ただ此方、景たちには全く無縁といえる機能でしょう。
言ってしまうと、女王様達用といっても過言ではありません。とは言え、レベル30まで上げろは鬼畜だと思いますが。