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七百八十三話 妖精のお仕事

 妖精の花畑を完成させた後、俺はラエティティアさんの精霊樹の脇芽を植樹することにした。植樹は無事に成功し、白く凛とした梅の花を見られて大満足だったのだが、その梅の花はカラーチェンジシステムを兼ね備えていた。ファンタジー……。




 そろそろ約束の時間だし、妖精門を開くか。


 それにしてもいつまで俺が妖精門を開かないといけないのかな?


 なんとなくだけど、ジューン姫達に相談すれば、自由に出入りできるように……自由?


 昨日の騒動を思いだし頭痛がしてくる。


 昨日、ラエティティアさんの精霊樹の脇芽を植えた後、そろそろ妖精達が帰る時間だろうと集合を掛けた。


 集まってきたのは十八人。


 残りの十二人は集合が掛かっても姿を現すことがなかった。ちなみに集合を掛けたのはジューン姫だ。妖精には仲間を呼び集める方法があるらしい。


 まあ、その方法も無視されたらどうしようもないみたいだけど。


 王女の呼び出しを無視するとか、さすが変わり者の妖精だと納得しかない。


 ただ、一つ分かったことがある。食べ物に釣られたタイプの妖精は変わり者の中でも比較的まともということだ。


 まあ、それでも一般的な妖精と比べたらアレっぽいけど、変わり者にも強弱があり、ある程度分類できるのは助かる。


 真正の変わり者が十二人も居るから大変なのは変わらないけど。


 結局呼び出しを無視した妖精達はシルフィに確保してもらい、まだ調べ足りない、遊び足りないと騒ぐ妖精達を無理矢理妖精門に押し込むのは大変だった。


 たぶん今日も似たようなことが起こるのだろう……よし、自由に出入りできるようにするには時期尚早と判断しよう。


 真正の変わり者たちがある程度楽園に飽きるまでは現状維持だ。向こうから楽園への滞在を切り出されても断ることにしよう。


 自分の中で結論が出たので、達観した気持ちで妖精門を開く。


「あれ? ジューン姫とカシュー君だけですか?」


 ジューン姫が先頭で出てくるのは予想済みだったが、俺の予想ではその後に何人もの変わり者が飛び出してきて楽園に飛び散ると思っていた。


「おはよう、裕太。残りはもう少ししたら出てくるわ」


 噂をしたから影が差したのか、ジューン姫の言葉が終わったタイミングで妖精達が門から現れた。半分くらいが腰にリードらしき紐をつけられて。


「ジューン姫、あの紐は?」


「あの子達、昨日私の呼びかけを無視したのよね。まあ、聞こえていなかったというか、聞こえていても気が付かなかったみたいなんだけど、昨日の様子だと仕事もせずに聖域を飛び回りそうだから、縛ることにしたのよ」


 聞こえていたのに気が付かないってどういうことだ?


 ……深く考えると頭が痛くなりそうだからスルーしよう。


 なんか呼び出しを無視されたジューン姫の私怨が入っていそうだけど、今日から始まる花蜜の採取を確実に熟す為と考えれば、悪い判断ではないな。


 普通に行動させたら仕事をサボる可能性が高いことには俺も同意する。いや、サボるというよりも仕事のことを思いだすことすらできなくなる、が正解かな?


 縛られている妖精達はものすごく不満な様子だけど。


「さて、じゃあさっそく仕事を始めましょうか。お茶会は仕事が終わってからでいいわ」


 あ、お茶会は必要なんだ。昨日が大変だったし、一段落ついた気になっていたからすっかり忘れていた。


「……分かりました」


 妖精達が仕事をしてくれている間に、お茶会に出す甘味を考えることにしよう。




「裕太、本物の妖精の花蜜、味わってみる?」


 妖精の花畑に到着すると、ジューン姫が話しかけてきた。


 そういえば昨日の花蜜はまだ完成ではなかったんだっけ。


「是非、お願いします」


 本物を味わわない理由なんてないよね。


 俺のお願いにジューン姫が頷き、妖精達に指示を出す。


 指示を出された妖精達が、昨日と同じく近くの花に向かう。昨日と違うところは数人が腰を紐で縛られ、逃げ出せないように拘束されたまま作業させられていることだ。


 最初はなんかペット扱いされる特殊なプレイに見えていたが、肉体労働が加わると奴隷労働に見えなくもなくて危険な光景に感じる。


 ん? ペット扱いと奴隷扱い、どっちが危険度が高いんだろう?


 まあ、実際には迷子紐みたいなものだから問題ないか。でも、ベル達が面白そうだと興味津々な様子なのはいただけない。


 タマモとかしっくりきすぎるし、ムーンだと意味が分からない。もし頼まれたらなんとか断わることにしよう。


 そんなことを考えていると、昨日と同じ妖精が花蜜を顔の前に運んでくれたので口を開ける。


 昨日と同じく花蜜が口の中で液体化し舌に……ああ、昨日の花蜜ではどこか物足りなさを感じていた。


 様々な花の蜜が混ざり合っていないからだと考えていたが、それは正解でもあり不正解でもあった。


 香りの複雑さは複数の花蜜が混ぜ合わされた方が複雑だろう。


 でも、一晩経過した花蜜には、これが真の姿だ! そう思わせる力強さがある。


 香り的に昨日と同じ花の蜜のようだし、違いが分かりやすいように同じ種類の花蜜を持ってきてくれたようだ。


 たしかに全然違う。この完成度の花蜜を他の花蜜と混ぜ合わせることにもったいなさを感じるが、同時に混ざった花蜜の味に強く期待してしまう。


 ふむ、後で花蜜だけ少し分けてもらおう。シルフィ達はお酒が減るから嫌がる可能性もあるが、少しくらいなら大丈夫なはずだ。


「うん、まあまあね。最低限のラインは超えたから、収穫を始めましょう」


「まあまあ? 最低限? これが完成品なのでは?」


 俺と同じく花の蜜を味見したジューン姫の言葉に驚く。昨日完成は明日的なことを言っていなかったっけ?


「ん? たしかに完成品とも言えるけど、妖精の花蜜は花と花蜜に妖精の魔力が馴染めば馴染むほど質が上がっていくのよ。つまり、最高の花蜜は花が枯れる寸前の花蜜になるわ。でも、そんなのもったいないでしょ? だから最低限のラインを越えた花の蜜は完成ということになるのよ」


 なるほど、完成品の中にもランクがある訳か。ポーションとかのランク分けと似た感じなんだろうな。


 ん? そういえばそんな話を最初の頃に聞いた気がしないでもないかな?


「そうなると枯れる寸前の妖精の花蜜だけを集めた物もあるんですか?」


 最高の中の最高、最高品質の中から更に素材を厳選しましたみたいな、値段が天井知らず、というかお金があって買えない類の物になりそうだけどね。


「裕太は話が分かるけど、やはり人間ね。妖精が最高の花蜜を前に我慢できる訳がないでしょ。最高の花の蜜はいつだって奪い合いよ」


 ジューン姫に呆れた様子で教えられたが、この場合呆れるのは俺の方なのでは?


「な、なるほど」


 疑問は尽きないがこの話も深く考えると頭が痛くなりそうなのでスルーしよう。


 基本的に俺は丸投げやスルーで面倒事から逃げようとするタイプだけど、妖精と関わってからその頻度が増えた気がする。


「ん? タマモ、どうしたの?」


 妖精から美味しい花蜜を貰ってはしゃいでいたタマモが、元気いっぱいに俺の目の前に飛んできて〝くうくう〟と訴えかけてくる。


 タマモがなんども視線を向ける場所に俺も視線を向ける。


「なるほど、タマモの花畑の世話がしたいんだね」


 タマモの視線の先にあるのは、カラフルな花畑の一角にある、土と小さな緑が混ざり合った畑。


 美味しい花蜜を味わって、元からやる気だったタマモに、更に燃料が追加された訳だ。


「分かった。じゃあタマモの畑に行こうか」


 この後は妖精達のお仕事を見学するつもりだったが、先にタマモのお仕事を終わらせてからでも問題ない。すぐに終わるからね。


 タマモの畑に向かい、タマモが〝くぅ!〟と力を籠めると、花の芽がピョコンと大きくなる。


 頑張ったと満足気なタマモを褒めまくって終了。本当に直ぐに終わったけど、結構凄いことをやっているんだよな。


 そういえば精霊術師になった農家の人達はどうしているかな? 収穫量が二倍か三倍くらいになりそうだし、しっかり精霊術の有能さを広げてくれていると嬉しいんだけど……次に迷宮都市に行った時に確認しておくか。


 タマモのお仕事が無事に終わり、妖精のお仕事の見学に戻る。


 ちなみにベル達はサクラも含めて妖精と一緒に花畑を飛び回っている。おそらくだが妖精と一緒にお仕事しているつもりなのだろう。


 偶に花の前で停止し、花を見つめながらフンフンと頷いていたりする。花畑は広いから邪魔になっている訳でもないのでしばらくそっとしておくことにしよう。


 ジーナ達は大人しく見学中。キッカがポットリアに注目している様子だが、ポットリアもキッカを気遣ってくれている様子なので問題はなさそうだ。


 大精霊でこの場に居るのはシルフィとドリーだけ。他の大精霊は昨日の内に知りたい情報を得たのか、酒蔵に籠っている。おそらく妖精の花蜜酒を造るための準備をしているのだろう。


 そしてラエティティアさんは今日も参加してくれている。とてもありがたい。


 そんなことを考えながら妖精の仕事を見学していると、結構面白い。


 妖精達は花から花蜜を取り出すと、それを浮かべたまま移動。別の花から花蜜を取り出すと浮かべている花蜜に合体させる。


 液体だから接触させるだけで綺麗に混ざり合うようだ。そんな作業を繰り返し、ある程度の大きさになると、ふっと花蜜が消える。


 おそらく収納しているのだろう。


 収納や物体浮遊、妖精は凄い能力を持っているんだと感心していたが、どちらも花蜜採取に便利な能力だった。


 もしかして妖精は花蜜採取に特化して進化してきた存在ではないか、そんな空想が頭をよぎる。


 所詮は空想でしかないのだが、妖精達の手際を見ていると真実かもしれないと思わされる。


 この様子なら、広い花畑だけど午前中で作業も終わりそうだな。


 一部が紐で繋がれているのは気にしないことにする。あまり作業の邪魔になっている様子はないので問題ないよね。


 あっ、今日から楽園食堂を利用するらしいし、お小遣い……いや、お給料の準備もしておかないと……あ、お茶会のお菓子を何にするか決めていなかった。


 サクラの精霊樹の脇芽も妖精に魔力を込めてもらってドリーに生長させてもらわないといけないし、地味に忙しいな。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
妖精も精霊と同じで美味しいものには目がない&我慢できずに食べ尽くしちゃう系でしたか こちらの妖精は豪華客船の方の妖精とは違って理知的だなぁと思ってましたがそんなことはなかったぜ
ラエティティアさんの(精霊樹の)脇・・・は置いといて最高の花蜜は魔力の味でもあると。そりゃ欲しがられるわ
さらに品質は上がるけど、すでに最高の状態なんだから我慢して食べないのはおかしいって思考なんだろうなw毎日お茶会は大変そう。
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