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七百四十五話 結局同伴

 お城の酒蔵の上質なお酒をことごとく予約し、続いてシルフィが発見した空間の捜索に取り掛かる。トゥルに協力を仰ぎ隠された鍵穴を発見し、王家の秘密を掘り起こした可能性が高まる。騒動が確定したと腹を決めたら王様の登場。騒動の規模がドンドン大きくなる。




「鍵穴に罠がないか調べよ」


 王様と一緒に来た騎士の偉い人が、近くの騎士さんに指示を出す。たぶんあの人が騎士団長で、指示された騎士さんは盗賊系のスキルを所持している騎士さんなのかな?


 騎士鎧を身につけた人が盗賊スキルって違和感があるが、王様に付き従うレベルなら、暗殺対策に盗賊系のスキルは必須かもしれない。今後あの人のことを盗賊騎士さんと呼称しよう。カッコ良いか悪いか微妙だけど。


「…………解除が不可能なタイプの罠があります。定められた方法以外で鍵を開けると扉の先が崩壊すると思われます」


 本当に罠があるのか。え? これって本当に城からの脱出路だったりする? 貴重な物を収めるにしても第二倉庫に通路崩壊の罠は仕掛けないよな?


 まあ、たとえ通路が崩壊したとしても、そこに何かあると分かっていれば開拓ツールでなんとかなる。


「鍵の判別は可能か?」


「サイズや使われている魔力の質などがよほど似通っていない限り可能です」


「これだ、分かるか?」


 王様が懐から五本の鍵を取り出し盗賊騎士さんに見せる。ということは残り四ヶ所、使途不明な鍵が残っているのか。そう考えると地味に怖い。


 まああの五本の鍵の中に適合する鍵があればの話だけどね。


「これで間違いないかと」


 適合する鍵があったようだ。


「開けてみせよ」


「陛下、お戯れが過ぎますぞ。我々が調査をいたしますので、陛下は安全な場所にてお待ちください」


 鍵を開けさせようとしたところで騎士団長さんが王様を制止した。


 酷く不満そうな王様、やっぱり新たに発見された秘密にワクワクしているんだな。


「分かった。だがこの国の根幹にかかわる重大な発見があるかもしれぬ。鍵を開け安全を確認後、余も中に入るのは絶対だ」


 王様のワガママに騎士団長やその他のお付きの方々も困った顔をしている。この国の王様は分別があるタイプに思っていたから意外だ。


 ストレスでも溜まって……ああ、ストレスの原因は俺ですね、分かります。


「裕太殿もこちらに」


「いえ、俺はここで見学しています。心配しないでください、たとえこの城が全部崩れようとも俺は無傷ですから。あ、不吉なことを言ってしまいましたね、申し訳ありません」


 この失礼な態度はわざとだ。危険だなんだと色々と言われてこの先の宝探しから排除されるのを防ぐ一手。仲間外れはダメ! 絶対! という決意表明だ。


 まあ、仲間じゃなくて、下手をしたら敵に近い厄介者分類な気もするが、その辺りは気にしないことにしている。


「あ、マリーさんとソニアさんは避難した方がいいかもしれませんね」


「いえ、裕太さんと一緒に居ます!」


「私はマリーお嬢様の傍に居ることが仕事ですから」


 マリーさんが食い気味に否定の言葉をかぶせ、ソニアさんが白々しくマリーお嬢様などと心にもないことを言う。


 連れてきたのは俺だけど、このまま一緒だとお城からマリーさん達と一心同体扱いされそうなので、先に避難させようと思ったが無理なようだ。


「では、鍵を回します」


 王様と騎士団長以外のお偉いさん達が離れ、盗賊騎士さんが鍵穴に鍵を差し込み回す。


 ……ん?


 音もなく石壁が自動ドアのように移動していく。


 え? これだけ? なんか魔力の線的な物が浮かび上がって、開口部分に光の紋章が浮き上がったりして、そんでもってゴゴゴゴゴって重低音を立てながら開く物なんじゃないの? 隠し扉って……。


 あ、隠し扉で秘密の通路なら、目立つ仕組みや音は排除されるのか。


 ピカピカ光らせて音を鳴らしていたら、ここに何かあるって丸分かりだもんな。緊急事態で逃げている時にそんな演出されたらブチ切れること間違いなしだ。


 ロマンが足りなくて残念だけど、納得はした。 


 扉の奥は真っ暗だが、暗視スキル持ちの俺にはシルフィが言っていたように階段が見える。


「中に入り罠の確認をせよ」


 騎士団長の言葉に盗賊騎士さんが隠し扉の中に入っていく。盗賊騎士さん、今日はとっても重労働だ。



「階段を下りた先に鍵のついた扉とまだ下に続く階段があり、更に下に向かうとかなり長い通路となっていたので一度引き返してきました」


 盗賊騎士さんが戻ってきて騎士団長に報告する。


「その扉ね。更に下の階段は城どころか王都の外まで繋がっているわ」


 シルフィが風を送って調べたようだ。ロマンの欠片もない探知方法だが、お城に長く滞在できない俺にとってはありがたい情報だ。


 パターン的に王様が持っていた残り四つの鍵、その中の二つが一つは階段の下の扉用で、もう一つは王都の外の出入口の鍵なのだろう。


「扉に罠は?」


「途中の扉に無理矢理開けようとすると、毒が噴き出す罠が設置されていました。ですが、陛下の持つ鍵の一つと一致しそうな形状をしていました」 


 部屋の中が崩れる仕掛けじゃないのか。外まで脱出できなかった時に閉じこもる避難部屋かな? それなら部屋の中が崩れてしまったら困るもんな。


「王に報告せよ」


 盗賊騎士さんを送り出した騎士団長が、なぜかこちらをチラッと俺を見た。 あ、俺達が居るから騎士団長さんはここに残ったんですね。なんかすみません。


 盗賊騎士さんが王様から鍵を預かって戻ってきた。いちいち手間だが、お城なんてそんなものなのだろう。ワガママ全開な俺の方がイレギュラーだ。



「あら、お酒の匂いが強くなったわ。やはり間違いないようね。裕太、喜びなさい、目的のお酒があるわよ」


 盗賊騎士さんが再び通路に入ってしばらくして、シルフィが上機嫌になった。たぶん途中の扉が開き、狙いのお酒があることが確定したのだろう。


 ただこれだけは言いたい。俺はこの世界のお酒に詳しくないから目的のお酒と言われても喜べない。





 ***




「ふむ、この先に……王としては不謹慎であるが……ワクワクするな」


 王様が隠し扉の前に立って呟く。


 あれから何度も盗賊騎士さんが出入りを繰り返し、途中から同じスキルを持つであろう裏の存在っぽい人達まで合流して調べまくった後にようやく王様が降りてきた。盗賊騎士さん、裏の存在っぽい人達お疲れ様です。


 王様に何かあれば文字通り首が飛ぶから、洒落にならないプレッシャーだったはず。よく頑張った。


 盗賊騎士さんが先導し、その後に王様とお偉いさんと騎士達が続き、最後尾に俺もついていく。


 かなり嫌な顔をされたが、なんとか同行の許可をもぎ取った。


 まあ、王様同伴での全てが明らかになっている接待宝探しだから、ロマンはほとんどないんだけどね。


 光源が光球しかない薄暗くかび臭い階段を降りていく。


「ここが聞いていた扉か」


「はい、罠は陛下の鍵で全て解除されております」


 騎士団長さんが告げる。頑張った盗賊騎士さんが説明するんじゃないんだな。


 中を見ると室内は石畳になっているようだ。酒蔵はレンガ造りだったし、この違いには何か意味があるのだろうか?


 扉の奥に進むと広い部屋になっており、いくつかの扉が見える。その複数の扉のいくつかは個人部屋になっているそうだ。


 おそらく避難した偉い人のプライベートを守る個室なのだろう。


 他には食糧庫や風呂、トイレなども用意されている。この部屋は本格的な避難部屋で、長期滞在できる仕組みになっていた。


 そしていくつもの扉の中に、王様が持つ使途不明の鍵を使う部屋があった。他の部屋にも鍵がかかるが、それは普通の鍵で盗賊騎士さん達により解除されていた。


 で、王様の鍵を使う部屋はなんと……宝物庫! 王城が攻められてピンチになり、この避難部屋から一発逆転を狙うための資金を確保するための部屋……なのかな?


 その大元になる国は既に滅んでいるのだが、なんと財宝が残っていた。この避難部屋を利用する暇すらなかったのか、もしくは元の国でさえ忘れられてしまった部屋だったのか、とにかく財宝が残っていた。


「おお、これは見事な。これがあれば王家の運営にどれほど役に立つか……」


 金銀財宝が並んだ部屋を見て、感嘆の声を上げる。


 たしかに凄いのだが、ぶっちゃけると俺の魔法の鞄に入っている金銀財宝の方が迫力があり、逆に怖くなってくる。


 俺、とんでもないお宝を死蔵させているんだな、と……。


「裕太、財宝はもういいでしょ。食糧庫に行くわよ」


 あ、はい。宝物庫にお酒はないですもんね。


 シルフィに促され食糧庫に向かう。


 監視の騎士さんに頭を下げて中に入るが、止められることはなかった。それなりに信頼されているのだと信じたい。


 中に入ると沢山の元は棚や木箱であったのであろう物の残骸が散乱している。


 ただ、それでもこの部屋には騎士を配置する価値がある。


 前時代の遺物。死の大地を生み出すほどに発達した魔法の文明の遺産がこの部屋に残っていたからだ。


 なんとこの食糧庫全体に時間遅延の効果がある魔道具が設置されているのだそうだ。時間遅延だから俺の魔法の鞄のように時が止まる訳ではないが、それでもその価値は計り知れない。


 しかもその機能、今も生きており扉が閉まり中に人が居なければ発動する仕組みらしい。時間遅延効果のある部屋ですら木材が朽ちてしまうほど時間が経過した食糧庫。


 そんな食糧庫にシルフィがなぜ拘るかというと、当然お酒があるからだ。


「裕太、その右奥よ。木片をどかして発掘してちょうだい。慎重にね」


 シルフィに言われた通り、崩れた木片をどかしていく。お、ガラスの破片か? なるほど、この辺りにワインを保管していて、割れていないのが残っているんだろうな。


「あ、あった。シルフィ、これが目的のお酒だよね」


 割れていないワイン瓶を発掘。コルク部分はボロボロだが、中に液体も残っている。凄いな、木材がひとりでに劣化して崩れるくらいの時を重ねても残る物なんだな。


「違うわ」


「違うの?」


 シルフィの言葉に驚いて瓶を落としそうになる。


「ええ、一応液体は残っているけど、完全にアルコールが飛んでいるわ。それはもうただの水ね。呑んだらお腹を壊すかもしれないけど、飲む?」


「……飲まないけど一応、王様に見せることにするよ」


 歴史的には貴重な物だしね。


 シルフィの目的の物ではなかったので更に瓦礫をどかしていくと、石畳が見えた。


「シルフィ、何もないよ?」


「おかしいわね、たしかに匂いが……裕太、もう少し壁際の木片をどかしてちょうだい」


 言われた通り木片をどかす。


「匂いが強くなったわ。なるほど、更に地下に小さいけど空間があるわね」


 え? 隠し部屋の保存庫にまた隠し部屋? どれだけ隠しておきたい物なんだ? お酒なんだよね?


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
精霊樹の果実が発酵してお酒になったのかな?
とんでもなく貴重な酒が見つかったとしても、裕太に渡す褒美が出来たと思えば残念では……いや、やっぱり惜しいよなあ。せめて分けられて、分けた分で充分であることを祈ろう。
ソーマ的な何かでは?? もはや酒というよりエリクサーレベルのものじゃ・・・
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