表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
606/773

六百四話 石

 精霊樹の種を完成させるために楽園に戻りサクラから精霊樹の果実と根を受け取った。続いて最後の素材である琥珀をゲットするためにノモスを頼ったが、なんやかんやあって最終的に死の大地に新しい土砂の山が生まれた。大精霊凄い。




「あー……ノモスが張り切って採掘地を準備してくれたから、みんなで宝探しだ。契約精霊と協力して頑張ってお宝を発見してくれ」


 ノモスの別に張り切ってなどおらん! というツッコミをスルーしベル達やジーナ達の元気なお返事をもらって採掘を開始する。


 ジーナはシャベルでいきなり近くの地面を掘り返し始める。シバがわふわふと騒いでいるから、自分の契約精霊の気配を察しての行動だろう。


 サラはふくちゃんとぷるちゃんに導かれるように進んでいるし、マルコは……ウリがプープーとアピールしているのにも気がつかずにテンション爆上げで走り回っている。


 サラは問題ないとして、マルコは後でお勉強だな。土の精霊という今回の宝探しで最強の手札があるのに、まったく生かしていないのはダメだろう。


 キッカはマメちゃんになにやら話しかけながら、使う道具を選んでいるようだ。微妙におままごとの雰囲気が漂っているが問題なさそうだ。


 みんな楽園で畑仕事やローズガーデンの手入れをしているから、それぞれマイ農作業道具を持って土の扱いにも慣れている。怪我をすることはないだろう。


「ゆーたー」


 ベルがちっちゃな手足をワチャワチャと振り回しながら、待ちきれない様子で俺を見ている。その背後でレイン達も同じような顔をしている。


 普段なら一目散に飛び回ってお宝探しを楽しむはずなんだが……あぁ、俺が契約精霊達と協力してって言ったから俺を待ってくれているんだな。


 ベル達の心遣いがとても嬉しい……まてよ? もしかしてベル達全員が怪しいと思った場所を俺が掘るのか?


 レベルアップで体力に自信はあるが、かなり大変な気がする。


 これはゲームにしてしまった方が良さそうだな。でもベル達はかなり自由に力が使えるから採掘場所が荒れる可能性もあるし、土の下級精霊であるトゥルが有利すぎる面もある。


「……じゃあベル達はゲームをしようか」


「げーむ!」「キュ?」「あそぶの?」「クゥ」「かつぜ!」「……」


 ベル達の反応は悪くないな。


「うん。採掘できるのは五個まで。その中で一番自信のあるお宝を比べっこするんだ」


 これなら俺が掘る必要はないし、五つごとに休憩を入れられる。ある程度のんびりと宝探しが楽しめるだろう。


「あっ、トゥルは悪いけど土の中を探知してお宝を探すのは有利すぎるから禁止ね。掘る時は力を使っても大丈夫。ムーンにはシルフィがついてあげて、地面を掘るのを補助してもらえる?」


「だいじょうぶ。じめんのなかをみなくてもすごいのをみつける」


 おっ、縛りを課したのだが、トゥルが妙にやる気だ。長文を話すトゥルって地味に珍しいんだけど、実は縛りプレイ楽しむタイプなのか?


「しょうがないわね。ムーン、私に任せなさい」


 シルフィは仕方なさそうにムーンをツンツンと突いているが、それほど嫌ではないようだ。頼られたら断れないタイプだし、しっかりムーンの面倒を見てくれるだろう。


「じゃあ、宝探し開始! 五つ見つけたら戻ってくるように!」


 俺の合図で一斉に散らばるベル達。はしゃいでいるし、楽しんでくれそうだ。


 本来の目的とはかなりズレてしまっている気がしないでもないが、まあみんなの楽しみを優先で構わないだろう。


 最悪、最後にノモスにお願いすればなんとかなるから気は楽だ。


 周囲を見渡すとみんな楽しそうに……ん? なんか日差しに反射してキラキラ光る物体がいくつか……。


「ノモス。もしかして見つけやすいように琥珀を露出させたりした?」


「……儂はそんなことしておらん。偶々じゃろう」


 俺に問いかけられたノモスが、視線を合わせずに答える。うん、嘘だな。確実にチビッ子たちが発見しやすいように手を加えている。


 でも精霊達はノモスの心遣いが伝わっていないというか、自分で見つけるんだという思いが強すぎるのか、分かりやすいお宝には飛びつかずに自分で怪しい場所を探そうとしている。


 ノモスはチビッ子達の気質を読み間違えたようだ。


 優しさが伝わらないのは悲しいが、ちょっとだけノモスの空回りが面白い。不器用ですからって言ってほしい。


「あっ、マメちゃん、きれいなのみつけた!」


 小さなスコップを持ってマメちゃんと歩いていたキッカが、ノモスの優しさに気がついたようで、琥珀を発見して大喜びしている。


 キッカの無邪気さにノモスが救われた瞬間だった。チラッとノモスを見ると、ちょっとだけ嬉しそうに顔が緩んでいる。


 ここでツッコミを入れたらスネてしまいそうなので、優しく見守っておくだけにしよう。



「うお、なんだこれ! 師匠、師匠、変なの見つけた!」


 精霊達や弟子達がワイワイと採取を楽しんでいるのを見守っていると、シバがアピールした場所を掘り進めていたジーナが大興奮で俺を呼ぶ。


 楽しそうなのは構わないのだが、ジーナももう少し大人というかレディの嗜みを身につけないといけない気がする。


 別に女性は女性らしくなんて古い考えをしているつもりはないのだが、マルコと同じようなリアクションを取るのはさすがにどうかと思う。


 というか、素晴らしい美貌を持っているのだからもったいなさすぎる。


 師匠としてどこまで女性教育に踏み込むかを考えながら、少年のようにはしゃぎながら手招きをするジーナの元に向かう。


「師匠、見てくれ!」


 ジーナに言われて穴の中を見ると、驚くべきものが目に飛び込んできた。


「……化石」


 琥珀を探していたはずなのだが、それはとりあえずおいておこう。


 穴を掘って化石が出てくるのも理解できなくはない。ノモスがかなり深くまで地面を掘り返してくれたから、地層はかなり古いはずだ。


 ただ、化石の内容が……これ、どう見てもゴブリンの化石だよね?


 俺の中で化石は恐竜の骨が第一で、第二に貝や葉等の植物。第三に原人等の昔の人類。その地球でのふんわりした知識に凝り固まっていたので、ゴブリンの化石に頭がついていかない。


 ……いや、でも当然なのか? この世界では魔物が存在するし、古い時代にも魔物が存在していたのなら魔物の化石が発見されても不思議ではない。


 特にゴブリンは数が多いから、化石として残りやすそうだ。ある意味凄いなゴブリン。


「うん、これは面白いね。価値は分からないけど、綺麗に取り出してマリーさんに見せてみよう。ノモス、周囲の岩盤ごと壊れないように取り出してくれ」


 開拓ツールの出番かとも思ったが、岩盤が崩れたらもったいないのでノモスにお願いする。


「ふむ、こんなものを取り出すのか? まあええじゃろう」


 不思議そうに首を傾げるノモス。この世界では化石はあまり価値がないのかもしれない。


 まあ地球みたいに地質学、古代生物学のような学問を発展させる余裕はなさそうだし、気軽にフィールドワークにも出かけられないから無理もないか。


「師匠。ゴブリンの骨もこうしてみると面白いな」


 ジーナとシバがキラキラした瞳をしている。こういう姿を見ると、もう少し女性らしくって言い辛いんだよな……。


「そうだね。あとでサラ達にも見せてあげよう」


 サラ達もベル達も宝探しに夢中でこちらの騒ぎに気がついていないが、見たらきっと喜ぶだろう。


「あっ、そういえば琥珀を探すんだった。師匠、あとはお願いな。シバ、次だ!」


 ジーナが本来の目的を思い出し走っていってしまった。まあ、楽しそうだし、良いよね。




 ***




 俺は自分の浅はかな考えを後悔している。


 ベル達に提案したゲーム。ベル達は大喜びでお宝を集めてきた。その提案をしたのは悪くない……はずだった。


 現在、ベル達がウンウンと悩みながら、どれを提出するか悩んでいるお宝を見るまでは……。


「きめたー。ゆーた、べるはこれー」


「りょ、了解……」


 ベルから受け取ったのは……石。丸くてツルツルしているが、普通の石。だが、ベルにとってはこれがとても素晴らしいお宝なのだろう。


 どうだ! と自慢げに胸を張っている。


「キュー」


「レインは……これだね。うん、了解」


 自慢げに出されたレインのヒレに挟まれた物体。石だ。


 なんとなくだけど、形がイルカに似ているので、レインもそこが気に入ったのだろう。嬉しそうにキューキューと鳴いていて、とても可愛い。でも石だ。


「ぼくはこれ」


 トゥルが自信なさげに差し出したのは、キラキラと光を反射する琥珀。そうこれなんだよ。


 自信を持って大丈夫だからね。トゥルは間違っていないから。


「うん、綺麗な琥珀だね。すごいねトゥル」


 俺が満面の笑みで褒めると、ホッとした様子のトゥル。自分以外の友達が、琥珀とかそっちのけで好みの物も集めてきたから戸惑ったのだろう。もう一度言う、トゥルは間違っていない。


「クゥ!」


 続いてモフモフな尻尾をブンブンしながら差し出してきたのはタマモ。葉っぱの形が綺麗に残った化石だ。


 ゴブリンの化石があったから植物の化石もあるだろうと思ってはいたが、タマモが発見してきたか。植物に関係する精霊だから、葉っぱの化石が嬉しいらしい。


「葉っぱの形が綺麗だね。さすがタマモだ」


 もちろん褒めて受け取る。目的の琥珀ではないが、これはこれで面白い……はず。


「ふふ、これをみるんだぜ!」


 ドヤ顔でフレアが見せてくれたのは、うん、赤い石だね。ルビーのような宝石ではなく、濃い絵の具のような赤い石。和風な家の庭石で似たようなものを見たことがある気がする。


 赤が大好きなフレアには魅力的なお宝だろう。もちろん褒める。琥珀じゃないけど。


「…………」


「うん、綺麗だし、なんとなくムーンに似ているね」


 ムーンは青く透明な体の上に、ちょっと青っぽい丸いお餅のような石を載せていた。とても鏡餅っぽい見た目だ。


 もちろん褒めて受け取る。石だし、少しベルとかぶっているけど……。


 というか石の確率が高すぎ。というか琥珀も石と言えば石なのかな? なら全部石だね!


 ……俺、なんで宝探しって言っちゃったんだろう?


 宝探しゲームを提案したからなんだけど、素直に琥珀探しゲームって言っておけばよかった。


 子供の頃って、セミの抜け殻でさえ宝物になったりするんだよな。


 ふう……チビッ子達の自慢のお宝に、俺が優劣をつけるの? 同じものを比べるなら優劣はわかりやすいけど、石だよ?


読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ゴブリンの化石って発想は無かったなぁ…… でも言われてみれば確かにファンタジー世界に化石があるならモンスターの化石があるのはおかしくないわなw
[一言] ゴブの化石って発想凄い
[一言] 子供あるあるですねw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ