ここという場所
「村?しかも、なんか廃れてんな……」
目の前に広がる村は人の気配が全くしない。
ボンヤリと霧のようなものが村をすっぽり包んでいるせいなのか。
先ほど、エルという少女はここの住民だと言った。つまり、あの村の住民ということなのだろう。
いや、この世界の、と言っていた。
ここ以外にもあるってことなのか?
駆けていってしまったエルの姿はもう見えない。呼んでくる、ということは戻ってくるのだろう。ここで下手に動いてそのノワという奴とすれ違ってしまうよりかは、ここで思考をめぐらせていた方が確実か。
そういえば。
考え始めてからふと思った疑問。
「三途の川の現世側には村があったんだな……」
そんなこと、聞いたこともなかった。つまり、あの村のことを認識する前に追い返された、と考えられる。だが、どう追い返されたんだ。
もし、村の方向に現世があるなら。あの村を通らなくてはいけないはずだ。
転移したのか、それとも村での記憶がないのか。
そもそも、ここにはどうやって来たのか。
考えようとしても思い出せない。
はやく、ノワって奴に事情を聞かないといけない。
それから、何回考えても同じになってしまうため、一回考えることをやめた。
もう一度、辺りの周りを観察してみる。
一言で言うと、のどかだ。
今座っている地面には青々とした芝生が広がっており、空には雲一つない青空が広がっている。三途の川の川も、想像しているよりも毒々しくなく、結構な川幅なものの澄んだ水が流れている。
向こう側もそこまで違いはなく、芝生が広がっていた。と、いうことはバアちゃんが去っていった向こう側にも村があるのだろうか。
ひょっとすると、天国というくらいだから国でもあるんだろうか。いや、極楽浄土ってやつか?
天国には天使はいるんだろうか。
あの、エルって娘並に可愛い子なんだろうか。
いや、むしろあの娘が天使なのか?
この世界=天国とも考えられる。
「でも、羽無かったしなぁ……」
天使には輪っかと羽、そう相場が決まっている。
「て、なに馬鹿なこと考えてるんだろうな自分」
さっきから考えが色んなところに飛んでる。
しっかりしないとな……。
まぁ、焦ってなにも考えられなくなるよりかはましか。




