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Need of Your Heart's Blood 2  作者: 彩世 幻夜
第十二章 together with members
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序章

 咲月の侍女兼教育係。

 朔海の考えを支持する側近。

 人界との繋ぎを取るためのパイプ。


 この短期間で揃えたにしては、上出来だろうメンツが揃った。


 「……そろそろ本格的に、城で体制を整えないと。――咲月、葉月。明日、父王に目通りし、戴冠までの詳細を詰める。葉月、数日のうちに正式に城へ居を移すための段取りを整えろ。咲月も、そのつもりでいてほしい」


 魔王からの命を受けてから約一週間。

 真実、“世界をまたにかけて”集めてきた人材を、そろそろしっかり組み上げて、確かな基盤を作り始めなければならない時期だ。

 

 「まずは僕が行って、僕らと、彼らの居室とするべき場所を確保してくる。詳細が決まったら使い魔を送るから、葉月は順次荷物の運び込みやら人員の配置の差配やらを頼む」

 「――御意」

 「……とは言え、部屋の状態を整えるにもある程度時間は必要なはずだ。だから咲月は、こちらの支度が整うまでは、もうしばらくこの屋敷に留まって欲しい」

 「うん、分かった。向こうへ行く前に、少しでもダンスとか、上手くなれるよう頑張っておくよ」 


 「そういう事だから、もうしばらく彼女を頼むよ、ファティマー。セレナ殿も、咲月の事をよろしくお願いします」

 「うむ、承知した」

 「――かしこまりました」

 彼女たちが頷くのを待って、朔海は言った。

 

 「咲月、そういう訳で僕は一足先に魔界へ行く。ごめん、少しの間だけ、また君を待たせることになるけど……」

 「ううん。今が大事な時なの、分かってるから。……私こそ肝心なところで役に立てないのが悔しいけど。少しでも早く、朔海に追いつけるようにするから」

 だから、と、咲月は彼の目をまっすぐ見据えながら言った。


 「お互い、頑張ろう」

 きっとこの先当分は、これまでの様な気楽な日々は期待できないだろう。

 それでも、この先を少しでもより良い未来にする為には、今、出来る限りのことをするしかない。

 「だってもう、お互い一人じゃないし、力も得た。勿論、全部が上手くいくとは思わないけど、でも、希望はあるんだから」


 事は壮大でも、これまでの事を思えば、随分と気は楽だ。


 あの満月の夜に、朔海を一人で見送った時の様な心細さや寂しさはもう無い。

 ……まあ、しばらく離れ離れになる事自体は寂しいし、残念な事ではあるけれど。


 今度はきっと、ひと月もかからないはずだ。

 

 「――じゃあ、行ってくる」

 だから、咲月はそう言って出かけていく朔海を、

 「――うん、行ってらっしゃい」

 と、当たり前の挨拶だけで見送る。


 「お迎えに上がりました、朔海様」

 今回は、ファティマーに借りたものではない。

 ファティマーに借りたそれより数倍豪奢で大きな6頭立ての馬車を操り、屋敷の門前で彼を出迎えたのは、朔海の元教育係兼侍従長だった涼牙だ。

 さっと御者台から降り、主のために馬車の扉を開けて待つ。


 すかさず、従僕らしき若い男が踏み台をその前に置く。

 朔海は、内心でため息をつきたそうにしながらも、黙って馬車へと乗り込んだ。

 朔海が座席に落ち着いたのを見るや、涼牙はさっさと扉を閉め、御者台へと戻る。

 従僕が慌てて踏み台を片付け、御者台に飛び乗るやいなや、こちらへはついでのように軽く会釈だけして、彼は馬車に繋がれた漆黒の馬に鞭を当てた。


 馬車の中の朔海だけは、慌てて手を振るように片手を挙げたが、それもすぐに見えなくなる。


 「さて、では私どもも早速動きますか」

 葉月が、準備運動をするように肩を回しながら言った。

 「忙しくなりそうですね」

 「何、暇よりは忙しい方が良いだろう?」

 「そうね。まあ、忙しすぎるのは御免だけど」


 「では、我が愛弟子よ。最後の追い込みだ。ビシビシしごくから、覚悟しろよ?」

 「お嬢様、私との授業も、お忘れなく」


 彼が傍に居なくとも、やらなければならない事はいくらでもある。

 「――はい!」

 彼の隣に、堂々と立てるように。咲月は、改めて彼女たちに頭を下げた。


 「よろしくお願いします!」

 


 そして、それから2ヶ月の後。

 吸血鬼の国に新たな王が誕生のニュースが駆け巡った。 

 

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