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しりとりしたら、あいつの想いに気づいてしまった。~胸キュンしりとりは、罠?!~  作者: 歩磨(旧:あゆま3)


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1/18

①

高校に入学して2回目の春。

学年全員が第一グラウンドにぞろぞろと集合していた。

全員が同じ体操服を着て、同じようなリュックを背負い、なにかに取りつかれたように並んだ。

学年主任が壇上で拡声器を持って、なにかを叫んでいる。


「あちー」

「ほんと。歩き遠足とか地獄だろ」

「なー」


俺、中野悠希(なかのゆうき)がこぼした愚痴を、振り返った栗栖凛(くりすりん)が拾った。

こいつとは、よくつるんでいた。

同じクラスで、同じバレー部だったから。

全体的に色素が薄くて、センターパートの髪が日に当たって金色に見えた。

女子なら好きになるような顔で笑っていた。実質、後ろがうるさい。

こいつも実は遠足楽しみにしていた質か、と目が細くなっていった。

スニーカーの先で、グラウンドの土を抉った。

蟻がちょろちょろと走り回っていて、山を作ってやった。


春なのに、夏のような日差しが皮膚を刺していて、風はあるけど、優しすぎて人壁に阻まれていた。

今日は、隣町の神社に行く予定になっていた。

そこは全国的に有名な神社で、外国人観光客も多い。

ただ、その神社は山の頂上にあって、石段が1,000段?くらいあるらしい。

うちの高校は部活に力が入っていて、2ヶ月前だけど総体前だし願掛けに行く習わしだった。

俺は地元だけど行ったことなくて、リュックがずしりと肩にのしかかっていた。


「今日の部活アップなしかな?」

「だったらいいな」

「去年どうだったっけ?」

「覚えてるはずないだろ」

「なー」


壇上では、校長がなんか喋り出した。こうなったら、長い。

学校の成り立ちとかいいから、さっさと出たい。

というか、帰りたい。

途中で帰ってやろうかと思ったが、先生が引率じゃなくて監視してるから無理かと口が尖った。

首に巻いていたタオルを頭に乗せた。


「悠希さ、日焼け止め塗った?」

「いやー?」

「塗れよ! 貸してやるからさ」

「めんどい……」

「俺ら日差しに弱いんだから、後で死ぬぞ?」


去年強制参加だった、野球部の甲子園予選応援。

スタンドは鉄板の上にいるようで、肌だけじゃなくて、本当に体力まで焼かれた。

その後の練習は皮膚は痛いし、身体が重すぎて、地べたを這うようだった。

実際、床がひんやりして気持ち良かったのもあった。

手を出すと、リュックの前のポケットから、ブルーのボトルを取り出した。

わざわざ振って、蓋を開けた状態で手の上に置いてくれた。


「塗ってやろうか?」

「一人で塗れるから」

「ほら、首の後ろとかさ」

「届くし」


遠慮なく、思いっきり液体を出してやった。

新品らしくて、掌いっぱいに出てしまった。

ボトルを凛に渡して、手に広げた。

そのまま顔に擦り付けて、首まで塗った。


「ここ、白くなってる」


凛が、指先で頬を何度か擦った。


「んー、ありがと」

「ここも。ってか、適当すぎんだろっ!」


今度は首筋を撫でられて、凛の掌を首に挟んだ。


「こそばゆい……」

「我慢しろ。自業自得だろ」

「自分でやるってば!」

「俺がやった方が早い」


俺が首を元に戻すと、凜が日焼け止めを手に足した。


「そんな塗る?」

「保険」


ベタベタと首と頬の高いところに塗られた。

こそばゆくて、何回か掌を首で挟んだ。

真剣な顔で塗るもんだから、ちょっと笑いそうになった。

急いで、壇上の校長を見た。

身振り手振り大きめで、まだしゃべっていた。

さすが、英語教師。


「終わったぞ」

「サンキュー」

「ジュースおごりな」

「えー!」


凛が歯を見せて笑った。


「栗栖くん、私おごるから塗ってよー!」


凛の後ろの女子が影から顔を出してきた。

名前の知らないクラスメイトだった。


「あー、もう日焼け止めないかも」


爽やかな笑顔でさらっと言い退けた。

リュックの前ポケットの中に入れて、さっさとチャックを閉めた。

嘘つけ! めっちゃ新品じゃねーか!


「えー! 私持ってるよー!」


俺の後ろの女子がピンクのチューブを持った手を伸ばしてきた。


「しゃーねーな! 俺が塗ってやるよ!」

「中野がやったらセクハラだから。訴えるよ?」


めちゃくちゃ嫌そうな顔されて、睨まれた。

頭のタオルを乗せ直して、深めに被った。

他の女子までギャーギャー言い始めて、校長の目がギロリと俺たちに向いたのが分かった。

凛は困り顔だし、目の端に学年主任が向かってくるのが映った。


「おい! 主任来たぞ!」

「「やばっ!」」


全員が手を身体の側につけて、前を向いた。

主任が途中で踵を返して、戻っていった。

小さく息を吐いて、凛の肩甲骨の間を見た。

こいつ肩ぐにゃぐにゃなんだよなーなんて思いながら。


「詰んだ……」

「それなー」

「しゃべるなよ」

「お前がな」


話が終わるまで、コートに立つと羽が生える背中を見ていた。


校長の話が終わった。

また学年主任がなんか叫んでいた。

俺たちは後ろの方のクラスだから出発はまだ先だった。

前が動くまで、土の山を作ろうと靴先を伸ばした。


「おい、見ろよ! アスリート走ってるぞ!」

「あー担任、山田先生だからな」

「アスリートじゃなくてよかった……」

「それなー」


顔を上げると、本当に1組アスリートコースの連中が走り出していた。

山田先生が先頭で高笑いしながら走っていて、『ついてこい!』なんて叫んでいた。

陸上の先生だけど、40代で若くはないはずだ。

弁当が寄らないといいけど、なんて思いながら、俺はバレー部の連中を探した。

3人が固まって走っているのが見えた。

一番背の高いのが西尾で、首から上がアイドルみたいなのが濱、頭一個小さいのが橋田。

俺はそれぞれに両手を振って見送ったが、ギロリとすごい顔で睨まれた。


「うわっ、こわっ!」

「お前、後でやられるぞ!」

「やべっ!」


急いで、手を腰の上で組んだ。

黒いリュックが揺れる背中を見送って、最後に副担任が死んだ魚のような目をしてついていった。

凛に注意されたばっかりだけど、合掌してしまった。

「だから、やめろって!」って、注意された。


アスリートコースの出発の後、しばらくして前が動き始めた。

進学クラスの俺らは、走ることはなくて、歩きだった。

ちょっとほっとした。

神社の麓に着くまで1時間くらいはかかるらしい。

凛がすぐに俺の横に並んだ。


「なー悠希」

「なに?」

「なんかしゃべって」

「体力温存」


周りは結構大声で馬鹿笑いしたり、うるさいくらいだった。

せっかくの遠足。

楽しくしたい気持ちも分かるが、部活のことを考えると、少しでも休みたかった。

桜の花が散って裸になった木々のアーチを潜って、校門を出た。

行進が延々と続いていた。

アスリートの奴らなんてもう見えなかった。


「えーかまってよ!」

「うざっ」

「ひどいな」


凛が機嫌よく笑った。

背も同じくらいで、もともと同じポジションだった。

けど、こいつはなんでもできすぎて、早々にポジション変えした。

元からそこだった?ってくらい、すぐに馴染んだ。

バネのような筋肉をしていて、ありえないくらい跳ぶし、ボールが走る。

一見、細身で心配になるが、脱ぐとバッキバキだったりもする。

俺は逆で、筋肉がつきやすいがっちりしたタイプで、なんでもパワーで押してしまう。


「悠希さー、さっきまじで女子に塗ろうとしてた?」

「さっきの?」

「おー」

「まさか」

「彼女欲しいんかなって」

「いやーないかな。今は」

「モテ男の言い方! そんなんじゃないだろ!」

「失礼な!」


随分先の山の頂上を見た。青々としていて、雲はかかっていなかった。

ないと言ったが本音は……欲しい。

ちょこちょこ声をかけてくれることはあっても、その先にはいかなかった。

なんとなく、違う気がして。それに部活が楽しくなってきてて、そっち優先になりそうで。

凛の顔を覗くと、笑ってた。

こいつ、なんで笑ってんの?


「凛は?」

「俺?」

「お前この前もサッカーの女の子に、なんかあったじゃん」

「あー……」

「お前なんなん?当てつけ?」

「ちげーよ! 好きな人いるんだよ!」

「へー初耳」


前を見ると、日焼け止め塗ろうとした女子が長い髪をなびかせながら3人で前を歩いていた。

俺たちの方には一切振り向かなかった。


「だれ?」

「教えない」

「ヒント」

「かわいいひと」


食い気味に返事された。

こいつは入学してすぐ彼女を作ったけど、夏前に別れてそれっきりだった。

凛でも付き合えない女の子ってどんな子だろうと想像した。


「……先生とか?」

「ちげーよ!」


思いついたことをポンポン投げたけど、凛が黙ってしまって話が途切れてしまった。

俺はうんうん唸りながら考えたけど、面倒になってやめた。

足を止めずに腕を上に伸ばしてから、肘を折ってもう片方の手で押さえた。

続いて、身体を傾けて脇も伸ばしていたら、視線を感じて横を向くとスマホが俺に向いていた。

シャッター音がして、ぎょっとした。


「やる気じゃん」

「いや、なんで撮ったし」

「……なんとなく?」

「消せよ!」

「後で送っとく!」


凛の肩に手を置いて、スマホに手を伸ばした。

もう少し、というところでひょいっと空に手を挙げられた。

急に凛が走り出して、距離を置かれた。


「後でみんなで撮ろうぜ!」


スマホを掲げたまま、後ろを向いて俺にそう言った。


「おい待て! 消せよ!」

「はは~♪」


凛の背中を追いかけたが、先頭の担任のとこで止まったので、スピードを落とした。

担任、俺には小言しか言わないから。


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