そこにあったもの
しばらく時間があいてしまいましたすいません。
そこは、いくつもの階層に分かれている巨大なホールだった。側面にはところ狭しとテナントが立ち並び、中央にある中庭には小さな遊園地が設えてある。かつては活気のある地下モールだったのだろう。
まあ、今では錆と苔に覆われたがらんどうなのだが。
「いらっしゃい」と書かれた看板がふらふらと揺れている。
降り立った場所はロビーとでもいうべき場所なのだろう。まあとにかく一番上の階層だ。
ひとしきり周りを見渡した敦志は、ふと亜美の発言に引っかかりを覚えた。
「なぁ、亜美。亜子は死んだんだぞ?死者が一緒に行動するなんてできない。お前、本当に正気か?」
亜美は答えず、無言でついてこいとばかりに歩き出す。
「どこに向かうんだ?」「聞いてます?」など声をかけてみるがめぼしい反応はない。
表情も、満面の笑みを貼り付けたままで正直不気味だ。
突然、服屋らしきブースの前で亜美が立ち止まる。
「中へお入りくださーい、王子サマ、ご覧いただきたいものがございます。」
王子サマ呼びはやめて欲しいと敦志は思う。だが、それを言ったところで彼女は直さないのだろう。
変に反発する理由もない。早く薬や食料を確保させてほしいが、彼女の案内は不可欠だ。
それほど時間はかからないだろうと敦志は大人しく店内に入った。
右奥の、カーテンが取り払われた試着室の中にそれはあった。
どぎつい色の、大きすぎるリボン。
ピンク色の厚底ブーツは通りにあった靴屋のものか。
サイズの合っていないロリータな衣装。
それらを身に着けた亜子が虚ろなる瞳で空を見つめている。
「うわぁぁぁっーーー」
この世界に来てから何度目かの絶叫。
このあと敦志は何故舌を噛み切ってでも悲鳴を殺さなかったか敦志は死ぬほど後悔する羽目になる。
「ねえ、王子サマー。亜子ちゃんセクシー系だけどぉ、こんなのも似合うんだよぉ?
どぉ?可愛い?王子サマも一緒にしてあげたいなぁー」
いつの間にか後ろにいた亜美が尋ねる。
敦志としては死体を飾り立てるという行為に気持ち悪さしか覚えない。だが、
それを言えばリアル口裂け女状態の亜美に何をされるかわからない。ここは無難な回答を...
①はい →よし一緒にしてあ(ry=DEATH!
②いいえ→あきちゃん可愛くないわけな(ry=DEATH
詰みである。敦志はコミュ力5のお兄さん(おっさんじゃないから、そこんとこよろしく)だ。
気の利いた返しなどわかるはずもない。ギャルゲー知識、ヤンデレ系ホラゲーの知識を総動員し、
できた答えが。
「うーん、俺センスないからわかんないやー」
うんゴミ。




