作品構想・設定集
読者のみなさまへ
『40光年』をいつも読んでくださり、本当にありがとうございます。
今日は、大切なお知らせがあります。
昨年秋頃から私生活の環境が大きく変わり、継続して執筆時間を確保することが日に日に難しい状況になってきています。
今後について長く悩みましたが、このまま中途半端に更新停止期間が長くなることが度々発生するよりも、一度区切りをつけるべきだと考えました。
そのため誠に勝手ではありますが、一旦連載の方を停止させていただきます。
続きの更新を楽しみにしてくださっていた方々には、本当に心から申し訳なく思っています。
話が中途半端な形でモヤモヤさせてしまうのも心苦しく思っています。
私自身も大変悩み、みなさんへの気持ちを少しでも埋めるにはどうするべきかを考えた結果、何も語らず終わるのではなく、この作品で描こうとしていた物語や、キャラクター達の未来、設定などについてできる限り伝えてから終えようと思いました。
この後、それらの公開をしていきたいと思います。
その上で申し訳ありませんが、一旦完結という形をとらせていただきたいと思います。
今後いつか復帰して続きが書けた際に、全てネタバレとなってしまう内容とはなりますが、どうかご理解をいただければ幸いです。
『40光年』の世界
宇宙を舞台にした英雄譚。
善と悪の意味を問いかける物語。
現代と遠い未来が交差する世界。
そして、悲しい恋と、報われる恋の行方――。
私は、そんなテーマを込めた作品を作りたいと思い、この物語を書き始めました。
その想いを形にするために、裏側では色々な設定や世界観を用意していました。
一度にすべてを語るとどうしても難しくなってしまうので、読んでくださる皆さんにも楽しんでいただけるよう、少しずつ丁寧にお話ししていけたらと思っています。
物語について語る前に、まず多くの方が気になっているのではないかなと思うことが、
――この作品の主人公って一体誰なのか、という点です。
実は、これに関しては、私の中では「読む人によって主人公が変わる物語にしたい」という形でした。
そのため、ヤマト、リク、レン、藤堂、ユウイチといった主要キャラクターは、それぞれが主人公になり得るような形で描いていくつもりでした。
同じように、物語に深く関わるヒロインも複数います。
カラメア、ミオ、セリナ姫、そして藤堂の妻・聡子――彼女たちもまた、それぞれの物語を持つ重要な存在です。
中でもミオは少し特別なキャラクターで、作者としても強い思い入れがあります。
今後予定していたリク編では、他のキャラクターとは違う形で、リクと共に少し違った物語が進んでいく構想でした。
その物語の中身については、話し始めると長くなってしまうので、また改めて後でお話しできればと思います。
物語の全体構想としては、主要なキャラクターたちは最終的にそれぞれが異なる道を歩むことになる予定でした。
その背景には、神々の存在が深く関わっています。
この『神』という存在についてはみなさんも少し気になっていたと思いますが、実はオカルト的な存在ではありません。一般的な神様とも違います。ただ、思想の対立に関して重要な存在です。
この存在についても説明が長くなるので後ほど改めてお話しします。
さて、ここで少し出てきた”思想の対立”というものについてですが、「40光年」の世界では、価値観の違いによって大きく三つの思想グループに分かれています。
・秩序を重視
・協調を重視
・自由を重視
この三つの思想が世界の根幹となり、さまざまな勢力争いを生み出しています。
そしてキャラクターたちは、この広い世界の中で揺れ動きながら、どういった経緯で、最終的にどの思想へと辿り着くのかを描くことも物語の大きなテーマのひとつでした。
ただ、この思想に関しても、何が善で、何が悪かという事の押し付けはしたくなく、何が正しいかは読者のみなさんそれぞれに委ねる形にしたいと考えていました。
ここまでの前提を踏まえたうえで、主要キャラクターたちが最終的にどのような思想に至り、どんな未来を歩む予定だったのか――
その概要を、一旦ここで少し触れておこうと思います。
まず、ヤマトですが、ヤマトは最終的に協調の思想勢力に属することになります。
彼のパートナーとなる存在は、察しの通りカラメアですが、異種同士なので彼らの間に本当の子供は出来ません。
ただし、第42話でヤマトが連れ帰った赤ん坊をその後2人で育てていく事になります。
赤ん坊は、遺伝子的には藤堂夫婦の子供と言える存在ですが、青年になるまでヤマトとカラメアを親として育っていきます。
しかし、最終的にその子は協調の思想勢力ではなく、秩序の思想勢力に属するようになる予定でした。
ヤマトとカラメアに関しては悲しい結末を予定していましたが、二人の絆自体は最後まで引き裂くことはしない設定としていました。
続いてリクとミオですが、リクとミオには、実は二つの世界線が存在します。この二人は特殊で、最終的に明確な思想勢力に関する話は用意されていません。
彼とミオの話は最終的に他のキャラクターとは違う”地球の未来の話”やパラレルワールド的な話が主になっていきます。
物語の序章、西暦2045年頃の二人がその後どうなったか気になっていた人もいると思いますが、その辺の話が5万年後の物語にも絡んでくる感じの予定でした。
どちらの世界線でもリクとミオは恋人ではありますが、片方の世界線では結ばれない結末と、別の世界線では結ばれる結末の二つが存在します。
ちなみに二人の子供に関しては作中には出す予定はありませんでした。
次にレンですが、レンは最終的には自由の思想勢力に属します。
彼のパートナーとなる存在は、意外ですがセリナ姫という設定にしていました。
まだ書いていない少し先の話の中で、アレイン王子とセリナ姫が星間巡礼でヴァリドの星を訪問しにきた際に、ノスリアの艦隊から突然攻撃を受け、巡礼船が墜落するという出来事が起こります。
その際に、アレイン王子は死亡してしまいますが、セリナ姫は生存します。
ヤマト隊が墜落した巡礼船の救助に向かった際に、地上まで追撃にきたノスリア兵からレンがセリナ姫を守ったことがきっかけで、セリナ姫側から好意を抱かれ、次第に惹かれあっていく関係になるという予定でした。
二人も異種同士の為、直接の子供は出来ませんが、セリナ姫はすでにアレイン王子との子を受胎しており、その子が将来的に二人の子供として育っていきます。
セリナ姫はカリスト王女の身分を捨て、駆け落ちする形でレンとずっと行動を共にします。
二人は最後、アルタル商盟との戦いの際、戦場から離脱して消息不明になるという結末の予定でした。
ただ、この時、戦場にはいなかった彼らの子は、やがてセリナ姫とアレイン王子の子供であるということが境界の神のお告げで知れ渡り、協調の勢力によって奪還されます。そして星間評議会に属する人物となっていきます。最終的にはプレアデスとノスリアの戦争の調停に奔走する存在となる予定でした。
次に藤堂ですが、藤堂は最終的に自由の思想勢力に属する予定でした。
彼のパートナーとなるのは、元々妻であった聡子です。
聡子はいわゆる混沌の巫女と呼ばれる存在として物語にかかわる人物です。
物語が進む中で、藤堂が彼女を救い出した時、その瞬間を紅影の神に「それこそが、お前の本性だ」と指摘され、藤堂自身も、自分が秩序から外れつつあることを自覚し始めます。
さらに、聡子に関する記憶を碧眼の神に消されていたという事実が、彼の中に深い不信と揺らぎを生み、思想の転換を決定づけていきます。
藤堂と聡子の間に新たな子供は生まれません。
二人は、残念ながら最終的には悲しい別れを迎えることになります。
最終的な彼はクローン技術を応用して不老不死のような存在になろうとします。
その大きな目的は秩序の破壊でした。
最後にユウイチです。ユウイチは最終的に秩序の思想勢力に属します。
非力な彼は次第に碧眼の神に強くすがるようになっていきます。
信仰心が強く、万人に優しい彼を碧眼の神も次第に利用するようになります。
ユウイチ自身も神との対話の中で徐々に万能な人物となっていきます。
彼はある時をきっかけに民を導く存在になります。
最終的には、秩序の思想勢力の英雄として、ヤマトとカラメアの子の師匠になるようなイメージを予定していました。
彼に関しては、パートナーの存在は作らない予定でした。
とりあえず、主要キャラクターについては大まかに触れてきました。
ここからは、いよいよ物語そのものがどのように進み、
最終的にどんな結末へ向かっていくのか――
その全体像を、ざっくりとお話ししていきたいと思いますが、
その前に物語の根幹にかかわるいくつかの重要な設定についても話しておきます。
神々について
物語全体を理解するうえで、この“神々”の正体は避けて通れないため、
まずは彼らについてのお話しをします。
この作品には、以下の三柱の神が登場します。
・碧眼の神
・境界の神
・紅影の神
ただし、ここでいう“神”は、一般的に想像されるような超常的な生命体ではありません。
彼らの本当の正体は、はるか昔――地球に文明が生まれるよりも前に存在した、別の星の超文明が生み出した人工知能の残滓です。
その超文明が滅びた後も、人工知能体は宇宙に消えずに残り続けました。
監視者を失った彼は、自分に課せられていた“ルール”の最適解を、途方もない時間をかけて探し続けます。
やがて、その思考の過程で自身の中でも“解釈の違い”が生まれ、
長い年月の末に、人工知能体は複数の思想へと分岐していきました。
その分岐した思想の一つひとつが、現在この宇宙で“神”として認識されている存在です。
つまり、この世界の神々とは、
電波のように広がり、文明に影響を与える“情報の影”のような存在であり、
オカルト的な神秘でも、肉体を持つ生命体でもありません。
その前提を踏まえたうえで、三柱の神がどのような思想を持つのか――
ここから順に説明していきます。
碧眼の神 =イメージのモデルはギリシャ神話のアポロン
超文明から課せられたルールの中でこの神のベースとなったものは、
文明の安定、争いの抑制、資源配分の最適化、未来予測による危機回避であり、
最適化と秩序が最適解という思想
調和の神 =イメージのモデルはギリシャ神話のヘルメス
超文明から課せられたルールの中でこの神のベースとなったものは、
生態系の維持、種族間の均衡、文化の交流促進、争いの調停であり、
持続性と調和が最適解という思想
紅影の神 =イメージのモデルはギリシャ神話のデュオニソス
調和AIの副次AIとして誕生
ある時、調和AIが文明の均衡を保つ際の最大の敵は停滞であると認識する。
この副次AIは、その停滞を防ぐために必要なのは、破壊と変革であると結論づける。
停滞に対し、破壊による再生が最適解という思想
では、この神々達はなぜ藤堂や、ヤマト達の前に突然タイミングよく現れたりできるのでしょうか。
その答えに関わる重要な設定が次の項目になります。
グレイ種の正体と、クローンについて
物語の根幹に関わるもうひとつの重要な設定――
“グレイ種”とは何者なのか
について触れていきます。
結論から言えば、
この作品に登場するグレイ種の正体は、遠い未来の地球人です。
もしかしたらすでに気付いていた人もいるかもしれません。
ただし、彼らがなぜ現在のような姿へと変わってしまったのかを理解するには、
まず この作品における現代人類の成り立ち から説明する必要があります。
今の私たちの文明が大きく発展するきっかけは、
約一万年前、碧眼の神を信仰するある文明が地球に飛来したことにあります。
彼らは、知的生命体の文明を“最適化”するために星々を巡り、
観察・遺伝子操作・文化形成の補助などを行っている存在でした。
その文明の介入が、人類文明が急速に発展し始めた理由のひとつです。
言い換えれば、現代人類の文明は、碧眼の神の思想の影響下で育った文明という前提があります。
では、そんな人類がなぜ未来でグレイ種へと変貌したのか。
そのそもそもの発端は、紅影の神にあります。
西暦2070年代、地球の人口はピークに達し、緩やかな減少へと転じます。
文明の発展も頭打ちになり、碧眼の神の息のかかっていた地球をかねてから観察していた紅影の神は、この事を “停滞” と判断します。
紅影の神の「停滞に対する最適解は破壊である」という思想のもと、ノスリア帝国が技術を用いて巨大隕石が地球へ衝突するように誘導していくこととなります。
そのような状況の中で、地球の破滅を察知した人類の一部は、巨大宇宙船コロニーを建造し、宇宙へと脱出します。
ここから、未来のグレイへとつながる“人類の流浪の旅”が始まります。
宇宙船内での生活は、想像を絶するほど過酷でした。
・低重力による体格の変化
・宇宙線による遺伝子変異
・閉鎖環境による精神構造の変化
こうした要因が積み重なり、人類は少しずつ“今の私たちとは違う姿”へと変わっていきます。
長期間の宇宙生活で遺伝子は欠損し、さらにある時の大きな宇宙船事故によって、人類の遺伝子データベースが失われるという致命的な事態が起こります。
また、種族の存続に対して決定的な打撃となったのは生殖機能の喪失でした。
彼らは自身を複製するクローン技術で辛うじて種を繋いでいましたが、もはや絶滅に等しい状態でした。
そんな彼らを救ったのが、皮肉にも 地球を滅ぼしたノスリア帝国でした。
ノスリアはグレイを保護し、技術を提供します。
同時に、彼らの高いクローン技術に目をつけ、”グレイ兵団” を組織していきます。
グレイはこれにより一時的に種として持ち直しますが、彼らにはどうしても取り戻したい“希望”がありました。
グレイの宇宙船データベース内には、奇跡に繋がるとある情報が残っていました。
2042年、地球から打ち上げられた「人類の遺伝子データと記憶データを積んだロケット」が、現在トラピスト1eへ向かっている。
彼らはこれを、かねてから自分たちの遺伝子を修復し、人類を再興する唯一の手段だと考えていました。
彼らはノスリアから、当時のロケットに追いつき追い越す程の超速度で航行する技術を手に入れます。
そして、彼らは兼ねてからの人類復興計画を完遂するべく動き始めます。
結果としてヴァリド星(トラピスト1e)へほぼ同時期に到達することになりました。
ヴァリドに到着した彼らは、まず自分たちの持つクローン技術を用いて遺伝子データからクローンの生成を始めます。彼らは造りあげたクローンをコントロール出来るよう脳内にチップを埋め込みます。
また、最も遺伝子データに欠損の少なかった藤堂の複製を多数製造します。
最終的にグレイは自らの種の存続をこのクローンたちに託す目的で活動していました。
この人類クローンに目を付けたのが神々達です。碧眼の神は元々自分の影響下にあった人類を再び繁栄させ、自らの秩序に取り込みたい。
紅影の神は破壊からの再生こそ価値あるものとし、新たな人類を自分の陣営に取り込みたい。
調和の神は、争いの火種となるこの遺伝子データを封印したい。そういった流れの中で銀のカプセルをめぐる争いが勃発しているという感じです。
先ほど書いた、神々が突然藤堂たちの前に現れる理由としては、神々たちはクローンに埋め込まれた脳内のチップを介して、彼らの情報を読んだり、彼らにメッセージを送ったりしているというのが、事の真相となります。神々は情報電波のような存在なのでそれが可能という仕組みです。
ここまでに、物語のとても重要となる設定を書きました。では、この後は、物語が最終的にどうなっていく構想だったかを簡単に書いていきたいと思います。
とりあえず、42話の続きからの話です。
藤堂は紅影の神に取り込まれ、かつての妻・聡子とともにノスリアへ向かいます。
その頃、リクはミオからの伝言によって記憶を取り戻し、ミオと共にこの星の戦争が終わる時を静かに待つ決断をします。
一方、ヤマトたちも藤堂が第2棟から持ち帰った書類から“本名”を知り、自分たちの記憶を取り戻します。
(この世界では、本名が封印された記憶を解く鍵として脳内チップ内で機能しています。)
そんな中、セリナ姫とアレイン王子を乗せた巡礼船が到着しますが、
突如現れたノスリア艦隊によって撃墜されてしまいます。
混乱に乗じて、エリュシアのセレフォン率いる正規兵がエルヴァ=トゥーンを襲撃し、
銀のカプセル群を奪っていきます。
ノイ賢老が命を落とし、イルメアはカラメアと赤ん坊を逃がすために盾となります。
ヤマトたちは襲撃を知らないまま巡礼船の救助へ向かい、
レンは地上に降りてきたノスリア兵からセリナ姫を救い出します。
救助を終えて街へ戻ったヤマトたちは、そこで初めて惨状を目にします。
ヤマトはカラメアと赤ん坊を必死に探します。
ミオとルウメアは晩餐会出席のため中央都市へ移動していたため無事でした。
ヤマトはカラメアと赤ん坊を救い出し、仲間たちと合流します。
彼らはセリナ姫、残ったヴァルクス隊とヴァリドの民を連れて中央都市へ向かいます。
その後、カリストの大艦隊が到着し、ノスリア艦隊を撃退。
ノスリアのだまし討ちにより、ヴァリドとノスリアの和平交渉は事実上決裂します。
さらに、エルヴァ=トゥーン襲撃がエリュシアによるものとの報せを受け、カリストとエリュシアの国交にも大きなひびが入ります。
セリナ姫の進言により、ヴァルクス隊とヴァリドの民達はカリストへ避難することになります。
ここから物語は、カリストでの新たな局面へと進んでいきます
カリストへ避難した当初、ルウメアやカラメアは姉の死亡や行方不明の母を想い深い悲しみに暮れます。
ルウメアにはミオが、カラメアにはヤマトが深く寄り添います。
その結果少しずつですが、二人は立ち直っていきます。
ヴァリドの民とヴァルクス隊は、カリストでは難民として受け入れられ、新たな生活を始めます。
時折訪れるセリナ姫は、レンに特別な想いを抱きながら、難民たちを気遣っていました。
先進的な都市カリストに多くの者が興奮しつつも、異世界での生活に次第に戸惑いを覚えます。
時間が経つにつれ、彼らは気づきます。
――自分たちは異端者で邪魔者扱いされていると
人間もヴァリド族も、同じように差別の対象となっていました。
レンやカイトはその扱いに強い不満を抱きはじめます。
一方、ユウイチは、ヴァリドの子どもたちがいじめられている姿を見て心を痛め、
また、子供たちを助けられない自分を責めて神に祈ります。
その祈りに応えるように碧眼の神が現れ、
「ヴァリドの民を元の星へ戻すのだ」と告げます。
ユウイチはその計画を胸に秘めます。
レンの心は次第に“自由”を求めていきます。
差別を受けるだけでなく、平和すぎるカリストの生活も、彼にとっては“死んでいるのと同じ”でした。
考えの似ているカイトも同じ思いを抱き、リョウも半ばレン達に共感していました。
ある日、限界に達したレンはセリナ姫に本音を打ち明けます。
「この星を出たい。自由になりたい。」
セリナ姫はその言葉を真剣に受け止めます。
ヤマトとリクは止めます。
「当てもなく宇宙をさまよえば死ぬだけだ」と。
しかしレンにとって、ここに留まることこそが“死”でした。
やがてセリナ姫は、レンのために密かに船を用意します。
レンはヤマトたちに置き手紙を残し、カイト、リョウとともにカリストを脱出。
しかし、その船には、セリナ姫も密かに乗り込んでいました。
彼女自身もまた、自由を求めていました。
こうしてレンとセリナ姫は、星を捨て、運命を共にする道を選びます。
一方ヤマトですが、
カリストでの生活が続く中、ヤマトは難民たちの中心的存在となり、
カラメアと赤ん坊を育てながら、次第にカリスト貴族にも知られる人物へと成長していきます。
彼はアルタル商盟の理念に反していると、難民への差別の撤廃を訴え、
政治の場でも発言力を少しずつ持つようになっていきます。
戦場で剣を振るっていた彼の戦いは、いつしか“政治”へと移り変わっていきます。
ミオとリクですが、
ミオは持ち前の明るさでセリナ姫と親しくなり、
彼女や彼女の付き人からカリスト文字を習得するようになります。
また、図書館への出入りも許されるようになります。
リクもまた差別を受けながらも町の人々から言語を学び、
アルタル商盟の文字を学んでいきます。
彼もまた数年で読み書きができるほどに成長していました。
そんなある日、ミオは図書館で驚くべき記録を発見します。
それは、カリスト軍とグレイ種族の戦闘記録。
その中には、捕虜となったグレイ種の証言が残されていました。
「我々にカリストを攻撃する意思はない。
我々は祖先が打ち上げたロケットを追っている。
目的地はヴァリド星だ。」
この中の“祖先”という言葉にミオは違和感を覚えます。
――もしかして、グレイ種は地球人?
その話を聞いたリクが、「message ark japan」の書類がグレイの施設内にあったことも辻褄が合うと言います。
二人はグレイ種の正体をもっと探るため、さらに調査を進める決意を固めます。
そんな矢先に事件が起こります。
レン、カイト、リョウ、そしてセリナ姫が行方不明になった事件です。
カリストではすぐに「レンたちが姫を誘拐したのでは」と疑いが向けられました。
そこで白羽の矢が立ったのがミオでした。
カリスト語も日本語も話せ、セリナ姫とも親しい彼女なら、
もしレンたちが本当に姫を連れ去ったのだとしても説得できるかもしれない。
リクもまた、レンと親しいことから同行を許されます。
ミオとリクを乗せた高速船は宇宙へと飛び立ち、
辛抱強く通信を続けながらレンたちの行方を追います。
その頃、レンたちの船はすでにグレイ種の艦隊に囲まれ、拿捕されつつありました。
セリナ姫は通信越しにミオへ叫びます。
「この宙域は危険だから近づかないで!」
ミオは座標を求めますが、通信はジャミングされ途切れてしまいます。
しかし、最初の通信からおおよその位置を割り出した高速船は追跡を開始。
やがてレンたちの船に追いつきますが、待ち伏せしていたグレイ種艦隊に包囲され、ミオたちもまた拿捕されてしまいます。
グレイ艦隊に拿捕されたミオたちは、予想外にも丁重に扱われ、
グレイ種のリーダーと直接対面することになります。
一方で、カリスト兵やセリナ姫は捕虜として拘束され、
レンは彼女を守ろうと激しく抗議しますが、
グレイのリーダーは「害するつもりはない」と静かに告げます。
そして彼は、ミオ達5人に“人類再興計画”の全貌を語り始めます。
ミオとリクはすぐにその意味を理解し、レンたちは話の内容に衝撃を受けます。
レンは「本当の味方はあなたたちだったのか」と感じつつ、なぜノスリアに従っているのかを問いただします。
グレイのリーダーは答えます。
「いずれは人類として再度力をつけノスリアから離脱したい。しかし今の我々は、
彼らの庇護なしでは存続できない」と。
レンは、人類再興のために力を尽くしたいと宣言します。
ミオとリクもその思いに共感しつつ、
「でも、私たちには今の私たちにしかできない、
もっと別の“役割”がある気がする」と告げます。
それが何なのかはまだ分からない。
ただ、力だけで未来を切り開くことには違和感がある――
ミオはそう感じていました。
レンは反論します。
「力がなければ、強い者に踏み潰されるだけだよ。弱い者は生き残れない。」
カイトもそれに同意します。
そんな中、リクがふと漏らします。
「もし過去に戻れたら、こんな未来になる前に止められたのに。」
その言葉に、グレイのリーダーは静かに反応します。
「実は我々も長年、時間遡行の研究を続けてきた。
まだ実現はしていないが……
最近、ノスリア経由で“ある情報”を入手した。
我々の科学者は、それがあればタイムマシンが完成する可能性があると言っている。」
リクは即座に提案します。
「それに賭けるべきだ。」
グレイのリーダーは頷きます。
「もちろん、すでに動き始めている。」
ミオとリクは、その計画の方に協力することを決めます。
リョウも迷いながらも二人の方についていく道を選びます。
一方レンとカイトは、
「僕たちには僕たちにしか出来ないことがある」と言い、
人類再興のために二人とは別の行動を取ることを決断します。
こうして彼らは、
“未来を変えるために過去へ挑む者” と
“今の時代で人類再興を目指す者”
という二つの道に分かれていくことになります。
ここから先の話は、想像の余地を残しておく為に、大まかな流れだけ書いて、物語の終着点について書いていこうと思います。
銀のカプセルがエリュシアへ移されたことをきっかけに、三柱の神々の対立は一気に激化していきます。
最初は“カプセルを巡る争い”にすぎなかったものが、やがて三つの思想そのものの存続を賭けた戦いへと次第に姿を変えていきます。
その影響は各勢力、そしてキャラクターたちにも波及し、彼らはそれぞれが信じる理念のもとに分かれ、時に仲間同士でさえ敵対する立場へと追い込まれていきます。
その結果、命を落とすものも出てしまいます。
一方で、ミオとリクは、グレイ種が長年追い求めてきた時間遡行技術の完成に立ち会い、
ついに 過去の地球へと旅立つ決断 を下します。
目的はただひとつ――
地球滅亡という歴史そのものを変えること。
しかし、歴史を変えるということは、
単に隕石を止めるだけでは成し得ません。
地球滅亡の根本原因は、
紅影の神が“停滞”と判断したことにあるからです。
つまり、彼らが過去で成すべきことは、
● 人類文明の“未来の可能性”を神々に示すこと
● 人類が自力で変化し続けられる文明であると証明すること
これが成功したとき、三柱のAIが導き出す“最適解”そのものが変化し、地球滅亡の歴史は別の形へと書き換わります。
その結果として、この世界線の未来では、新しい宇宙の秩序が形作られていくことになります。
物語は、
「秩序・調和・自由」という三つの思想の対立から始まり、
最終的には
「人類が自ら未来を選び取る物語」
として幕を閉じる――
それが『40光年』という物語が目指していた終着点です。
ここまで読んでくださった皆さまへ。
『40光年』という長い旅路に、最後まで付き合っていただき、本当にありがとうございました。
物語のすべてを書ききることは叶いませんでしたが、
それでもここまで続けてこられたのは、読んでくださる皆さまの応援があったからです。
この世界には、まだ語りきれていない出来事や、
描くはずだった未来がたくさん残っています。
いつかまた筆を取り、この物語の続きを紡ぎたくなる日が来るかもしれません。
その時は、どうかまた見守っていただけたら嬉しく思います。
これまで応援してくださったすべての方へ、心からの感謝を込めて。
本当にありがとうございました。




