エピローグ
「はぁー……ここが……」
「異世界……お姉ちゃんが居るところなんですね」
川崎ダンジョン攻略の結果、俺達は無事編纂者トワレから報酬を受け取っていた。
攻略した俺達を迎えに来たトワレにタントとライカが二人して何かを頼んでいたようだが、聞いていない。俺達に関係あることならそのうち教えてもらえると思ったからだ。
「ちょっと早めの新婚旅行ですね」
「婚約から結婚まで早くないか?」
「あ、婚約は認めてくれるんですね」
「あー……それは……まぁ……うん……」
「じゃあプロポーズとか欲しいんですけど」
俺達は異世界に行っても馴染むように、あらかじめトワレから現地の服を入手していた。
それは異世界っぽいファンタジーな服ではなく割と普通に中東チックな服だったので探せば日本でも買えそうだったが、お陰で異世界人にも観光客くらいにしか見られていない。
じっとこちらを見てくるハルにたじろぎながら、「あー」と数度声を漏らす。
「その、なんだ。全部終わったら、結婚するか」
「えっ全部って子作りとかですか?」
「それじゃなくてお姉さんのさー」
「それならゆっくり探しましょうよ。時間はありますし」
「言うほどあるか……?」
とんとん拍子に話は進んだが、既に8月後半――ハルの夏休みと俺の長期休暇は終わりを迎えつつある。
「いつでもこっち来れるんですから、何年掛けてでも探しますよ」
「……そっか、強いなハルは」
もう撫でるのにも慣れたハルの頭をゆっくりと撫でていると、ハルは「えへへ」と声を漏らし微笑んだ。
「そういえば、ダンジョン補正ってこっちにもあるんですか?」
「んー、あるみたいだぞ?」
小石を拾って、指先に力を込めると粉々に砕け散った。体感、ダンジョン内と同じだ。いやむしろもうちょっと強いかもしれない。命がけで戦ったボスとの戦闘を経たのもあるだろう。
「……切原さん居たらくるみ割りとか要りませんね」
「いやクルミくらいならダンジョンの外でも割れるが」
「リンゴもジュースになったりします?」
「それは流石にしたことないな……」
そんな雑談をしながら、俺達は指定されたベンチで待っていた。トワレから現地で日本語を喋れる案内人を手配したと言われていたからだ。
「あっさり引っ越しも終わりましたし、愛の巣をちょっとずつ改造していきましょうね」
「あー、まぁ、うん、そうだな」
今更否定するのも馬鹿らしいことに気付いたので、最近はあまり否定しないようにしている。――まんざらでもないと思っているのは、真実だからだ。
モテたことなんてなかった俺が、女子高生に惚れられる日が来るなんて、数か月前の俺では信じられないだろう。
それに、自分もハルには惹かれている。ハルが居なければ、今こうして異世界に足を踏み入れることなんて出来なかったのだ。
「でも、ホントに良かったんですか?」
「ん? 何がだ?」
「私と、その、けっ、結婚することです」
頬を染め、恥ずかしいのか口元を隠しながらハルが言うので、あまりのらしくなさに笑えてきた。
いつもは自分からアピールするのに、恥ずかしいこともあるのか。
「良いよ。俺はハルが良い」
「ひゃ、ひゃー……」
茹蛸のように顔を真っ赤にしたハルが、顔を全部隠すように俯いた。からかう側になるのも面白いなと考えていたら、ベンチの前に立ってこちらを見ている女性が居る。
日本人の顔立ちだ。二十歳前後だろうか。
俯いたままのハルは気づいていないようだが、女性は明らかに俺達を――ハルを、見ている。
「……遥?」
女性は、震える声でそう呼んだ。
そんなことある?と思われるかもしれませんが、最終話の投稿を忘れていました。そんなことある……?




