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第5話 ダメ押しです。

 私とレナート、マヤの三人でカリカがいる寮まで来た。

 管理人さんの姿は見えないので、鍵は借りられそうにない。

 そんなわけで、みんなでとりあえずカリカの部屋の前にやってきた。


 コンコンとノックをするけど返事はない。

 みんなで中の気配を探ろうとするけど何も感じなかった。


「カリカはいないようね。ここが彼女の部屋ね」

「やっぱり鍵を管理人さんを探して借りて——」


 マヤが向かおうとするのを制した。

 レナートも、気付いたらしい。

 何らかの魔法がドアにかかっている。


魔法解呪(ディスペル・マジック)


 早速魔法を解除すると、ドアは音もなくスッと開いた。

 入るとき、もう一度ノックをしてマヤと私で先行する。

 やはり室内には誰もいない。

 ベッドにも温もりはなく、部屋に気配は残っていなかった。 



 部屋に入りそれぞれが思い思いに、家捜しを始めた。

 うう、ごめんね。カリカ……。

 後で謝るから許してくれるといいけど……。


 クローゼットにはカリカの私服が何枚かある。

 どれも控えめだけど、センスのいい可愛らしいデザインのものばかりだ。

 うーん、改めて手に取ると……こんなに腰は細いのに胸の部分は余裕があって。

 くっ。

 などと思っていると……。


「ロッセ、これを……」


 レナートが一冊の本を手に取り声をかけてきた。


「これは全職階級用の魔道書。やはり……」

「貴女は、何の呪文か分かりますか?」

「ううん、私には読めない文字で書かれているわ」


 魔術ギルドで売ってた全職階級用の魔術書だ。私も使っている。

 誰に製作を依頼され誰に売ったのか覚えていないと言っていたけど、それはカリカだったということだ。

 机の上に、同じ背表紙のものが何冊かある。


 通常、一つの職種に特化した魔術書を使う。

 この魔術書は特別なもので、どんな職階級でも使えるものだ。

 魔術書には、少しだけ見慣れた文字で呪文が記載してあった。

 カリカによる可愛らしい筆跡だ。

 しかし、ほとんどは私が読めない文字で書かれている。

 読めない文字だけど、こちらもカリカの筆跡なのがわかった。


「ギルドのお婆さん、誰に依頼されて作ったのか分からないって言っていましたね。そして、お婆さんも眠り病に……」


 マヤが言う。


 読めないと言ったものの文字に見覚えがあった。

 以前、グラズと魔法を開発したときにちらっと見えた彼の呪文書……悪魔が用いる文字に似ているような。

 そういえば、グラズ、今何をしているのかしら?


「おやロッセーラ様、こちらにいらっしゃったのですね。お久しぶりです」


 なんと……グラズの声ではないか。


「グ、グラ……じゃなくてクラス! どうしてここに?」

「貴族の寮に行ったのですが姿が見えないので、ロッセーラ様の残り香……といいますか痕跡を辿ってここまで来ました」


 残り香って……あのね。

 前のように、グラズは直接私の頭の中に話しかけてくる。


『実は、どうも学園の内部から嫌な雰囲気を感じまして。急いで来たわけです』


 どうやら彼は裏門の魔除けの結界が弱まっているのを感じ、そこから学園内に侵入したようだ。

 私は手短に、カリカが怪しいことを伝える。


『なるほど……。カリカ様には特に何も感じませんでしたが、うまく隠蔽されていたのかもしれません。魔力はかなり大きなものを感じていたのですが』


 グラズに気付いたのか、レナートがやってくる。


「おや、これは執事の、クラスさん?」

「これはこれは、レナート殿下ではありませんか」


 バチバチと両者の間に稲妻が走っているのが見えたような気がした。

 館で顔合わせするときも、何かと衝突するふたりだったけど、ここでもその様子は変わらないようだ。

 しかし、今はそれどころではない。


「館での仕事はどうされたのですか?」


 マヤまで参戦しようとするのでわちゃわちゃになるのを阻止すべく、私はグラズにカリカの魔術書を見せる。


「ねえ、これなんだけど、どう思う?」


 グラズはふむ、といってのぞき込み腕を組んだ。


『これは悪魔が用いる魔法ですね。この魔術書の持ち主に非常に興味があります』

『カリカのものよ』

『なるほど。であるのなら、ほぼ悪魔との関係があったのは間違いないと考えます』

『そう……』


 ダメ押しだ。

 もう、こうなってはカリカに事情を聞くしか無い。


『それに、この部屋……仕掛けがありそうですね』

『仕掛け?』


 周囲を見渡す。

 確かに何か違和感があるけど、その正体が分からない。

 うーん、と考え込む私に、レナートが言う。


「なにやら外が騒がしくありませんか?」


 そういえば、なんだか外から、ワーワーという人の喧噪が聞こえる。

 カーテンを開け、窓の外に目をやると裏門の辺りが目に入った。


 そこで数名の衛兵の人達が、剣や槍を構え門の外に出ていく様子が見て取れた。

 何人かは、防衛するように盾を構えて残っている。

 何かあったのだろうか?


 そこに外から飛び込んで来た人がいた。

 ヴァレリオだ!

 一旦外に出た衛兵達も戻って来て、裏門を閉めようとしている。


「我々も外に出てみましょう」


 私達は一旦、カリカの部屋を後にし、私達は学園の裏門に向かった。

お読み頂きありがとうございました。

もし続きを読みたいと思って頂けましたら、ブックマーク頂けると励みになります。


今後とも、よろしくお願いします。

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