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第6話 合流します。

「ロッセーラ……目が覚めたのですね。よかった……」


 裏門に駆けつけると、ヴァレリオが声をかけてきた。

 少し疲れた様子だったが、私を見た途端ぱっと顔が明るくなったように見える。


「うん。もう大丈夫よ」

「そうか。よかった」


 そういってヴァレリオは私の手を取った。

 私は……いろんな人に心配をかけてしまっていたんだ。

 このお返しは何か考えないとね。


「ごめんなさい。心配かけて」

「いや、元気になったのなら……それでいい。色々話したいことはあるが——」


 彼はレナートの方を見て言った。


「この学園の外は、操られた王都民と、悪魔共に囲まれている」

「ふむ、妙な気配を感じたのですが、そういうことなのですね」


 ヴァレリオは、はじめ正門の方から魔法学園内に入ろうとしたようだ。

 しかし、あまりに操られた王都民の多さと、完全に閉じてしまった門を見て早々に諦めたそうだ。

 裏口の存在に気づき、そこにも多少の王都民がいたものの、閉じられていないようなので突撃したのだという。

 レナートは、真剣な顔をして言った。


「ロッセーラ。それに兄さん、よく聞いてくれ」

「どうしたの?」

「実は王城の方も襲われているんだ。騎士団は籠城する方針のようだ」

「籠城? そんな消極的な……彼らなら操られた王都民もろとも切って捨てるのも容易だろうに」

「兄さん、王太子殿下からの伝言だ。『今起きている騒ぎを夜明けまでに解決せよ。さもなくば、夜明けと同時に王都街と魔法学園に騎士団を送り込む』のだそうだ」


 レナートの顔色が変わった。

 一旦この問題の事態解決は、レナートとヴァレリオに任されたらしい。


 夜明けまでに解決できなければ、悪魔もろとも王都民に攻撃を与える……。

 そして、その攻撃対象は学園も含まれる。

 解決の目処(めど)はたっていないものの、時間はまだあるのに二人の表情は暗い。


「ねえ、どうしたの?」


 二人は顔を見合わせ、レナートが口を開いた。


「ロッセ。おそらく騎士団に指示をしている兄……王太子殿下は、私たちを試しているのでしょう。君を、守れるかどうか」

「どうして私が出てくるのよ?」

「騎士団がこの魔法学園に出張るとしたら、その目的はただ一つ。ロッセ、貴女の確保です。カリカさんも対象じゃないとおかしいのですが、どういうわけか貴女だけが、騎士団の目的のようなのです。彼らは目的のために犠牲を厭いません」


 そっか……。

 騎士団はカリカに興味を持っていない。

 恐らく王家側の考えもそうだろう。


 事件を解決し、私が騎士団に出頭すれば彼らはここにやってこない。

 カリカが……例えば何か悪いことをしていても隠し守ることができるのかもしれない。

 もちろん、カリカには何か事情があると私は信じている。


「ロッセ、何か変なことを考えていませんか?」

「な、なぜ?」

「気のせいならいいのですが。私たちは貴女を騎士団に渡したくありません」


 レナートは鋭いな。

 どうして私の考えていることがそんなに分かるのだろう?


 彼らは私を守ろうとしてくれている。

 その点においては、レナートとヴァレリオは過去のわだかまりなどを超えて力を合わせてくれるのだろう。

 二人から、強い意志感じる。

 でも……私にとってはカリカも大切だ。


「ロッセーラ様! こちらでしたのね」


 そこに、アリシアとロレットがやってきた。

 アリシアは、恨めしそうにマヤの方を見る。 


「マヤさんに追い出されて校舎の方にいたのですが……。胸騒ぎを感じまして」

「そう。ありがとう。それに、ロレットも来てくれたの?」


 アリシアがチラッ。チラッと私に視線を送るのは、慰めて欲しいからなのだろう

 まあ、そんなことしないのだけど。

 軽くスルーする。


 しかし、ロレットの方は何やら深刻そうな顔をしている。


「はい……エンリィをはじめ、生徒の多くの姿が急に見えなくなって探しているのです。そうしたら、この騒ぎに気付いて……」


 彼の話を聞くと、レナートが青ざめた顔をして「これはマズイですね」と言った。

 レナートがそんな顔をするのは珍しく、一気に不安になってくる。


「レナート、どういうこと?」

「魔法学園内での異変はきっともう始まっている。王都民たちも含め、すべての原因はこの魔法学園内にある」

「えっ……?」

「私の勘が正しければ、ですが、おそらく生徒達も同じように……」


 今、この状況は悪魔によって引き起こされている。

 だとしたら、悪魔であるグラズなら何か知っているのかも。


「そうですね。悪魔は倒しても構わないでしょう。その結果、生徒や王都民が正気に戻るなり、眠り病のような状態になるならよし。そうでなければ、気絶でもさせるか……命を奪うか」

「だめよ、それは」


 この状況で生徒はともかく無数にいるという王都民の異変。

 朝までに収拾できるよな数ではないのかもしれない。

 だったら、根本的な原因をなんとかするしかない。


「お菓子を配ったカリカ……カリカを見つけないと。彼女なら何か知っているわ」

「でも、どこに? 彼女の姿は寮にありませんでした」


 そのとき、グラズが私に目配せをした。

 もしかして、もう何か手を打っている?

 こんな状況なら、どんなものにでも縋りたい。

 以前やりとりした、念話での会話でグラズが話しかけてきた。


『ロッセーラさま。カリカ様の部屋の仕掛けを、今ベア吉が調べているところですが何かありそうです』

『……さすがね。ありがとう。助かるわ』


 ああ。一筋の光明が見えたような気がした


『……あ、は、はい……カリカ様の部屋を調べるべきです』


 なるほど……とにかくカリカに会って事の真相を聞く必要がある。

 どんな事情があるせよ、この事態を止めなければならない。

 私は皆に聞こえるように声を張り上げた。


「カリカの部屋、きっとあそこにまだ何かがあると思う。もう一度調べるため一旦戻りましょう!」

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