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へべれけ!  作者: へべれけ
第2話
7/72

02-a1

真紅のドレスが宙を舞い、その手に握られたロッドが振り回されるたびに、怪物の触手が掻き消される

しかし、怪物の体から新たな触手が次々とはえて、茜に向かって伸ばされていく


「何だこれ?」

あまりにも非現実的な光景に、俺はただ呆然とその場に立ち尽くした


着地の瞬間を狙って触手が迫る

バックステップで回避した刹那、その場所に触手が突き刺さる

初めは茜が圧倒していたが、 今は化物の方が押しているように見える


"触手の数が増えている…?"

初めは数本しかなかったはずの触手が、今や10本近くに増えていた


最初、茜は怪物の近くで戦っていた

そして、怪物の本体にも何回か攻撃を当てていた

しかし今、茜は怪物からある程度距離を取って戦っている

触手に阻まれて本体に接近できないのだ


"このままではマズイ!"直感がそう告げる

だがどうする?

今の俺に俺に何が出来る?


触手の一本を回避した刹那、その影から別の触手が迫る

辛うじてロッドでガードするが、その反動で後方へと弾き飛ばされる!

その姿を見た時


「茜!!」

そう叫んで、俺は駆け出していた


━━━━━━━━


「…え?」

誰かに呼ばれた気がした

しかし、直ぐにその考えを振り払う


"そんなはずはない"

なぜなら、この結界の中には、私と妖魔しかいないはずだから

それに、今はそんなことを気にしている場合では無い

この厄介な触手を何とかしなければならない


「!」

"まただ、また呼ばれた!やっぱりこの結界の中に誰かいるんだ…でも、何処に?"

触手をよけて跳躍する

上空から見下ろすと、妖魔のすぐそばを何かがこちらに向かってくる


「あれは…!」

着地と同時に地面を蹴って一気に妖魔との距離を詰める

触手を紙一重でかわして"それ"を左手で持った瞬間、全身に電流の様な衝撃が走った


「茜、後ろだ!」

一瞬動きが止まるが、その言葉に反応して体が動く

既の所で触手の攻撃をかわし、大きく跳んで妖魔から距離を取る

この距離だとあの触手は届かないのか、怪物は攻撃してこない


茜は左手に抱えた"それ"を見た

"それ"は、間違いなく数日前に茜が拾ってきた小動物だった

茜は動揺する心を落ち着けて、漸くのことで言葉を絞り出した


「君は…喋れるの?」


━━━━━━━━


「え…俺の言葉がわかるのか?」

俺の問いかけに茜はこくりと頷く


"どうして…?今までさんざん話しかけても判らなかったのに。なんで急に?"

いや、今はそんな事を考えている場合ではない


「逃げよう!いますぐこの場所から離れるんだ!!」

だが茜は首を振る


「だめだよ…あの人を助けなくちゃ!」

「あの人…?」

茜がロッドで怪物を指し示す


「あの怪物が一体何だって…」

そこまで言いかけてあることに気づく


それまでぼやけていた怪物の輪郭が、今ははっきりと見えた

それだけでは無い、その怪物の内側に"何か"がいるのが見える


「あれは…人か?」

「そう、妖魔に取り込まれているの」

「妖魔?」


「妖魔は人を取り込んで、その命を吸い取るの

このままだと中の人が死んじゃう!

ううん、それだけじゃない

もし、妖魔が結界の外に出たらもっと大変な事になる!

だから、私がなんとかしなきゃ!」

「だからって、お前が…」


「大丈夫だよ、今までにも何度か倒してきたから。君は、ここで待ってて」

そう言って俺をその場におろすと、茜は妖魔に向かって行った


"ふざけるなよ!震えてたじゃないか!!"

当然の話だ、妖魔と戦う姿を見ていると信じられないが、茜はまだ小学生の女の子なんだ

あんな化け物を前にして、怖くないはずがない!


「くそ!俺には何もできないのか!?」

いや、違う!

考えろ!考えろ!!考えろ!!!

何でもいい、どんな些細な事でもいい!

見つけるんだ!何か俺にも出来る事を!


━━━━━━━━


茜が宙を舞い手にしたロッドを振るごとに、妖魔の触手が掻き消される

しかし、触手がかき消されるごとに、新たな触手が妖魔の体から生えてくる為に、むしろ触手の数は増えてゆく


そんな状況を、端から見ていた俺はあることに気づく


妖魔から伸びる触手の中に、細い光る糸のようなものがあった

その糸は妖魔の体の上部にある光る球体から伸びている

その球体から伸びる糸は触手の方向だけではなく、地面の方にも伸びていた

そして、新たな触手が増えるとき、地面のほうに伸びる光の糸もまた増えていた


そういえばこいつ、ずっと移動していない

それに、こっちが距離を取った時も追ってくることはなかった…


「もしかすると…」

俺は茜に向かって走り出した

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