09-a1
「なあなあ、アレ、どう思う?」
「アレ、とは?」
「止めようよぉ〜」
琴音、京子、翠の3人は教室の扉に半身を隠しながら廊下の先を見つめていた
その視線の先には茜と葵が会話をしている
「あの二人、いつの間にあんな関係になったんだ?」
「あんな関係って、どんな関係だよ」
「ねえねえ、止めようよぉ〜」
最近になって茜と葵は急に仲良くなった
だからと言って茜が3人と疎遠になった訳では無いのだが、3人にとっては気になる出来事である事に変わりはなかった
「やっぱり、アレかな?」
一度教室の中に引っ込んで、琴音が顎に手を当てながら思案顔で呟く
「だから、アレって何なんだよ」
すかさず京子が突っ込む
「ねえってば」
翠は何時茜達に見付かるかと気が気ではない
「ほら、漢同士が夕暮れの河原で殴り合って友情が芽生える的な?」
「茜も葵も女だ!」
「だからねえ、止めようよぉ〜」
そして又3人は扉の影に身を隠しながら、茜と葵の様子を伺うのだった
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「ねえ、何なのアレは?」
葵は敢えて視線を送らずに、顎先で3人の方を指し示す
「あ、あははははは・・・」
そんな葵の問いかけに、茜は笑う事しか出来なかった
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その日翠は、一日中茜の姿を追っていた
もちろん、琴音と京子が二人を追いかけ回していたというのもあるが、それ以上の説明の付かない何かを翠は感じている
"なんだろう?胸がモヤモヤする"
茜と葵が楽しそうに話しているのを見ると、翠は何故か少し不安な感じがした
それは今迄、翠が感じた事の無い感覚
そんな感覚に、翠は戸惑っていた
「ねぇ、もう本当に止めよう。こんなのダメだよぅ」
「あゝ、確かにそうだな。友達を尾行するなんて、余り褒められたものじゃ無い。だが、其れでも私達はやらなければならないんだ」
翠の言葉に京子が答える
「どうして?」
「"どうして?"か・・・。さあ?どうしてだろうな。ただ、なんて言うかこう・・・胸がモヤモヤするんだよ」
翠の疑問に京子は遠い目をして答える
「胸がモヤモヤ?」
そんな京子の答えに翠はハッとした、何故ならそれは翠自身も感じていた感覚だからだ
「もしかしたら、唯のヤキモチなのかもな」
「ヤキモチ?」
「そう、ヤキモチ。私達は小さな頃から一緒だっただろ?」
「うん。幼稚園の頃からずっと一緒だったよね」
「そんな、そんな長い間一緒だった友達が、つい先日現れた様なヤツと連んでいる。しかも、長年連れだった私達を差し置いてだ」
そう言って京子は翠を見つめた
「でも・・・でもそれは・・・」
「そう、それは私達の我儘だ」
京子が翠の言い淀んだ言葉を引継ぎ、そして二人は黙り込む
そんな沈黙の中、翠は自分の胸の中のモヤモヤについて考えた
"ヤキモチ・・・か。でも、ちょっと違う気がする・・・"
「動いた!」
その時、廊下の角から茜達の様子を伺っていた琴音が合図を出す
京子と翠は一瞬視線を交わすと琴音の後を追いかけた
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「はぁ・・・まったく、アレで尾けているつもりなのかしら?」
廊下の角を曲がる際に、視線だけ投げて後ろを確認すると葵は一つ溜息を吐いた
「多分、気になるんだよ。葵ちゃんの事が」
茜は葵と並んで廊下を歩きながら、葵の疑問に答える
「私の事?茜の事では無くて?」
「うーん、私と皆は付き合いが長いからなぁ。私が言うのも何だけど、私達はお互いになんとなく分かり合っていると思うんだよね。だけど葵ちゃんの事は殆ど知らないから、葵ちゃんがどんな女の子なのか知りたいんじゃないかな?」
「どうして?どうして、私の事を知りたがるの?」
「それは、葵ちゃんとお友達になりたいからだと思うよ」
「私と?」
葵は、茜の予想外の答えに驚いて聞き返した
「そうだよ」
「何故?」
「最近、私達が一緒にいる事が多くなったからじゃないかな?」
「・・・でも、それなら私に茜を盗られたと思うんじゃないの?」
茜の言う通りなら、私は茜達のコミュニティに進入した異物の筈だ
で、あるならば彼女達は私を排除しようとする筈
少なくとも私が同じ立場ならそうすると、葵は考える
「葵ちゃんに私を盗られるか・・・確かにそう見えるのかな?
でも、私を葵ちゃんに盗られると思ったのなら、直接私に言ってくると思うんだよね。そうせずに私達の後を追いかけて来るって事は多分、葵ちゃんの方に興味が有るんだよ」
「どうしてそう思うの?」
「言ったでしょう?付き合いが長いって」
そう言って、茜はニッコリと笑った




