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へべれけ!  作者: へべれけ
第7話
39/72

07-c

「そんな・・・」

葵は、妖魔が結界から飛び去るのを唯黙って見ていた

本当は止めなければなら無かった筈だ

例え、どんな犠牲を払おうと・・・

だが実際には、葵は妖魔が飛び去るのを唯黙って見ているだけだった


「何で・・・私は・・・」

葵は、混乱する意識の中で誰かに呼ばれた気がした


━━━━━━━━


「葵!」

「葵ちゃん!」

妖魔が飛び去った後、葵が急に惚けた様になった

俺と茜が呼びかけても反応がない


「クソ!茜、やれ!」

「え、でも・・・」

「時間が無いんだ!」

「・・・ごめんね、葵ちゃん!」

そう言うと、茜は葵の頬を張った


━━━━━━━━


「あ・・・私・・・」

「気がついたか?」

「大丈夫?」

葵が気が付くと、茜とへべれけが心配そうに顔を覗き込んでいた


「そうだ!妖魔は?」

「結界の外に出て行った」

葵の問いにへべれけが答える


「どうしよう、大変な事になる・・・」

「大変?一体どうなるんだ?」

「死ぬわ、大勢の人が死ぬ」

葵の答えに、へべれけの顔が引き攣る



「どうしよう、私は一体どうしたら・・・」

身体の震えが止まらない、考えが纏まらない


何かをしなければならない、でも何をすれば良いのか解らない

焦燥感が不安と恐怖に変わって心を埋め尽くして行く

私は一体どうしたら・・・そんな思いが頭を埋め尽くそうとした時


「俺と一緒に来い!」

へべれけの声が聞こえた


「え・・・?」

「このまま放っては置けないだろう?だから彼奴を倒す。だけど、俺と茜だけでは多分無理だ。だから葵、お前の力を貸してくれ!」

葵は目の前の小動物をマジマジと見つめた

葵の目に映るその小動物は、最早言葉を喋る唯の愛玩動物では無くなっていた


「どうした?此の期に及んでまだ勝負に拘る気か?」

へべれけの問いかけに、葵は黙って首を振ると、差し出されたその小さな手を握った


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