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へべれけ!  作者: へべれけ
第6話
30/72

06-a2

職員室を飛び出した俺は、全速力で廊下を駆け抜ける

背後で何かを倒した様な音がした後、職員室のドアが凄まじい勢いで開き、先ほどの女性教師が飛び出して来た


「待ちなさい!」

チラリと後ろ振り返ると、彼女は箒の様なものを振りかざし叫びながら後を追いかけてくる


"まずい、まずい、まずい、まずい、まずい!

なんか、話が大きくなって来てる!"

そんなことを考えながら曲がった廊下の先には階段があった

下に降りる階段は数段で終わっており、そのすぐ先には扉があって、その扉は閉まっていた

俺は否応なしに階段を駆け上る

外へ逃げ出す道が遠くなり、後ろからは箒を掲げた女性教師が追いかけてくる


"どんどん深みにはまってゆく〜"

俺は半分泣きそうになりながら、学校の廊下を走り抜けた


ガラガラと音を立てて教室の廊下側の窓が開いていく

そこから、授業中であるにも拘らず何事かと子供たちが顔を出す


突然前方の教室の扉が開き、中からジャージ姿の男が顔出した

その前を俺が全力で簡走り抜ける


「うぉ!?なんだ?」

扉から顔出した男性教師が、驚いて声を上げた


「先生!其奴を捕まえて!」

女性教師が教室の扉から顔を出した男性教師に叫ぶ


「藍子先生?どうされたんですか、一体」

「ネズミが!とても大きなネズミが出たんです!」

「ネズミですって?今のがそうか!」


男性教師は一旦教室に戻ると、生徒達に向かって言った


「ほらそこ、窓を閉めろ!先生はこれから少しやる事が出来たので、静かに自習しているように」


━━━━━━━━


この突然の状況に慌てたのは大人たちだけではなかった

騒ぎは少しずつ、しかし確実に学校中に広がっていった


そしてここ、茜の教室の中でもちょっとした騒ぎになっていた

ある子は外で一体何が起こったのかと隣の席の子と話し合い、また別の子は授業が潰れるとはしゃいでいる


「茜ちゃん、茜ちゃん」

翠は、近くに座っている茜に小声で話しかけた


「何?翠ちゃん」

「何か騒がしくない?」

「え?あ、うん、そうだね」

「何かあったのかなぁ?」

「さ、さぁ?」

翠から目をそらしながら茜は答える

茜には今、教室の外で何が起こっているかわからなかった

しかし、騒ぎの原因に心当たりがないわけでもなかった


"へべくんが学校に来るのってたしか今日だったよね?って事は、この騒ぎってやっぱりへべくんだよね・・・"

茜は、とても小学生とは思えない様な疲れた表情でこめかみを押さえた


━━━━━━━


俺は追い詰められていた

物理的ににも精神的にも

そもそも、あそこで上に逃げたのが一番の間違いだった


あの後、別の教師たちも混じっての追い掛けっこが始まった

初めは、隙を観て下に降りる階段に向かおうとしたが、追手の数が増えるにつれてそれも難しくなっていった

結局俺は、上へ上へと逃げて行き

今や屋上へ続く扉の前に追い詰められていた


「私はこちらから回り込みます、藍子先生はそちらからお願いします」

ジャージを着込んだ、いかにも体育教師という感じの男性教師が言った


「は、はい!」

最初に俺を追いかけた胸の大きな女性教師が箒を胸元で握り締めながら答える


"なるほど、この人は藍子って名前なのか"

どうにもならない状況下、軽い現実逃避の代わりにぼんやりと、そんなことを考える


この体では後ろの扉を開けることはできない

それ以前に鍵がかかっている可能性もある

目の前の階段には別の教師たちが詰め掛けていて、そちらから逃げることもできそうにない


"これは詰んだわ"

俺は心の中でそうひとりごちた

絶体絶命とは当にこの事だろう


"だったらせめて・・・"

俺は覚悟を決めると、藍子先生と呼ばれた女性教師の胸元へダイブした


━━━━━━━━


結局、俺はそのまま捕獲された

その後、俺がしている首輪から茜の名前が挙がり、茜は職員室に呼び出されてお説教をされた後、俺が保護されている保健室に来る事になった


ちなみに俺がなぜ保健室にいるかというと

この学校にはウサギ用の飼育小屋が有るらしいのだが、同じウサギでも新しいウサギを入れる際には、ある程度慣らした後に入れないと喧嘩して怪我をする事がある

種類の違う動物同士だとその確率は高くなる訳で、その様なリスクを負うよりも、俺を隔離した方が手っ取り早いと言う判断らしい

まあ今回の場合、首輪のおかげで茜の事が直ぐに判ったというのも要因としては大きいだろう

そんな訳で、俺はウサギ用のキャリーケースに入れられて保健室で茜が来るのを待っていた


"一応、ここまでは想定内か"

茜が来るまでの間、キャリーケースの中で状況分析する


もともと計画自体に無理があるというのは判っていた

だから、失敗した際の対処法もある程度用意していたのだ

本来は、失敗した場合はそのまま校外へ脱出する手筈だったが

最悪、学校内で俺が捕まった際の茜の言い訳等の準備も事前にしていた

名簿を見ることすら出来なかったのは痛い所だが、もはやどうしようもない

そんな事を考えていると保健室のドアが開いて茜が入って来た




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