↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
へべれけ!  作者: へべれけ
第4話
19/72

04-a2

空き地の片隅、雑草の茂みの中にそれはあった


砂利と小枝で底上げされた、水はけの良い基礎の上に小さめのプラスチック製衣装ケースが置かれていた


その上には緑色のビニールシートがかけられ、保護色の様になっている

又、衣装ケースの中には重石とクッションを兼ねたタオルや端切れが敷き詰められていた


それはちょうど子供の頃に遊びで作った、秘密基地の様だった

いや、実際に子供の頃に遊びで作った秘密基地そのものだった


俺が初めてこの空き地を見つけた時、たまたまこの空き地の近くにあったゴミ捨て場にプラスチック製の衣装ケースが捨ててあった

そこで俺は、ほんの気まぐれでその衣装ケースを空き地の中に運び込み、ちょっとした隠れ家を作ろうとしたのだ


初めは、そのまま空き地の中に衣装ケースを放置したような状態だったので、ケースを見つけたゴミ回収の人が持っていくだろうと考えていた


しかし、 実際にはそんなことはなく

衣装ケースは空き地の中に放置されたままだった

そこで俺は、空き地に落ちていた資材と、ゴミ捨て場にあった廃品からこの秘密基地を作ったのだ


「秘密基地・・・うん!良い響きだ。やっぱり秘密基地は漢の浪漫だよな」

そう言うと俺は、秘密基地の方へ近付いて行った


━━━━━━━


入り口付近に近づくと、中から威嚇するような鳴声が聞こえた

衣装ケースの奥の方に爛々と輝く2つの瞳が見える

俺は背中のポーチの中から何匹かの煮干しと、ミルクの入った容器を取り出すと、まずは煮干しだけをケースの奥に投げ込んだ


暫くするとぽりぽりという何かを齧るような音が聞こえる

その音が聞こえてからゆっくりと衣装ケースの中に入る

俺がケースの中に入ると、齧る音が途切れ輝く瞳がこちらを見つめるが、しばらくすると再びぽりぽりと齧る音が聞こえ出す


俺は再び歩き出し近くにあった容器に牛乳を注ぐと、そっとその場を離れる

そして俺が衣装ケースから出ると、 衣装ケースの周りには数匹の猫が集まっていた

そのうち最も体格のいい一匹がゆっくりと近づいてくる


「やれやれだぜ・・・モテる男は辛いねぇ」

そう呟くと、俺はポーチを外して前に出た


━━━━━━━━



その猫と出会ったのは、俺が漸くこの町の地形に慣れて、少し遠出をしたときの事だった


その猫は、道をとぼとぼと歩いていた


塀の上から見た姿は、そのでっぷりと太った体型から、初めは家猫かなと思ったが、その毛は毛羽立ち首輪もしていなかった

もし、その猫が後ろ足を引いて歩いていなければ、俺はそのまま無視をていただろう


俺が塀の上から飛び降り、その猫の前に立ちはだかると、猫は毛を逆立ててうなり声を上げた


俺は、ポーチから弁当がわりに持ってきていたビスケットを取り出すと、その猫の前に投げた

そして、少し下がって距離をとる


最初、その猫は警戒していたが、ビスケットの匂いを嗅ぐとカリカリとかじり始めた

さらに数枚のビスケットを猫のほうに放り投げ、猫がビスケットをかじっている間に、俺はその猫を観察した

やはり、後ろ足を怪我しているようだ


「さてと、どうするかな?」俺は独りごちた

「茜に相談する・・・ことはできないか・・・今の俺自身があかねに飼われてるようなもんだからなぁ・・・」

頭を悩ませている俺に1つのアイデアがひらめいた


「そうだ、あそこなら」





"うん、まさか自分が本当にこんなことをやるとは思わなかったわ"

俺はポーチの中からビスケット取り出すと、それを小さく砕いて等間隔に道に並べていく


途中、人の気配がすると、俺はそっと物陰に身を隠れた


小動物が餌を撒きながら他の動物を誘導するなんて、リアルで見たらちょっとした狂気だよなぁ

そんなことを考えながら、

俺は、足を怪我した猫を、秘密基地のある空き地まで誘導した


衣装ケースの前まで猫を誘導すると、中に何もないことを確認する

そして、衣装ケースから離れて様子を見る


最初、その猫はひどく警戒している様子だったが 、しばらくすると衣装ケースの中に入っていき、中にある毛布の上で横になった


さてと、こっちはこれでいいか

もとは野良猫だった様なので、怪我さえ治れば後は自分でどうにかするだろう

無責任な話だがこれが今の俺に出来る精一杯だ


「残る問題は・・・」

そう呟くと俺は、こちらに近づいてくる猫達を見つめた


━━━━━━━━


動物たちには縄張りがある

この空き地も、この周辺に住む野良猫たちの縄張りであることは、たまに秘密基地の中で見つける猫の毛や匂いによって分かっていた


今まで俺が、野良猫達と敢えて事を構えなかったのは、基本的に俺の方が部外者であり

この秘密基地自体が、俺にとってただの遊びでしかなかったからだ


しかし、だからといって何の準備もしてこなかった訳ではない

せっかく苦労して作ったものを、野良猫に好き勝手にされるのは不快だったし

何よりも中に引いた毛布に、蚤でも落とされたら大変なことになると思ったからだ


幸いな事に俺のこの手は、秘密基地を作成する事ができたことからもわかるように、かなり器用に扱うことができた

そして俺は、その器用さを活かして来たるべき日の為に、この秘密基地の周りに様々な仕掛けを施していたのである


そしてその日、俺はこの空き地のボスになった


━━━━━━━━


その日から数日後、様子を見に行くと、件の猫は子供を産んでいた

どうやら太っていたのではなく妊娠していていたらしい・・・


それ以来、俺は毎日餌やりの為に空き地に通っている

乗り掛かった舟っていうか、このまま見捨てても置けないしね


その際、他の野良達にも餌をやっていたら、いつの間にか餌付に成功していたらしく、俺が来ると皆が寄って来る様になった

特に、元野良達のボスだった一番身体の大きい猫は、毎回俺に体を摺り寄せて来る


まあ、基本もふもふは好きだし猫にじゃれつかれるのは嫌じゃないいんだけどさ・・・




「で?」

ベランダの外に俺を出したまま、茜はそう聞いてくる

「身体中が痒う御座います」

俺が項垂れて答える


茜はべらんだの窓をピシャリと閉めると部屋から出て行った

茜がママさんを呼ぶ声が聞こえる


「お母さ~ん、蚤取粉どこ~?」


そうなりますよね、やっぱり

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。