幽霊船解放
カーバンクル ツアー ラストです。
ボス討伐のヒントに気づいていた方はいらっしゃったでしょうか?
相変わらず話し方に特徴をつけないと、誰のセリフか分かりにくいですね。
「うらぁ!!」
渾身の力で叩き込まれた呪いの斧。
あれって確か攻撃力は高いけど、一定確率でスタンして動けなくなる奴だ。
やけくそにも程があるよ。
「おい、バカやってんな!」
「普通のがまだあるだろ!」
「この! この! この!」
マスターとヒデさんが止めるも、タクさんは触手の一本を踏みつけて斧を叩き込みまくる。
そうなると、当然のように……。
「あう?」
「アホ! 離れろ!」
スタンしたタクさんをヒデさんが引きずって後退する。
しかし、大柄なオーガ種のタクさんは重い。
瞬時に離脱とはいかない。
その2人の背後に触手が迫っていた。
しかもタクさんの落とした斧を振りかぶって。
危ない! シールドを……。
ピタ
「え?」
「は?」
背を向けているヒデさんとタクさんには分からなかっただろう。
でも僕やマスター、マサさんには見えた。
斧を振り下ろした触手が不自然に止まったのを。
これは、そういうこと?
「マサ! 呪いの武器を!」
「ああ、デメリットのきっついヤツだな!」
「「??」」
瞬時に理解したマスターとマサさんは呪いの武器を厳選し始める。
一方のタクさんとヒデさんは理解が追い付かない。
「ボーっとしてんな!」
「呪いのヤバそうなやつを選んであいつにプレゼントしてやれ!」
「!! ああ!」
「そういうことか!!」
そう、ソウル・イーター討伐のカギはこの部屋にはなかった。
このダンジョン全体に散らばっていたんだ。
やたらとドロップする呪いの武器。
オブジェクトを拾うボス。
全ては繋がっていたんだ。
「触手は10本、空いてるのは9本、プレゼントは9個だな」
悪い笑顔でマスターが呪いの武器を放り投げる。
ソウル・イーターの触手が切断できない仕様なのも、このためなんだろうね。
「ほれほれ」
「プレゼントだぞ~」
ヒデさんとタクさんもイイ笑顔で続く。
手ごたえのない近接戦闘でストレス溜まってたんだろうな。
「投げられた時用の予備も用意しておくぞ」
マサさんが冷静に邪魔にならない壁際に大量の呪いの武器を並べていく。
って、ドロップした呪いの武器全部出してない?
まあ、ヤバさという意味じゃ外れはなさそうだけど。
〈プゲ? プゲアアアア!?〉
これがギミックボスの悲しさか。
触手の届く範囲にあるオブジェクトが無くなると、武器を拾わずにいられないんだろう。
石像なんかはもうぶん投げられて壁際に転がってるからね。
触手が萎れ、イカのような頭部の表面にヤバげな赤い光の線が浮かんでいる。
1個でも致命的なデメリットが9個。
こいつが邪悪な外道なのは解ってるけど気の毒になってくる。
しかし、皆さんにはそんなこと関係ない訳で。
「へっへっへ……」
「プレゼントは気に入ってくれまちたか~?」
「あら~、なんだか具合悪そうね~」
「まあ~こっちには関係ないけどね~」
キモい口調で近寄る4人。
そこから先は一方的だった。
必死に抵抗するソウル・イーターだけど、今度は普通に攻撃が通る。
いや、普通どころじゃない。
まともに行動できないんだから。
ーーーーーーーーーーー
「ふう、悪は滅びた」
最後に頭部を叩き割られソウル・イーターは昇天した。
叩き割った張本人のタクさんは満足そうだ。
いやはや、酷い戦いだったね。
「ん?」
「お?」
「何だ?」
倒されたソウル・イーターの身体が崩れ、中から握り拳大の光の玉が溢れ出した。
光の玉はしばらく部屋中を飛び回り、やがて天井をすり抜けて消えていった。
あれは、ソウル・イーターの犠牲者たちの魂が解放されたってことなのかな?
部屋の穢れた雰囲気も消えていく。
うん、なんだか良いことした気分。
「しかし、ドロップは無いのか……」
「前の部屋の宝が先払いだったのかもな」
そういえば、確かに。
大ボスを倒したのに報酬がないね。
奴の持ってた杖も着てた法衣も溶けて消えちゃったし。
そう思っていると
「む?」
「船長?」
今度は部屋の中央に幽霊船長が現れた。
船長はこちらを穏やかに見つめると一礼し、消えていった。
同時に部屋に散乱していた呪いの武器から、黒いオーラが抜け出していった。
残された武器は外見が変化している。
「おい、これデバフ付与が消えてるぞ!」
「すげえ……なら、さっそく装備してみようぜ」
「どれもこれも、ただの超高性能武器じゃないか……」
「おいおい、これだけの数が全部かよ……」
早速マサさんが鑑定して驚愕する。
安全だと分かって装備してみた3人も、その高性能に絶句してしまう。
呪いの装備の呪いはソウル・イーターの犠牲者たちの怨念だった。
敵を討ったことで怨念は解け、逆に祝福になったという事かな?
「あれ? そういえば部屋の雰囲気が……」
「ここって絵に入る前の船の大部屋じゃないか?」
呪いの武器の浄化に気を取られていたけど、イベントクリアによってリターンが発動していたようだ。
ダンジョンの前半、普通の幽霊船に僕らは戻っていた。
同じような広さの部屋だったから気づかなかったよ。
ここは倉庫だったかな?
周辺を探知してみたけど敵の反応は無い。
裏幽霊船でソウル・イーターを倒したことで、表幽霊船のアンデッドたちも成仏したってことか。
じゃあ、船で待ってる皆さんへの襲撃も終わってるんだろうね。
「いやはや大収穫だったな」
「財宝たっぷり、高性能武器たんまり。言うこと無しだぜ」
「俺は装備の修理のこと考えると気が重いけどな……」
「大航海時代の連中にもおすそ分けしないとな~」
敵が出ないから皆はもうお気楽ムードだ。
この幽霊船もインスタントダンジョンの例にもれず、僕らが降りたら消えるらしいし。
まあ、船に戻ればまた船幽霊が襲ってくるんだろうけど。
……?
何か忘れてるような……。
何だっけ?
「おーい、終わったぞ! 凄いお土産が……」
「死ね! クソ兄!!」
バシュ!
「ぬわっ!」
「逃げるな! 次弾装填!!」
甲板に戻ったマスターは、キレた妹さんにバリスタを撃ち込まれた。
そういえば怒らせてたんだったね。
カーバンクル ツアー END
こちらも前回更新から時間が経ってすいません。
RWOも一度完結とさせていただきます。




